2014年05月11日

違い


テリー・ピショー&イボンヌ・M・ドラン『解決志向アプローチ再入門』を読む。

ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)については,何度も触れたが,最近では,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388984031.html

http://ppnetwork.seesaa.net/article/391885947.html

で,触れた。そこで上がった参考文献を,改めて,読み直してみた。

復習という意味合いが強かったが,いくつか,改めて,気づいたこともある。

裁判所,保護観察部等々の紹介機関からやってくる,薬物中毒,アルコール中毒,DV等のクライエントをセラピーするという条件の中で,いかにソリューション・フォーカスト・アプローチが有効かを,実践的に確かめ,自分のものにしていった著者たちの,問題志向からの転換の悪戦苦闘が,反映されているという意味では,アメリカの事情に詳しくないものには,多少煩雑で,読みにくいところもあるが,創始者の,インスー・キム・バーグやスティーブ・ディ・シェイザーという第一世代の薫陶を受けた,第二世代のセラピストが,

臨床現場で習得していったプロセス,

が具体化されており,より噛み砕かれた内容になっている。その意味で,振り返るのに,丁度いい。特に,

第一章 解決志向の基本
第二章 個人セッションの流れ
第四章 たくさんのミラクル

は,振り返りと整理には,丁度良かった。たとえば,解決志向の原則は,

1.壊れていないならば,治すな
2.何かがうまくいっているならば,もっとそれをせよ
3.うまくいっていないならば,何かちがうことをせよ
4.小さな歩みの積み重ねが大きな変化につながる
5.解決は必ずしも直接的に問題と関連するとは限らない
6.解決を創り出すための言語に必要なものは,問題を記述するために必要なものとは異なる
7.どんな問題も常に起こっているわけではない。利用可能な例外が常にある
8.未来は,創り出されるし,努力して変えることもできる

ミラクル・クエスチョンについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/391885947.html

で触れたので,それ以外をすこし拾い出してみる。

例外については,スティーブの,

「不規則」な例外が不規則ではなく,実は,まだ記述されていないが,ある文脈のパターンの中に埋め込まれているのである。そして,これがもし記述されれば,例外を予測し,その結果,それを処方することもできるだろう,

を引用し,

例外は,変化が足元にあり現実である可能性があるという,かすかな望みを提供する場合が多い。例外が明るみに出ると,クライエントは希望を得る。というのは,自分の奇跡の一部が今起こっていると彼らにわかり始めるからである。

そう,例外は,「既に起こっている奇跡」だということの再確認である。

実は今回再度気づき直したのは,

違いの質問

である。著者は,こう言う,

違いの質問は,クライエントの変化の効果や変化の可能性を確認して目立たせ,その結果,提案された変化が確実に,現実的で,実現可能で,やりがいがあるものとなるための「エコロジーチェック」を提供する,

と。そして,

違いの質問は,クライエントの中に火をともすために必要な,拡大された状態を提供する。

典型的には,クライエントが現在,過去,または将来可能性のある具体的な変化を認識した後で,この質問はなされる。

第一に,

過去の変化の影響を探求する違いの質問は,同様の変化が現在の状況において有益と思われるかどうかを,クライエントが決定するのを援助する点で有益である。

この場合,忘れていたスキルや成功体験を認識し直すことが多い,という。たとえば,

「あなたが以前,毎晩一緒に夕食をとるようにしていたとき,そのことでご両親との関係でどんなことが違っていたのですか」

第二に,

可能性のある変化(例えば,奇跡の日に起こる変化や,一たび問題が解決された後のこと)を探求する質問は,クライエントの奇跡が,関係する人々にとって長期的に持続する利益を結果的に生み出す様子を明確にする点で役立つ。

変化が,どう周囲の人に影響し,それがどう自分に反照してくるかの確認だが,たとえば,

セラピスト「(クライエントに起こった変化)で,あなたにとってどんなことが違ってきたのですか」
クライエント「初めて実現しそうに思えたんです。…実際私は興奮しているの!」
セラピスト「そんなに興奮すると,どんなことが違ってきますか?」
クライエント「元気が出ます。…初めて力が湧いてきます。これが上手くいくようにしたいと思っています」
セラピスト「これらの変化で,息子さんにとってどんなことが違ってくるでしょうか?」

この周囲への影響の質問は,

関係性の質問

として著者が設定している介入と関係が強い。つまり,関係性の質問は,

自分の目標を達成することが自分の人生における重要な人々に与える影響を,クライエントが評価する,

よう援助する。それは,そのまま,可能性の実現がどういう違いをもたらすか,ということにつながる。たとえば,ミラクル・クエスチョンのあと,

「御主人に,夜中に奇跡が起こって,あなたの飲酒問題が解決したことがわかるでしょうか?」

とつながる。その意味で,著者は,「違いの質問」に,二つの切り口があるとして,

ひとつは,クライエント自身の変化の気づき,
いまひとつは,周囲の人,家族,友人の変化の気づき,

と言っている感じがする。ここからは,僕の勝手な理解になるが,この二つの切り口も,もう少し細かく,例示できそうな気がする。たとえば,

①変化の前と後

「ここに治療に着た結果として,どんなことが違ってくれたらいいと思いますか?」
「これを修了し,やり終えたことがケースワーカーにわかると,どんなことが違ってくるでしょうか?」

②変化そのものによる変化

「この奇跡で,あなたと息子さんにとってどんなことが違ってくるでしょうか?」
「もしケースワーカーがあなたのそんな側面を見ることができたとしたら,どんなことが違ってくるでしょうか?」

③変化の発生

「そういった行動でどういった違いがうまれると,あなたは思われますか?」
「あなたが(セラピーに)現れたことがケースワーカーにわかったら,あなたにとってどんなことが違ってくるでしょうか?」

④レベルアップの変化

「(スケーリング・クエスチョンで)あなたが6にいるとき,どんなことが違っていているでしょうか?」
「そうなったら,どんなことが違ってくるでしょうか?」

⑤変化の予測

「ここへ来た結果として,どんなことが違っていたらいいと思っていますか?」
「あなたのご両親は,あなたがここへ来た結果として,どんなことが違ってくればいいなと思っているでしょう?」

⑥変化の差異

「それはいつもと違うのでしょうか?」
「あなたにとって,どんなことが違ってくるでしょう?」
「そんなふうにすると,とても違ってくることを知っていたのですか?」
「どんな行動が違ってくるのが,見える必要があるのでしょうか?」
「それでどんなことが違ってくるのでしょう?」

等々,多少重複するところがあるが,

変化の差,違い,
変化の状態から見えるものの違い,
相手から見える違い,

といったものだが,細かく言うと,

違う,
違っている,
違ってくる,
違って見える,

と言い替えただけで,微妙に変わる。ここでは,クライエントに,

どういう立場で,
どの位置に立って,
どの条件のもとで,
どういう立場で,
どういう背景で,
どういう文脈で,

等々ビューポイントを設定してもらうことで,いまとの違いに気づき,そこに,自分の持っているリソース,あるいは,引き起こした変化に着目してもらうことが重要なのだ,と改めて再確認させられた次第。


参考文献;
テリー・ピショー&イボンヌ・M・ドラン『解決志向アプローチ再入門』(金剛出版)





今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm