2017年12月01日

むくげ


「むくげ」は,

木槿,
槿,

とあてる。

蓮(はちす),
木蓮(きはちす),
槿花(きんか),

とも言う。芭蕉の『野ざらし紀行』にある,

道のべの木槿は馬に喰はれけり,

が,記憶に残る。

むくげ.jpg


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%82%B2

に,

「ムクゲ(木槿、学名: Hibiscus syriacus)はアオイ科フヨウ属の落葉樹。別名ハチス、もくげ。庭木として広く植栽されるほか、夏の茶花としても欠かせない花である。和名は、『むくげ』。『槿』一字でも『むくげ』と読むが、中国語の木槿(ムーチン)と書いて『むくげ』と読むことが多い。また、『類聚名義抄』には『木波知須(きはちす)』と記載されており、木波知須や、単に波知須(はちす)とも呼ばれる。『万葉集』では、秋の七草のひとつとして登場する朝貌(あさがお)がムクゲのことを指しているという説もあるが、定かではない。白の一重花に中心が赤い底紅種は、千宗旦が好んだことから、『宗丹木槿(そうたんむくげ)』とも呼ばれる。
中国語では『木槿/木槿』(ムーチン)、韓国語では『무궁화』(無窮花; ムグンファ)、木槿;モックンという。英語の慣用名称の rose of Sharon はヘブライ語で書かれた旧約聖書の雅歌にある「シャロンのばら」に相当する英語から取られている。」

とある。

しかし,同時に,

「初期の華道書である「仙伝抄(1536年)」では、ムクゲはボケ、ヤマブキ、カンゾウなどとともに『禁花(基本的には用いるべきではない花))とされ、『替花伝秘書(1661年)』『古今茶道全書(1693年)』でも『きらひ物』『嫌花』として名が挙がっている。ほか『立花初心抄(1677年)』『華道全書(1685年)』『立華道知辺大成(1688年)』では『一向立まじき物』『一向立べからざる物』としてムクゲの使用を忌んでいる。『池坊専応口伝(1542年)』『立花正道集(1684年)』『立花便覧(1695年)』などではいずれも祝儀の席では避けるべき花として紹介されているが、『立花正道集』では『水際につかふ草木』の項にも挙げられており、『抛入花伝書(1684年)』『立華指南(1688年)』などでは具体的な水揚げの方法が記述され禁花としての扱いはなくなっている。天文年間(1736-1741)の『抛入岸之波』や『生花百競(1769年)』では垂撥に活けた絵図が掲載される一方で、1767年の『抛入花薄』では禁花としての扱いが復活するなど、時代、流派などによりその扱いは流動的であった。江戸中期以降は一般的な花材となり、様々な生け花、一輪挿し、さらには、枝のまたの部分をコミに使用して、生け花の形状を整えるのに使われてきた。茶道においては茶人千宗旦がムクゲを好んだこともあり、花のはかなさが一期一会の茶道の精神にも合致するとされ、現代ではもっとも代表的な夏の茶花となっている。」

ともあり,その扱いの変化はおもしろい。

DSC06915.JPG

(宗丹木槿)


『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると,

「ムクゲは古代の中国では舜(しゅん)とよばれた。朝開き、夕しぼむ花の短さから、瞬時の花としてとらえられたのである。『時経(じきょう)』には、女性の顔を『舜華』と例えた記述がある。白楽天も一日花を『槿花(きんか)一日自為栄』と歌った。一方、朝鮮では、一つの花は短命であるが、夏から秋に次々と長く咲き続けるので、無窮花(ムグンファ)と愛(め)でた。朝鮮の名も、朝、鮮やかに咲くムクゲに由来するとの説がある。ムクゲは木槿の転訛(てんか)とされるが、朝鮮語のムグンファ語源説もある。日本では平安時代から記録が残り、『和名抄(わみょうしょう)』は木槿の和名として木波知春(きはちす)をあげている。これは『木の蓮(はちす)』の意味である。『万葉集』の山上憶良(やまのうえのおくら)の秋の7種に出る朝顔をムクゲとする見解は江戸時代からあるが、『野に咲きたる花を詠める』と憶良は断っているので、栽培植物のムクゲは当てはめにくい。初期のいけ花ではムクゲは嫌われた。『仙伝抄(せんでんしょう)』(1536)には『禁花の事、むくげ」、『替花伝秘書(かわりはなでんひしょ)』(1661)にも「きらい物の事」に木槿と出る。『立華正道集(りっかせいどうしゅう)』(1684)では、『祝儀に嫌(きらふ)べき物の事』と『水際につかふ草木の事』の両方にムクゲの名があり、以後立花(りっか)、茶花に広く使われている。ムクゲは木の皮が強く、江戸時代は紙に漉(す)いた(『大和木経(やまともくきょう)』文政(ぶんせい)年間)。これはコウゾの紙よりは美しい。ムクゲの品種は江戸時代に分化した。『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)は、八重咲き、色の濃淡を含めて12の品種をあげている。その一つ『そこあか』は、千利休(せんのりきゅう)の孫の千宗旦(そうたん)の名をとどめる、白色で中心部が赤いソウタンムクゲを思わせる。」

と,お国によって,愛で方が異なるのも面白い。「槿」について,『漢字源』には,

「花は朝開いて,夕方にはしぼむので,移り変わりのはやいことや,はかなてことのたとえにひかれる」

とあり,「舜(しゅん)とよばれた」というだけの謂れはある。日本で,古く,「あさがお(朝顔)の名があったのもそのゆゑである。しかし,朝鮮では,「夏から秋に次々と長く咲き続けるので、無窮花(ムグンファ)と愛(め)でた」というが,今日,「木槿」は,韓国の国花,という。

さて「むくげ」の謂れである。『大言海』は,

「字の音の轉」

とする。『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E6%9C%A8%E6%A7%BF

も,

「日本には奈良時代に渡来したとされる。漢名『木槿』の字音『もっきん』が音変化したもの。また、韓国名の『無窮花』(ムグンファ)から来たという説もある。」

としている。

http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AF%E3%82%B2

は,

「木(モク)+菫(ゲ)すなわち『木に生えるスミレ』が訛って「モクゲ」⇒「ムクゲ(槿)」となったとする説が有力である」

とする。『日本語源広辞典』も,

「中国語で,『木(ムク moku)+槿(ぎん kin gin)の音韻変化』が語源」

とする。『日本語源大辞典』も,

木槿の字音の轉(万葉代匠記・日本釈名・年山紀聞・滑稽雑談所引和訓義解・古今要覧稿・外来語辞典=荒川惣兵衛),

を挙げる。僕は,字音の転は転としても,

中国語の木槿(ムーチン),

ではなく,

韓国語の『무궁화』(無窮花; ムグンファ),

の転,ではないのか,と思う。ただ,木槿のイメージが,我が国では,中国と似て,朝顔のような儚さ,であったところから見ると,朝鮮半島経由ではない,という気もするが。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
https://item.rakuten.co.jp/hana-online/niwaki_mukuge_soutan/

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする