2018年02月16日

あじ(味)


「あじ(ぢ)」は,

味,

と当てる。

「舌が食べ物や飲み物などに触れたときに起こる、甘い・辛い・しょっぱい・エグい・渋い・うまいなどの感覚。」

であり,それに準えて,

「ものごとの持つ深み。表面的には強く現れていないが、対象について知るにつれて分かってくる良さ。」

にまで,意味が広がる。

当てた「味」の字は,

「未は,細いこずえのところを強調した象形文字で,『微妙』の妙と同じく,細かい意を含む。味は『口+音符未』で,口で微妙に吟味すること」

とあり,

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%91%B3

には,

「微妙な違いを表す(藤堂[明保])。新芽の味わい(白川[静])とも。」

の意を持つとも,載せる。

「あじ(ぢ)」について,『大言海』は,

「假名遣いは,万葉集に,紫陽花を,『味狭藍(アヂサヰ)』『安治佐為(アヂサヰ)』。日本釈名(元禄)下五十三味『アヂは,甘き乳(チ)也。乳味は,食の始にて,甘き物也』。乳を元とする語とす,いかがあるべき」

と,疑問符を付けつつ紹介している。『岩波古語辞典』には,

「万葉集にアヂサヰを『味狭藍』と書いているから,古くからアヂという言葉はあったのだろうが,室町時代頃まで,字書類の訓にもアヂの例は見えない。アヂハヒはある」

とあり,「あぢはひ」を見ると

「アヂ(味)を活用させた語。サキ(幸)サキハヒの類」

とある。「味」の認識はなかったはずはないのだが,「あじわう」味覚体験は言語化できても,「味」という味覚自体を対象化できなかった,ということなのだろうか。しかし,それにしては,「あぢはひ」が「あぢ」の活用とあるのは,よく分からない。『日本語源広辞典』には,

「語源は,『アジ』(うまさ,あじわいの良さ,良い感じ,妙味)です。こういう日常生活に密着している言葉の語源は,これ以上分解できないようです。魚の鯵,鳥のアジなど,味のいい魚や。鳥の意にも使います。古語は,味ハヒで,中世以降は,アジ,味,が使われるようになりました。」

とあり,

アジ(ヂ)ハヒ→アジ(ヂ),

という経緯を想定する。「鯵」の語源として,

味がある魚の意,

という説もあるし,鴨の「アジ(シマアジ)」については,

「和名アジは味が良かったことに由来する」

とあるので,「味」との関係は深いのは確かであるが,『日本語源広辞典』によれば,「味」という概念ないまま,「あじわい」という味覚言語が先にあった,ということになる。

『日本語源大辞典』は,

アマチ(甘乳)の約(日本釈名),
アはアマ(甘)のア,チはトロ(蕩),トク(解)などのト(日本語源=賀茂百樹),
ウマタリ(可美垂)の義。ウマの反ア,ダリの反ヂ(和訓栞)。
アヘ(饗)と同源か(日本古語大辞典=松岡静雄),
アは賞(め)でる意味の感動詞,チはすぐれた感覚,何ともいえぬ作用をこめた霊(衣食住語源辞典=吉田金彦),

と挙げて,

「味覚についていう場合,『味はひ』が古くから用いられていた。『味』がとってかわるのは中世以降とされる。」

と述べる。どうやら,

あじ(ぢ)わひ,

という状態を言い表わす言葉が先で,「味」という抽象概念が,後に抽出された,という感じらしいのである。和語らしいと言えば言えるのかもしれない。

味覚(みかく)は、動物の五感の一つであり、食する物質に応じて認識される感覚である。生理学的には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味に位置づけられる。

ところで,五つの基本味は,

甘味,酸味,塩味,苦味,うま味,

であるが,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%B3%E8%A6%9A

によると,

「1916年、ドイツの心理学者ヘニング(Hans Henning)は、この4つの味とその複合で全ての味覚を説明する4基本味説を提唱した。ヘニングの説によると、甘味、酸味、塩味、苦味の4基本味を正四面体に配し(味の四面体)、それぞれの複合味はその基本味の配合比率に応じて四面体の稜上あるいは面上に位置づけることができると考えた。
日本では1908年に池田菊苗がうま味物質グルタミン酸モノナトリウム塩を発見した。このうま味は4基本味では説明できないため、日本ではこれを基本味とする認識が定まった。しかし西洋では長らく4基本味説が支持され続け、うま味が認められたのは最近のことである。現在では味蕾(の)に受容体が存在するものとして定義されており、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが該当し、五基本味と位置づけられる。」

とある。

味覚分布.png

(味覚分布地図、1は苦みを2は酸味を3は塩を4は甘味を感じるとされる。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%B3%E8%95%BEによる)


参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%B3%E8%95%BE
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%B3%E8%A6%9A
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%91%B3
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

ラベル:あじ あぢはひ
posted by Toshi at 05:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする