2017年12月14日

うなぎ


「うなぎ」は,『岩波古語辞典』『大言海』に,

むなぎの転,

とある。『大言海』は,さらに,「むなぎ」の項を立て,

「胸鰓(あぎ)のぎと云ふ。或いは云ふ,胸黄の義と。腹赤の類」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/u/unagi.html

にも,

「うなぎは,古名『むなぎ』が転じた 語で,『万葉集』などには『むなぎ』とある。 むなぎの語源は諸説あるが,『む』は『身』を,『なぎ』は『長し(長い)』の『なが』からとする説が有力とされる。この説では,『あなご』の『なご』とも語幹が共通する。その他,胸が黄色いため『胸黄(むなぎ)』が変化したとする説や,『棟木(むなぎ)』に似ているからといった説もあるが,いずれも俗説である。鵜が飲み込むのに難儀するからといった説もあるが,『うなんぎ』→『むなぎ』→『うなぎ』の変化は考え難いため,『うなぎ』の呼称が成立した以降に作られた俗説であろう。」

とする。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE

も,

「日本では奈良時代の『万葉集』に『武奈伎(むなぎ)』として見えるのが初出で、これがウナギの古称である。院政期頃になって『ウナギ』という語形が登場し、その後定着した。そもそものムナギの語源には
家屋の『棟木(むなぎ)』のように丸くて細長いから
胸が黄色い『胸黄(むなぎ)」から
料理の際に胸を開く『むなびらき』から
など、いくつかの説があるが、いずれも民間語源の域を出ない。前二者については、『武奈伎』の『伎』が上代特殊仮名遣ではキ甲類の仮名であるのに対して、『木』『黄』はキ乙類なので一致しないという問題があるし、『ムナビラキ』説については『大半の魚は胸側を開くのになぜ?』という特筆性の問題がある上、ムナビラキ→ムナギのような転訛(または省略)は通常では起こり難い変化だからである。この他に、『ナギ』の部分に着目して
『ナギ』は『ナガ(長)』に通じ『ム(身)ナギ(長)』の意である
『ナギ』は蛇類の総称であり、蛇・虹の意の沖縄方言ナギ・ノーガと同源の語である → 参考: 天叢雲剣#「蛇の剣」
『nag-』は「水中の細長い生き物(長魚<ながうお>)」を意味する。この語根はアナゴやイカナゴ(水中で巨大な(往々にして細長い)魚群を作る)にも含まれている
などとする説もある。いずれにしても、定説と呼べるものは存在しない。
近畿地方の方言では『まむし』と呼ぶ。『薬缶』と題する江戸小咄では、『鵜が飲み込むのに難儀したから鵜難儀、うなんぎ、うなぎ』といった地口が語られている。また落語のマクラには、ウナギを食べる習慣がなかった頃、小料理屋のおかみがウナギ料理を出したところ案外美味だったので『お内儀もうひとつくれ、おないぎ、おなぎ、うなぎ』というものがある。」

と,懇切な詳説が載る。そうすると,『日本語源広辞典』の,

「ウナ(うねうね)+ギ(接尾語)」

とする説は,擬態語として魅力的ではあるが,「むなぎ」が「うなぎ」の古形とすると,棄てざるを得まい。

『日本語源大辞典』は,「うなぎ」と「むなぎ」と項を分け,

「うなぎ」では,

古語ムナギの転(東雅・大言海),
ムナギは,皮をムク(剥)から(名語記),
ムナギ(棟木)に似ていることから生じたムナギから(日本釈名),
胸が黄色いことから(日本語源=賀茂百樹),
ハムノコ(鱧子)の約転(日本古語大辞典=松岡静雄),
ムは身を表す語。ナギは長いものを表し,蛇類の総括名称。ムの子音が脱落して母音のみのウとなったもの(南島叢考=宮良当壮),
ウヲナガキ(魚長)の義(和句解・日本語原学=林甕臣),

と挙げ,

「①奈良・平安時代は『むなぎ』で,『万葉-十六・三八五三』『新撰字鏡』『和名抄』などに見られる。②『万葉-十六・三八五三』の家持歌に『石麻呂にわれ申す夏痩に良しといふ物ぞ武奈伎(むなぎ)取りめせ』があった,古来鰻が栄養価の高い食品とされたことがわかる。これ以降,伝統的な和歌に詠まれることはなく,俳諧狂言などに,庶民の食生活を描く素材として取り上げられる。③調理法としては,室町時代に酢(すし)や蒲焼きが行われるようになり,これらを『宇治丸』と称した。夏の土用の丑の日に鰻を食する習慣は,江戸時代の文化年間に始まったという。」

と付記する。さらに,「むなぎ」の項では,

ムナアギ(胸鰓)の義(和語私臆鈔・和訓栞・大言海),
ムナキ(胸黄)の義か(大言海),
ミナガキ(身長)の転,

を挙げ,

「『時代別国語大辞典-上代編』では,ムナギのナギについて,琉球語のナギ・ノーガ(虹・蛇の意)と同じであるとする説を紹介している。」

と付記する。

ここまで来ると,『語源由来辞典』の有力とする,

「『む』は『身』を,『なぎ』は『長し(長い)』の『なが』からとする説」

に傾くほかはない。「『あなご』の『なご』とも語幹が共通する」というのも,惹かれる。それを,『日本語の語源』は,音韻変化から,補強してくれる。

「ムナガキ(身長き)魚は,ガキ[g(ak)i]の縮約でムナギ(万葉集に武奈伎)に転音し,『ム』の子音[m]の脱落で,ウナギ(鰻)になった。」

と。

うなぎ.jpg



因みに,「鰻」の字は,「うなぎ」の意だが,

「魚+音符曼(マン かぶさってたれる,細く長くのびる)」

とされる。「曼」の字は,

「『おおうしるし+目+又(て)』で,長いたれ幕を目の上にかぶせてたらすこと」

とある。

http://zatsuneta.com/archives/001707.html

には,

「『鰻』のつくりの字『曼』は、『細長い』『長くのびる』という意味で、ずるずると長く伸びた草木の『つる』を『曼』という。この『曼』という字が、細長い魚であるウナギを表す字に当てられた。」

と説く。

なお,ニホンウナギについては,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE
http://www.ysk.nilim.go.jp/kakubu/engan/kaiyou/kenkyu/hakase/unagi-phd.pdf

に詳しい。

参考文献;
https://www.zukan-bouz.com/syu/%E3%83%8B%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%82%AE
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

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posted by Toshi at 05:21| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする