2014年08月06日

にほふとかをる


にほふ

かをる

とはどう違うのだろう。

昔,何かを書き込むノートに,匂いという字を使ったら,それは臭気の意味で,ものを知らぬと,揶揄されたことがあって,何十年も前のことだが,心にしこっている。しかし,

辞書で,香り(薫り)をひくと,

よいにおい

とでる。で,匂い

を引くと,

香り,香気

とでる。ただし,

匂い

臭い

は使い分けているようだが,匂いの意味は,

①赤などの鮮やかに色が美しく映えること
②はなやかなこと,つやつやしいこと
③香り,香気
④くさいかおり,臭気(臭いをあてる)
⑤ひかり,威光

とあり,臭いは,匂いの④の意味,とある。つまり,





は,ダブっていて,「臭」は「匂」の一種,ということになる。しかし,漢和辞典には,



は,国字とある。峠と同じく,日本で作った字ということになる。



は,

自+犬

で,嗅ぐことをあらわしている。もともとは,





は同じ字であったが,のちに,

におい

かぐ

に分用された,とある。「匂」は,

韵(ひびき)

の右側を書き換えた,という。つまり



から,



に作り替えたらしい。

よい響きの意からよい香りの意に換えた。香りを聞くという言い方をするから,転じるのに無理がなかったのだろう。この辺りは,メタファーを考える貴重な始原があるのだろうかが,それはまた別の話題。

ともかく,たしかに,語源的には,

ニ(丹,赤い色)+ホ(秀,際立つ)+フ(継続・反復)

で,色が際立って美しく映える,光沢があって美しい

の意であり,転じて,よい香りが際立つことを指す。という。

そう思うと,

におい

は,嗅覚の側からの視点であり,

香り(香る)

は,香っているものの側の視点での表現ということになる。確かに,語源的には,かおりは,

香+居り

で,香りが,あることを指す。

因みに,漢和辞典を引くと,においは,

殠 腐って悪しきにおい
芳 葦のよきにおい,かお。植物のかおりが上下左右に広がり出ていくことをさす。
芬 かおる,ひらく,わかれるの意で,草が初めて生じて香の分かち布くをいう。
香 におい,かおり。もとは,黍+甘(うまい)で,空気に漂ってくるにおいをあらわす。
馥 こうばし,かんばし,ふっくらとしてよい香りを発する
馨 香る,かんばし。磬(澄んだ音を出す石板)と同系で,香りが遠くまで聞こえる。

と出る。

ついでに,「かおり」と漢和辞典でひくと,においで出た,「芳」「芬」「香」「馥」「馨」以外に,

焄 ふすぶ,こうじし,におう
臭 かおり,におい,気の鼻に通ずるもの,くさい
苾 かおり
菲 うすい,こうばしい(貌)
薌 かおり,こうばしきもの
薆 かおる
薫 かおりぐさ,かおり。香草のにおいがたちこめていることを意味する

等々と出てくるが,その使い分けは出ていない。たぶん,漢字は,すべてのかおり,においを区別してかき分けていたはずだが,だんだん抽象的に,いわば丸められてしまったようだ。だから,

匂い

香り

の区別がつかなくなっている,ともいえる。

変な言い方だが,



というのと,

ヒヨドリ

というのとでは,見えている世界が違う。言葉は,その人の持っている世界の違いを顕わす。われわれは,というよりぼくには,その見分ける見え方が出来なくなっている。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

ラベル:香り 匂い 臭い
posted by Toshi at 04:32| Comment(2) | 言葉 | 更新情報をチェックする