2018年01月06日

たまさか


「たまさか」は,最近あまり使わないが,「たまたま」と同義で,

偶,
適,

と当てる(「に」を伴って副詞としても用いる)。

おもいがけないさま,
まれなこと,めったにないこと,
万一,

という意味だ。「滅多にない」から,「思いがけない」ことだし,「偶然」となるが,「ひょっとすれば」の意で,「万が一」となる。同じ意味の外延といっていい。『大言海』は,「たまさかに」で,

偶,
適,
邂逅,

と当て,

「サカには,ソカにの転。おろそかに,おごそかにの類」

とある。『岩波古語辞典』も,

偶,
邂逅,

と当て,

「偶然出会うさま。類義語マレは,存在・出現の度数が極めて少ない意。ユクリカ・ユクリナシは不意・唐突の意。」

とあり,

「ばったり会う」

というのが原意ではないか。「そか(に)」については,『大言海』は,

「物の状態(さま)を云ふ語。『おごソカニ』『あはソカニ』『おろソカニ』」

と載る。因みに,「あはそかに」とは,

「アハは淡,ソカは副詞を形作る接尾語」

とある。『岩波古語辞典』も,「あはそかに」の項で,

「アハは淡,ソカはオゴソカ・タケソカなどのソカ。状態を示す接尾語」

とある。

なお,「ゆくりなし」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/441967296.html

で触れたように,『岩波古語辞典』は,

「ユクは擬態語。ユクリカと同根(リカは状態を示す接尾語)。気兼ね遠慮なしに事をするさま。相手がそれを突然だと感じるような仕方。リは状態を示す接尾語。ナシは,甚だしい意」

とし,

事をするのに無遠慮である,
だしぬけである,

という意味を載せる。唐突感が強い,という意味合いなのだろう。因みに,「ゆくりか」は,

「ユクは擬態語。ユクリナシと同根。リカは状態を示す接尾語」

とあり,

無遠慮で気兼ねをしないさま,
思いがけず突然なさま,

という意味になる。しかし,「ゆくりか」のひとつ前の項に,「ゆくり」があり,

緩り,

と当てて,

ゆとりがある,ゆったりとしているさま,ゆっくり,

の意味なので,あるいは,素人判断に過ぎないが,「ゆくり」の状態を妨げるというニュアンスなのではないか,と想像する。だから,類語とは言え,かなりニュアンスが異なる。

さて,「たまさか」だが,『日本語源広辞典』は,

「タマ(たまたま)+さか(接尾語 ソカ)」

を取り,『大言海』と同じである。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ta/tamasaka.html

は,その辺りを,

「たまさかの『たま』は、滅多にないこと、希なことを意味する『たま』『たまたま』と同源。たまさかの『さか』は、『おろそか(疎か)』や『おごそか(厳か)』の『そか』と同系で、状態を表す接尾語と思われる。 接尾語『そか』は、その前の音が『O(母音)』なので接尾語も『O(そ)』になり、たまさかの『さか』は、前の音が『A(母音)』なので『A(さ)』になったのであろう。」

と説く。その変化を,『日本語の語源』は,こう説く。

「『ひじょうに希である』という意のイタマレニ(甚稀に)は,省略されてタマニ(偶に)に変じた。これを強めてタマタマ(偶々)という。
 イササカ(聊か)は『ついちょっと。ほんのすこし。わずかばかり』という意の形容動詞である。『めったに会いがたいものがついちょっとあう』という意を表現するとき,ふたつの形容動詞を重ねてタマニイササカ(偶に聊か)といった。語中の三音節を落として「タマサカ(偶)になった。〈わたつみの神のをとめにタマサカニ漕ぎ向かひ〉(万葉・永江浦島),〈タマサカニわが見し人をいかならむ縁(よし)をもちてかまた一目見む〉(万葉)」

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル:たまさか 邂逅
posted by Toshi at 05:14| Comment(1) | 言葉 | 更新情報をチェックする