2018年01月08日
ミイラ
この「ミイラ」は,
ミイラ取りがミイラになる,
という諺の「ミイラ」である。昔から不思議であった。「ミイラ」というのは,
mirra,
で,ポルトガル語らしい。
木乃伊,
と表記するが,これは漢訳語そのものらしい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%A4%E3%83%A9
には,
「漢字表記の『木乃伊』は14世紀の『輟耕録』巻3に回回人の言葉として出現し、中国語では『蜜人』というとしているが、おそらくは同じ語にもとづく。日本語の漢字音で読む『モクダイイ』はあまりにも原音から遠い印象があるが、北京語でこれを読むと『ムーナイイー』(普通話: mùnǎiyī)のようになる。『輟耕録』ではミイラを回回人の習俗として記し、手足をけがした人がミイラを食べるとたちどころに直ると記述している。『本草綱目』でも『輟耕録』を引用しているが、本当に効果があるかどうかはわからないとしている。日本でもこの表記を中国語から借用し、『ミイラ』の語に充てるようになった。」
とある。日本でも,「即身仏」という,
「密教系の日本仏教の一部では、僧侶が土中の穴などに入って瞑想状態のまま絶命し、ミイラ化した物」
があるが,日本の風土ではなかなか難しいが,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%A4%E3%83%A9
に,
現存する即身仏の一覧,
が載っている。
さて,「ミイラ取りがミイラになる」
とは,落語にも「木乃伊取り」があるように,
人を連れ戻しに出かけた者が,そのまま帰ってこなくなる,転じて,相手を説得するはずが,逆に相手に説得されてしまう,
という意味だが(『広辞苑』),どうして,「ミイラ取りがミイラになる」が生まれたのか,なかなか不思議である。なお,落語の「木乃伊取り」は,
http://senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2004/11/miiratori.html
にあるように,相手を連れ戻しに行って帰ってこなくなる,という噺である。しかし,どうしてそういう意味になったのか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%A4%E3%83%A9
に,
「日本語の『ミイラ』は16〜17世紀にポルトガル人から採り入れた言葉の一つで、ポルトガル語: mirra は元来『没薬』を意味するものであった。『ミイラ』への転義の詳しい経緯は未詳であるが、没薬がミイラの防腐剤として用いられた事実や洋の東西を問わず“ミイラ薬”(ミイラの粉末)が不老長寿の薬として珍重された事実があることから、一説に、“ミイラ薬”(の薬効)と没薬(の薬効)との混同があったという。只、薬に使用したため、体調を崩し、死者まで出た事から、後には燃料として、欧米中心に輸入されていたと早稲田大学名誉教授でエジプト考古学研究の権威吉村作治は述べている。」
とある。『広辞苑』には,「没薬(もつやく)」は,
ミルラに同じ,
とある。「ミルラ」を引くと,ラテン語で,myrrha,
「主に東部アフリカおよびアラビアなどに産するカンラン科の諸植物から採取したゴム樹脂。黄色,赤色または褐色。芳香と苦味とがあり,古来香料・医薬また死体の防腐剤などに用いた。」(『広辞苑』)
とあり,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%A1%E8%96%AC
には,
「古くから香として焚いて使用されていた記録が残されている。 また殺菌作用を持つことが知られており、鎮静薬、鎮痛薬としても使用されていた。 古代エジプトにおいて日没の際に焚かれていた香であるキフィの調合には没薬が使用されていたと考えられている。 またミイラ作りに遺体の防腐処理のために使用されていた。 ミイラの語源はミルラから来ているという説がある。」
つまり,語源から見ても,ミイラづくりに使う薬剤から見ても,「ミイラ」と「ミルラ」は混同されやすい。『大言海』の「ミイラ」の項には,
「元来,防腐剤,香料を意味する語なりしが,防腐を施して固まりたる人,及,動物をも云ふに至れり」
とある。
http://kotowaza-allguide.com/mi/miiratorigamiira.html
には,
「『ミイラ』とは、防腐剤として用いられた油のことをさす。ミイラ(木乃伊)は、アラビアやエジプトなどで死体に塗る薬のことで、この薬を布で巻いて箱に入れ棺におさめると死体が腐るのを防げた。この薬を取りに行った者が、砂漠で倒れるなどして目的を果たせず、ついには自分がミイラになってしまったことが、このことわざの起源とされている。『ミイラ』はポルトガル語で「没薬」という意味。」
とある。似た解釈は,
https://kakuyasu-eigo.com/gooutforwool/
「“ミイラ”の元々の意味は、『没薬』を意味する防腐剤として用いられた油のことでした。これがいつの間にか、今の「ミイラ」じたいを指す言葉に転義したようです。そしてこの『ミイラ』が、16~17世紀ごろのヨーロッパにおいて、漢方のような薬として広まったことから、墳墓などにミイラを取りにいく商人が増えました。
さらに江戸時代に日本にも、ミイラという言葉とともに輸入され、”ミイラの粉末”が大名など有力者を中心に、薬として入ってきたようです。」
である。しかし,ミイラを造っている薬剤ミルラを取りに行かなくても,ミルラそのものを採取すればよいのに,そうしなかったのは,その製造方法が廃れたためなのだろうか。
「“ミイラ薬”(ミイラの粉末)が不老長寿の薬として珍重された」
という事実から,ただの盗掘にすぎない,
ミイラを取りに行って(行き倒れて)ミイラになった,
というのもあったかもしれないが,諸種薬草を集めてるうちに,
ミルラを取りに行って(行き倒れて)ミイラになった,
という方が,まだましなような気がする。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%A1%E8%96%AC
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm