2017年12月05日

兎の数え方


兎は,

一羽,二羽,

と数える。これについては,諸説あるが,

http://japanknowledge.com/articles/kze/column_kaz_02.html

には,

「獣(けもの)を口にすることができない僧侶(そうりょ)が二本足で立つウサギを鳥類だとこじつけて食べたためだという説や、ウサギの大きく長い耳が鳥の羽に見えるためだとする説などが有力です。
それだけでなく、ウサギの数え方の謎は、ウサギの名前の由来とも少なからず関係があるようです。ウサギの『う』は漢字の『兎』に当たるものですが、残りの『さぎ』はどこから来ているのかはっきりしたことが分かりません。一説では、『さぎ』は兎の意味を持つ梵語(ぼんご)『舎舎迦(ささか)』から転じたものだとか、朝鮮語から来ているとされています。さらに、『さぎ』に鳥のサギ(鷺)を当てたとする俗説まであります。仮に、ウサギが『兎鷺』と解釈され、言葉の上では鳥の仲間と捉(とら)えられていたとしたら、『羽』で数える習慣が生まれても不思議ではありません。現代では、ウサギを『羽』で数えることは少なくなり、鳥類とウサギを『羽』でまとめて数える場合以外は、『匹』で数えます。」

とある。また,

http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000101035

は,うさぎを“何羽”と数える由来は諸説あり、正確な説は定かではないとされているとしつつ,

・宗教上の理由で僧侶が獣の肉を食べるのを禁止されていたため,後ろ足二本で立つウサギを鳥と見なして食べていた時代の名残,
・「ウ(鵜)とサギ(鷺)という二羽の鳥」ということで,兎二匹で一羽と数えるという説,
・獲るときに鳥と同じように網に追い込んで捕まえたからという説,
・ウサギの長い耳を羽に見立てているという説,

を挙げる。また,

https://www.benricho.org/kazu/column_usagi-2yurai.html

は,

① 長い耳が鳥の羽のようだからとする説。
② 骨格が鳥に似ているからとする説。
③ 二本の足で立つ兎を鳥に見立てて、鳥と称して食べたとする説。
④「ウサギ」を「ウ・サギ」と分解して発音し、「鵜う」と「鷺さぎ 」の二羽の鳥であるとする発音説。
⑤ ぴょんぴょんと跳ねる様が飛ぶ鳥のようだからとする説。
⑥ 肉が鳥肉に似ているからとする説。
⑦ 耳を括って持つことがあり、括ったもの、束ねたものを数える「 一把いちわ」「二把にわ 」から、鳥にも似ているので「一羽」になったとする説。
⑧ 網を使った捕獲方法があって、鳥を捕る方法に似ているからとする説。
⑨ 兎を聖獣視する地方で、そのほかの獣と区別する意味合いで数え方を変えたとする説。

等々を挙げ,その他に,

「一種の『 洒落しゃれ 』から始まったのではないかとする説もあります。上記のような様々な理由から鳥に似ているため、猟師などが『洒落』で、鳥を数える『一羽』を使っていたのではないかとする」
やはり,

説も加えているが,結局,南方熊楠『十二支考』の「兎に関する民俗と伝説」の,

「従来兎を鳥類と 見做みなし、獣肉を忌む神にも供えまた家内で食うも忌まず、一疋二疋と数えず一羽二羽と呼んだ由、」

に落ちつくようだ。鍵は,「うさぎ」という言葉にありそうである。

うさぎ.jpg

〔草の葉を食べるニホンノウサギ(日本野兎、学名:Lepus brachyurus)〕


『広辞苑』には,

「『う』は兎のこと,『さぎ』は兎の意の梵語『舎舎迦(ささか)』の転とする説と朝鮮語起源とする説とがある」

としている。『大言海』も,

「本名ウにて,サギは,梵語,舎舎迦(ささか)(兔)を合せて略轉したる語かとも云ふ(穢し,かたなし。皸(あかがり),あかぎれ)。転倒なれど,乞魚(こつお),鮒魚(ふな),貽貝(いがい)など,漢和を合したる語もあり。朝鮮の古語に,兔を烏斯含(ヲサガム)と云へりと云ふ(金澤庄三郎,日鮮古代地名)。」

と,両説挙げる。「う(兔)」の項では,

「此の獣の本名なるべし。古事記上三十二に,『裸なる菟伏也』継体紀に,『菟皇子』などある,皆,ウと訓むべきものの如し」

としている。『岩波古語辞典』は,「うさぎ(兎)」の項で,

「兔,宇佐岐〈和名抄〉,朝鮮語t`o-kkiと同源」

とするのみである。『日本語源広辞典』は,梵語説の他に,

「ウサ・ヲサ(設)+ギ(接尾語)」

で,いつでも飛び出せるように,ヲサ(用意)のある動物を指す,という。「おさ」とは,

おさおさ怠りなく,

の「おさ」なのだろうか。しかし,この「をさ」は,「長を重ねた語」で,

いかにも整然としているさま,

の意で(『岩波古語辞典』),ちょっと意味がつながらない。『日本語源大辞典』は,「う(兔・兎)」と「うさぎ(兎・兔)」と「おさぎ(兎)」とを項を別にし,「う」については,

「ウ」の音は安らかに発せられるところから易産の意で名づけたか(和訓栞),
ウム(産)の「ウ」と同じ(俗語考),
ウサギの略(日本語原学=与謝野寛),

と挙げているが,

「一拍語の語源解釈は,その音を含む種々の語に付会されやすい。また一拍しか音がないのであるから,諸説の真偽の判定も困難である。」

としている。「うさぎ」では,

ウと言う。ウサギは後の訓(和訓栞),
「万葉-東歌」にはヲサギとあるので並び用いられたか(時代別国語大辞典・上代編),
本名はウで,サギは梵語ササカ(舎舎迦)を合わせて略轉した語(大言海),
ヲサキ(尾先切)の転(言元梯),
ウはウ(菟),サギはサケ(細毛)の転(日本古語大辞典=松岡静雄),
ウスゲ(薄毛)の転(日本釈名),
ウサギ(愛鷺)の意か(和字正濫鈔),
うちへうつぶいた鷺の意(本朝辞源=宇田甘冥),
かがまったさまが,憂くみえるからか。ウは中,サキは上(和句解),
ミミフサナギ(耳房長)の義(日本語原学=林甕臣),
朝鮮語t`o-kki(兎)と同源(岩波古語辞典),

等々を挙げた上で,

「ウが古形であり,オサギ(ヲサギ)は,上代より東国語形として見える。一拍語であるのを嫌って『サギ』を補ったのであろう。このサギを『暮らしのことば語源辞典』では鷺にもとづく説を紹介している。」

とし,「おさぎ」では,

うさぎ(兎)の訛語(大言海),
ヲサギ(尾先切)の転(言元梯),
白兎は形が白鷺に似ているところから,ヲソギ(偽鷺)の義(言元梯),

としている。『岩波古語辞典』も,「をさぎ」を,

「うさぎ」の上代東国方言,

としているので,あるいは,この言葉が鍵になるのかもしれない。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/u/usagi.html

は,

「うさぎの語源は諸説あり未詳、大まかに分けると以下のとおりである。
1.古形は『う』で,『さぎ』を補ったとする説。
2.『ヲサキ(尾先切)』が転じたとする説。
3.『ウスゲ(薄毛)』が転じたとする説。
4.高句麗語で『うさぎ』を意味する『オサガム(烏斯含)』が変化したとする説。
5.特徴的な耳と口から,『ウス(薄)』+『アギ(顎)』からか,『ウス(失)』+『アギ(顎)』からとする説。
 古形『う』については,『うさぎ』から『う』の呼称が生じたともいわれるが,一拍語は嫌われる傾向にあり,古形が『う』で『さぎ』がついたと考えるのが妥当であるため,[1]の説が有力である。[1]の中にも,白い色から鳥の『さぎ(鷺)』のこととする説,『うさぎ』を意味するサンスクリット語『ササカ(舎舎迦)』が付いたとする説,東国語形では『ヲサギ』といったことから,古形の『ウ』と『ヲサギ』きが合わさったとする説などがある。しかし古形の『う』が何を表したかも定かでなく,うさぎの語源を特定することは非常に難しい。
 うさぎの数え方には,『匹(ひき)』と『羽(わ)』があり,地域によっては『耳(みみ)』とも数えられる。『一羽,二羽』と数える由来は,獣肉を口にすることが出来なかったことから,鳥類といって食べたとする説があるが定かではない。鳥に見立てたのは,二本足で二つこと,大きな耳が羽に見えること,うさぎの名前には『ウ(鵜)』と『サギ(鷺)』の鳥の名が含まれていることからなどといわれる。」

とうまく整理している。要は,古名「う」は,古くから,「うさぎ」(東国では訛って「をさぎ」)といったということがわかる。おそらく,獣肉云々は後世の付会にすぎないと見る。むしろ,「をさぎ」が「うさぎ」の転とするなら,ずいぶん昔から,「うさぎ」と呼んでいたに違いない。なぜサギをつけたかは,もはやわからなくなっている。「さぎ」にいろいろ付会するのも,後世の後知恵に過ぎまい。むしろ「うさぎ」ということばの「さぎ」のもつ多重な含意から,後に,鳥に見立てたり,洒落で,鶏肉といったに過ぎぬように見える。

そう見ると,『日本語の語源』が,

「牛・兎は草食の家畜であるためクサクヒ(草食ひ)と呼んだ。『ク』の子音交替[kf],クヒ[k(uh)i]の縮約でフサキに転音し,『フ』の子音[f]が脱落してウサギ(兎)になった。さらに,サギ[s(ag)i]の縮約がウシ(牛)に転音した。」

という音韻変化説が,新鮮に見える。しかし,この説では,一羽,二羽,と数える謂れが見えなくなってしまうが。

因みに,「兎(兔)」の字は,

兎のすがたを描いた象形文字,

である。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

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posted by Toshi at 05:17| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする