2012年11月30日

iPS細胞と臍帯血バンクの深い関係~再生医療の実現へ


市民講座「iPS細胞こんにちは!~臍帯血はいのちのお母さん~に参加した。ただ山中伸弥先生の講演予定だったのを期待してのことだった。ノーベル賞授賞の報道直後もあり,思わずミーハーで応募した。しかし受賞式準備で多忙のため,山中伸弥先生が来演できなくなったとのメールを受け取ったが,やはり行く気になった。代わりに,iPS細胞研究所の副所長(所長は山中先生)で,山中先生とタッグを組んでiPS細胞を発見された中畑龍俊先生が見えると聞いたからだ。

正直iPS細胞については,素人で,実のところそんなにわかっているわけではない。ただ,iPS細胞によってすべての細胞へと分化でき,再生医療を現実的なものにした程度しか知識はない。

で,ネットで調べたウィキペディアによれば,

人工多能性幹細胞とは,体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより,ES細胞(胚性幹細胞)のように非常に多くの細胞に分化できる分化万能性 と,分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能を持たせた細胞のことである。

元来,生物を構成する種々の細胞に分化し得る分化万能性は,胚盤胞期の胚の一部である内部細胞塊や,そこから培養されたES細胞(胚性幹細胞),および,ES細胞と体細胞の融合細胞,一部の生殖細胞由来の培養細胞のみに見られる特殊能力であったが,iPS細胞の開発により,受精卵やES細胞を全く使用せずに分化万能細胞を単離培養することが可能となった。

分化万能性を持った細胞は理論上,体を構成するすべての組織や臓器に分化誘導することが可能であり,ヒトの患者自身からiPS細胞を樹立する技術が確立されれば,拒絶反応の無い移植用組織や臓器の作製が可能になると期待されている。ヒトES細胞の使用において懸案であった,胚盤胞を滅失することに対する倫理的問題の抜本的解決に繋がることから,再生医療の実現に向けて,世界中の注目が集まっている。

また,再生医療への応用のみならず,患者自身の細胞からiPS細胞を作り出し,そのiPS細胞を特定の細胞へ分化誘導することで,従来は採取が困難であった組織の細胞を得ることができ,今まで治療法のなかった難病に対して,その病因・発症メカニズムを研究したり,患者自身の細胞を用いて,薬剤の効果・毒性を評価することが可能となることから,今までにない全く新しい医学分野を開拓する可能性をも秘めていると言える。

ということだ。で,元へ戻ると,はじめに,山中先生のビデオメッセージがあり,そこで,「私の受賞は便乗受賞で,50年前の,ジョン・ガードン先生が,カエルの腸細胞の核を別のカエルの卵子の核と入れ替えただけで,受精せずにオタマジャクシが生まれることを実証されることで,受精卵と生殖細胞だけが,完全な遺伝子の設計図を持つという,100年前以来の常識を覆したことが,私のiPS細胞につながった」という趣旨のことを発言されたのが印象深かった。普通の細胞からでも,遺伝子操作ができるという,大きなパラダイムの変更があってはじめて,研究の道筋が作られた,という意味で,共同受賞者のイメージがかなりクリアになった。

そして,iPS細胞研究所の今後10年の目標として,
① iPS細胞研究の基盤強化としての,知的財産の確立
② 再生医療のためのiPS細胞のストックをつくり,国内外に提供
③ iPS細胞を使った臨床研究を始める
④ 患者からiPS細胞をつくり,病気の原因を解明し,創薬していく
を掲げ,①はすでにほぼできつつあり,③と④がこれからの課題なっている,ということであった。そこで,②にかかわって,臍帯血バンクとの関連が生じてきたことがよくわかる。

中畑先生は,臍帯血(へその緒から摂取する赤ちゃん血液)の中に,医療に有効な造血幹細胞があることを世界で最初に発見された方で,いまiPS細胞を作るためにさい帯血がもっとも有効であることなどをお話していただいた。

実はiPS細胞も拒絶反応が起きる。それは白血球の型,HLAが,血液型違い数万あり,第三者の提供する体細胞では拒絶反応が起きる。しかし母親と父親から同じHLAという型を引き継いだ人(HLAホモドナー)の体細胞では,血液型O型と同じように,多くの人に移植できる。実は,1名のドナーで日本人の80%がカバーできることが予測されている。そのために,京都大学ではiPS細胞のストックづくりに,臍帯血縛の協力を得ようとしている。

日本臍帯血バンクネットワークは,それぞれ独立した8つ(平成24年4月1日現在)の地域バンクの集合体であり,臍帯血移植に必要なHLA(白血球の血液型)情報等の全国一元管理および公開適合検索,より安全なさい帯血の保存と提供のための検討など,移植が公平かつ安全に行われるための事業を行っている。

臍帯血移植は,白血病などの重い血液疾患に対して骨髄移植という治療が有効であり,病気になって正常な造血ができなくなっている患者さんの骨髄を健康なドナーの方からいただいた骨髄でおきかえて病気を治すという方法である。

あくまで,臍帯血移植のためのネットワークだが,そこで,HLAドナー登録をしているために,そのタイプの蓄積がiPS細胞のストックにとって,凄く有効になる。で,こうある,臍帯血からのiPS細胞ストックには,「HLAホモドナーを対象に,臍帯血移植に使用できないものを対象とする」と。

体細胞からiPS細胞をつくれば,①ほぼ無限に増殖し,②すべての細胞へ分化できる,という特色を,最大限に生かし,しかも,多くの人の再生医療に備えて,HLAタイプごとのストックを増やしていく,今回の市民講座の背景にはこんな連携があり,さらには,そのための資金支援が期待されている。

実は政府資金の支援では,多くの人材を長期に賄えず,190人の職員中,実に169人が非正規職員で,その人たちが,知的財産の確立や広報活動にかかわっている。そのひとたちをどう正規の人としていくか,欧米に立ち遅れている,研究のバックアップ組織の在り方についても,強いアピールがなされた。

研究者本人に焦点が当たりがちだが,その研究を支援するための,知財確立,法規制との調整・交渉,広報等々,幅広い人的なバックアップがなければ,そのすべてが研究者個人の負担にかかってくる。いってみると,正規軍と孤立したゲリラが科学の第一線で戦っているようで,圧倒的に不利だ。その上,そういう研究者を支援する,私的基金はアメリカと比較しても少ない。どうも日本の大金持ちは,社会への還元の仕方を知らないようで(といって金のない自分がそういう言い方をするのもなんだが),基金作りまで研究者がやらなくてはならない。恐らくそういうことも含めて,臍帯血バンクとの連携なのだろう。

それにしても,そうした研究のファウンデーション,バックアップ体制のない中で,日本の科学者,研究者はよくやっているなあ,と感心した日でもあった。


日本臍帯血バンクネットワーク
http://www.j-cord.gr.jp/ja/qa/index.html;jsessionid=0385ADF0CB103B9D323FEC9EC9DE6010

京都大学iPS細胞研究所
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/index.html

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm






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posted by Toshi at 06:33| Comment(32) | iPS細胞 | 更新情報をチェックする