2018年01月16日

すずなり


「すずなり」は,

鈴生り,

と当てる。

果実などが神楽鈴のように群がって房をなすこと,

で,

ふさなり(総生り),

とも言うらしい。その意味から派生して,

多くのものが房状に集まってぶら下がっていること。また,大勢の人が1か所にかたまっていること,

も言い,「鈴生りの観衆」と言ったりする。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/su/suzunari.html

は,

「鈴なりの『鈴』は、神楽鈴のこと。 神楽鈴は、12個または15個の小さい鈴を繋いで柄に 付けたもの。 果実が群がってなるさまが、神楽鈴の鈴の付き方と似ていることから『鈴なり』と呼ぶようになり、物や人が群がり集まることも意味するようになった。 鈴なりの『なり』は『生り』であるが、『なりふり』や『身なり』など形状を表す『なり(形)』と解釈して、『鈴形』と表記されることもある。」

とあるので尽きているのかもしれない。

神楽すず.gif

(神楽鈴〔http://www.ise-miyachu.co.jp/faq/?cat=42より〕)


「神楽鈴(かぐらすず)」は,神楽を舞うときに用いる鈴で,小さい鈴を12個または15個つないで柄をつけたもの,という。歌舞伎舞踊の三番叟(さんばそう)などにも用いる,とある(『デジタル大辞泉』)。

神楽鈴.jpg

(神楽鈴をもつ巫女〔https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4より〕)


「鈴」は,

すず,
とも,
れい,

とも呼ぶが,に,「すず(鈴)」と「れい(鈴)」は別で,

「すず(鈴)」は,

「中空の身の中に,丸(がん)を封じた楽器,鳴物。身は球形で一端に細い口(鈴口(すずくち))をあけるのが一般であるが,扁平なものや砲弾形,多角形のものもあり,また何ヵ所もの口をあける場合がある。比較的小型で,金属のほか土や木でもつくられ,吊り下げるための鈕(ちゆう)をもつ。〈がらがら〉などと同じように,乾燥した木の実などに,その原型を求める説もある。日本では古く〈須須(すず)〉と書かれ(《和名抄》),その語源は朝鮮語起源説(《東雅》),〈音の涼しきより名づくならむ〉(《和訓栞(わくんのしおり)》)などと諸説あるが,明らかではない。」(『世界大百科事典 第2版』)

「中空で割れ目のある器体に丸 (がん) を入れて振鳴らす振奏体鳴楽器。『すず』は大和言葉で,日本には古来木の実や土でつくった原始的な鈴があったとされるが,今日一般的な金属製のものは古墳時代に大陸より伝来したといわれる。リズム楽器としてのみでなく,呪術的な意味をもつ装身具としても用いられ,棒の先に複数の鈴を取付けた神楽鈴は,巫女舞や神聖視される能『三番叟』の舞踊などに使われてきた。そのほか,神社拝殿正面の大きな鈴,歌舞伎囃子に用いられる『駅路 (えきろ) 』などがある。なお,同じ字をあてるが鈴 (れい) や鈴 (りん) と読む場合は異なる楽器をさす。」(『ブリタニカ国際大百科事典』)

「れい(鈴)」の項は,

「〈鈴〉の字をレイと読む場合,日本では有柄有舌の体鳴楽器,すなわち把手をもち内部に舌(ぜつ)を吊るして,振ると舌が本体の内側を打って発音するものをいい,一般には密教法具の金剛鈴(こんごうれい)を指す。しかし中国で〈鈴〉とするものは,スズや日本のレイと異なり,有鈕有舌の鐘(かね),すなわち吊り手をもち,内部に舌を吊るすものをいい,日本ではこれを古くから鐸(たく)と呼んでいる。さらに中国ではレイにあたる有柄有舌のものに鐸の字を用いており,混乱を招きやすい。」(『世界大百科事典 第2版』)

「日本の体鳴楽器。『振鈴』『鈴鐸』『金鐸』などともいう。金属製の楽器で,円筒の中に金属の舌 (ぜつ) をつるし,それが周囲に当って音を出すものであるが,無舌のものもある。仏教儀式中,特に密教の修法に柄のついた手鈴が用いられ,金剛杵の一部に鈴をつけたようなものであることから,『金剛鈴』ともいわれ,『独鈷 (とっこ) 鈴』『三鈷鈴』『五鈷鈴』などの別がある。歌舞伎の下座音楽では,宮殿,寺院などの場で,雅楽の気分を出すために鉦鼓の代用として用いられる。いわゆる『すず』と『れい』を合せて「すず」と呼ばれることもある。」(『ブリタニカ国際大百科事典』)

とあるので,神楽鈴は,「すず」である。「鈴」は,別に,

りん(れい),

とも訓み,小さい鉢形をした仏具。響銅(さはり)で作る。読経の際に小さい棒でたたいて鳴らす,「お鈴」(おりん)ということもある。「錀」とも書くらしい。

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(鈴〔りん〕)


「すず」の語源は,『大言海』は,

「響くを名とす。或いは云ふ,音の清(すず)しき意かと」

とする。『日本語源広辞典』も,同じく,

説1は,「スーン,スーン・スーズー(擬音)による語」
説2は,「音のスズシサを表した語」

と,二説挙げる。『日本語源大辞典』も,

音がスズシイ(清・涼)ところから(和句解・日本釈名・百草露・名言通・和訓栞・本朝辞源=宇田甘冥。国語の語幹とその分類=大島正健・大言海),
響く音から(大言海),
スム(清)の義(言元梯),

と,ほぼ同じ二説になる。響く音の擬音と,その清んだ音からきたといえるのだろう。

ところで,「すずなり」と似た意味で,

せんなり(千成・千生),

という言葉がある。『岩波古語辞典』には,

千成瓢(せんなりひさご),

とあり,

瓢箪の一種,果実が二三寸の長さで,数多く群がりなるもの,

とあり,

千生柿,
千生酸漿,

とも言う。今日では,秀吉の,

千成瓢箪,

が有名だから,「千生り」というと,そのことが浮かぶ。因みに,

Fotolia_16786706_XS.jpg



秀吉の馬印は,千成瓢箪ではない。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E5%8D%B0

に,豊臣秀吉の馬印は,

img094.jpg

(高橋賢一『旗指物』より)


小馬印 - 金の逆さ瓢箪に金の切裂
大馬印 - 金の軍配に朱の吹き流し
千成瓢箪は馬印としては用いられなかったが、船印に使用されていたという説もある,

とあるように,秀吉神話(自作自演の可能性もある)にすぎないようだ。

参考文献;
http://www.ise-miyachu.co.jp/faq/?cat=42
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4_(%E4%BB%8F%E5%85%B7)
高橋賢一『旗指物』(人物往来社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
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ラベル:すずなり 鈴生り
posted by Toshi at 05:35| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする