あづきなし

面形(おもかた)の忘るとあらばあづきなく男(をとこ)じものや恋ひつつ居らむ(万葉集) の、 あづきなく男(をとこ)じものや、 は、 こんなにもふがいなく、男たるものが、 と訳し、 あづきなし、 は、 ふがいない、 としている(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 あづきなし、 は、上代語で、 (く)・から/く・かり/し/き・かる…

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と(外)

面形(おもかた)の忘るとあらばあづきなく男(をとこ)じものや恋ひつつ居らむ(万葉集) の、 面形(おもかた)の忘るとあらば、 は、 お前の顔立ちを少しでも忘れる時があったら、 の意、 と、 は、 短い時間、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 面形(おもかた)、 は、 顔の形、 顔つき、 おもざし、 の意とあ…

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なぐ

早行きていつしか君を相見(あひみ)むと思ひし心今ぞなぎぬる(万葉集) の、 今ぞなぎぬる、 を、 山野での逢引きを果たした女の心、 と注釈し、 今ようやく静まりました、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 天離(ざか)る鄙(ひな)ともしるくここだくも繁(しげ)き恋かもなぐる日もなく(万葉集) の、 なぐる日もなく、 は、 …

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さだ

人間(ひとま)守(も)り葦垣(あしがき)越(ご)しに我妹子(わぎもこ)を相見しからに言(こと)そ左太(サダ)多き(万葉集)、 の、 さだ、 は、副詞、 はなはだ、 の意とあり、 (ちらっと見ただけなのに)世間の噂がむやみやたらとうるさい、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 さだ、 は、 サダカ・サダムの語根サダの副詞的用法か(岩…

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花ぐはし

花ぐはし葦垣(あしかき)越(こ)しにただ一目相見(あひみ)し児ゆゑ千(ち)たび嘆きつ(万葉集) の、 花ぐはし、 は、 花の霊妙な、 の意で、 葦垣の枕詞、 とし、 葦垣越しにたった一目見た、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』) 花ぐはし、 は、 花細し、 とあて、 花が美しいのでの意で、冒頭の歌や、 …

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まにまに

人目(ひとめ)守(も)る君がまにまに我(わ)れさへに早く起きつつ裳の裾濡れぬ(万葉集) の、 人目守る、 は、 人目を憚って早く出られる、 の意、 我れさへに、 は、 私までが、 で、 君がまにまに我(わ)れさへに早く起きつつ、 を、 人目を憚って朝お帰りになるあなたに付き従って、私まで早く起きだして、 と訳す(伊…

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言寄す

里人(さとびと)の言寄(ことよ)せ妻荒垣(あらかき)の外(よそ)にや我(あ)が見む憎くあらなくに(万葉集) の、 言寄(ことよ)せ妻、 は、 他人が噂で関係づけた妻、 とし、 荒垣(あらかき)の、 は、 「外」の枕詞、 として、 荒垣(あらかき)の外(よそ)にや我(あ)が見む、 を、 よそながら見ていなければならないのか…

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荒垣(あらかき)

里人(さとびと)の言寄(ことよ)せ妻荒垣(あらかき)の外(よそ)にや我(あ)が見む憎くあらなくに(万葉集) の、 言寄(ことよ)せ妻、 は、 他人が噂で関係づけた妻、 とし、 荒垣(あらかき)の、 は、 「外」の枕詞、 として、 荒垣(あらかき)の外(よそ)にや我(あ)が見む、 を、 よそながら見ていなければならないのか…

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目が欲(ほ)る

朝戸を早くな開けそあぢさはふ目が欲(ほ)る君が今夜(こよひ)來(き)ませる(万葉集) の、 あぢさはふ、 は、 目の枕詞、 で、 味鴨を遮る網の目の意か、 とする(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 あぢさはふ、 の、 さはふ、 は、 障ふ、 の未然形に接尾辞「ふ」がついたもの、 で、 あぢ、 は、 …

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眉引(まよび)き

思はぬに至らば妹が嬉(うれ)しみと笑(え)まむ眉引(まよび)き思ほゆるかも(万葉集) の、 思はぬに、 は、 思わぬ所へ、 の意、 眉引(まよび)き、 は、 尾を細く引いて画いた眉、 とあり、 (あの子が喜んでにっこりほほえむ)その眉のさまがありありと浮かんでくる、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 眉引(まよび)き…

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振分

振分(ふりわけ)の髪を短(みじか)み青草(あおくさ)を髪にたくらむ妹をしぞ思ふ(万葉集) の、 振分(ふりわけ)の髪、 は、 左右に分けて肩のあたりで切り揃える、童女の髪型、 とあり、 たくらむ、 は、 束ねて結んでいる、 意とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 たく、 は、 綰く、 とあて、 か/き/く/く…

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おほろか

おほろかの心は思はじ我(わ)がゆゑに人に言痛(こちた)く言われしものを(万葉集) の、 おほろかの心は思はじ、 は、 通り一遍の心は持つまい、 の意とし、 いい加減な気持ちは決して持つまい、 と訳し(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 おほならば誰(た)が見むとかもぬばたまの我(わ)が黒髪を靡けて居らむ(万葉集) とある、 おほならば、 …

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ころ(嘖)ふ

誰(たれ)ぞこの我(わ)が宿來(き)呼ぶたらちねの母のころ(嘖)はえ物思(ものも)ふ我れを(万葉集) の、 母のころ(嘖)はえ物思(ものも)ふ我れを、 は、 母に責め立てられて物思いをしている私なのに、 の意で、 母さんにせめたてられて、ふさぎ込んでいる私なのに、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 来呼ぶ(きよぶ)、 は、 来て…

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ゆ(助動詞)

誰(たれ)ぞこの我(わ)が宿(やど)來(き)呼ぶたらちねの母のころ(嘖)はえ物思(ものも)ふ我れを(万葉集) の、 母のころ(嘖)はえ物思(ものも)ふ我れを、 は、 母に責め立てられて物思いをしている私なのに、 の意で、 母さんにせめたてられて、ふさぎ込んでいる私なのに、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。万葉仮名では、 誰此乃 吾屋戸来喚 …

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と(利)

ねもころに片思(かたもひ)すれかこのころの我(あ)が心どの生けるともなき(万葉集) の、 片思(かたもひ)すれか、 は、 片思(かたもひ)すればか、 の意、 我(あ)が心どの、 は、 私の心地、 と訳し、 生けるともなき、 の、 と、 は、 鋭さ、確かさを表す名詞、 とあり、 生きたそらもない、 …

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うらぶる

里遠(どほ)み恋ひうらぶれぬまそ鏡床(とこ)の辺(へ)去らず夢(いめ)に見えこそ(万葉集) の、 まそ鏡、 は、 床(とこ)の辺(へ)去らず、 の枕詞とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 まそ鏡、 で触れたように、 床のそばに置くの意で、 床の辺さらず、 に、 かかり、 里遠(どほ)み恋ひうらぶれぬ、 を、 …

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染木綿(しめゆふ)

肥人(こまひと)の額髪(ぬかがみ)結(ゆ)へる染木綿(しめゆふ)の染(し)みにし心我れ忘れめや(万葉集)、 の、 上三句は序、類音で「染みにし」を起こす、 とあり、 染木綿(しめゆふ)、 は、 色染めした楮の繊維、 とし、 色は魔よけの朱色であったろう、 としたうえで、 染木綿のように深く染みこんだ思い、 と訳す(伊藤博訳注『…

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繭(まよ)

たらつねの母が養(か)う蚕(こ)の繭隠(まよごも)り隠(こも)れる妹を見むよしもがも(万葉集) の、 たらつね、 は、 たらちね、 の音転とあり、 上三句は序、「隠れる」を起こす、 とあり、 蚕の繭隠りのように、家にこもりっきりの女(ひと)、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 まよ、 は、 まゆ(繭)の古形(広辞苑)…

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しし

高山(たかやま)の嶺行くししの友を多み袖振らず來(き)ぬ忘ると思ふな(万葉集) の、 しし、 は、ここは、 カモシカか、 とし、 上二句は序、「友を多み」を起こす、 とし、 獣に寄せる、男の恋、 と注釈し、 群れていくししのようのに、仲間がいっぱいいたので、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 しし、 は、 …

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うれむぞ

奈良山の小松が末(うれ)のうれむぞは我(あ)が思ふ妹に逢はずやみなむ(万葉集) の、 上二句は序、同音で「うれむぞ」を起こす、 とあり、 うれむぞ、 は、 どうして、 の意で、 反語を導く副詞、 で、 どうして……あの子に逢わずに終わってしまうことなどあるものか、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。また、 (松 h…

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