2018年02月17日

アジ(鯵)


「アジ(ヂ)」は,

鯵(鰺),

を当てる,魚のアジのことである。「あじ(味)」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456913388.html?1518725842

で触れたように,「アジ」は,語源として,

味がある魚の意,

という説もあるほど,「あじ(味)」と繋がりのある言葉のようである。ただ,当てられた「鯵(鰺)」の字は,

「魚+音符參(もとは操の右側の『喿』)だったのを書き誤ったもの」

とある。しかも,

なまぐさい,

という意味で,魚の「アジ」の意味に使うのは,我が国だけの用法である。

『大言海』には,

「和訓栞,アヂ『新撰字鏡ニ,鰺を訓ゼリ,萬葉集ニ,味と書けり,味ノ佳ナルヲ稱スルナルベシ』。いかがあるべき」

と,「味」から来た説に,いささか疑問を呈しているようである。『大言海』は,「字鏡」の,

「鰺,阿地」

「本草和名」の,

「鰺,阿知」(「和名抄」も同じ)

を引用しているのは,「鰺」は,「あぢ」ではなく「あち」と訓んでいたかもしれないからである。

マアジ(Trachurus japonicus).jpg

(マアジ(Trachurus japonicus) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8による)


因みに,「アジ」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8

に,

「体側の側線上に鋭い突起をもつ稜鱗(りょうりん: Scute)が発達することでアジ科の他の亜科と区別される。稜鱗は、日本では『ぜんご』『ぜいご』という俗称で呼ばれることが多く、学術的には楯状鱗と呼ばれることもある。種類によって稜鱗の並ぶ長さや幅は異なり、同定の手がかりになる」

とある。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/a/aji_sakana.html

は,しかし,

「アジの語源は『味』で、その味の良さをほめて名付けられた。 他にも味の良い魚はある が、『魚』の意味で『アジ』を用いる方言が各地で見られるように、イワシやサバなど とともに日本の代表的な食用魚で、漁獲量が多かったことも『アジ』という名前の由来に 関係している。漢字の『鯵(鰺)』は、元は魚偏に『操』だった右側の字を日本人が『参』と 書き間違えたもので、『参る』の意味に関係するものではない。」

と,「味」説を採る(ただ,魚偏に「喿」の字が手元の『字源』『漢字源』には見当たらないのだが)。

http://zatsuneta.com/archives/001721.html

は,「鯵」(あじ)の名前の由来について,やはり,

「『アジ』という名前は、単純に「味のよい魚」だからアジになったという。漢字の『鯵』は魚へんに『喿』の字の写し間違いであるとする説がある。つくりの『喿』は『生臭い』という意味。他にも、アジの一番おいしい季節が旧暦の3月なので、数字の『参』が使われたという説。『おいしくて参ってしまう』の意であるとする説。『参』には『多くのものが入り交じる』という意味があり、群集する魚であるから『鯵』になったという説がある。」

としている。しかし「参(參)」の字は,

「三つのかんざしをきらめかせた女性の姿を描いたもの。のち彡(三筋の模様)を加えて參の字になった。入り混じってちらちらする意を含む。」

で,「いつもいっしょに入り混じる」「ちらちらする」という意はあっても,「集まる」という意はない。

http://www.yuraimemo.com/1210/

は,「アジ」の由来について,

「『アジ』の由来は、旧暦の三月より旬となるので魚偏に参と書くという説があるようだがそれは誤りであって、鰺の字は生臭いという意味があるらしい。でもその漢字『鯵』についても、元は魚偏に『喿』だった右側を日本人が『参』と書き間違えたのだという説もあるから何を信じればいいのか。だから漢字の『参る』には何の意味もないと考える方がいいようである。…『アジ』の名前の由来を調べると、そのアジの美味しいところからきているという…。つまりアジは「味」とのことで、食べて美味しいから『アジ』ってことになる。『イワシ』とか『サバ』とか味のいい魚は他にもいくつかいるけど、なぜアジなのか?これらの魚も含めて、地方によっては方言で漁獲量の多い美味しい魚全般を『アジ』と呼ぶのだそう。その中でも一番とれたからこの魚が『アジ』と呼ばれるようになったと考えればいいらしい。」

http://diamond.jp/articles/-/19045

には,

「新井白石――江戸時代中期の政治家で儒学者――が享保2年(1717年)に書いた『東雅《とうが》』という語源辞典の中で、『或人の説く鰺とは味也、其の味の美をいふなりといへり』と書いているのです…。新井白石の功績とネームバリューからか、今日ではこの説が広く採用されていますが、他に、鯵が群れをなす習性から、群がり集まることを『あち』といい、これが『あぢ』に変わり、『あじ』になったという説があります。
実は、漢字の方の鯵にはさまざまな説あり、『魚』偏に『参』となったのは、鯵が参集する(群れる)魚だからという説が、有力候補の一つになっています。
 また、寛永20年(1643年)に刊行された、我が国最古の料理の専門書『料理物語』では、鯵は『魚』偏に『良』と書いて、『あち』と読ませています。」

とあるが,「喿」を「參」と書き間違えた後では,後解釈にすぎないだろう。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q118663351

は,ご丁寧に,対比しつつ,

「最初の方の説明ををA、次の方の説明をBとして、その点検のなかで説明をしていきたいと思います。
①Bの説明は『群れをなす』から『あつまる(参集する)』として、この漢字が作られたとしています。『千葉県水産総合科学研究センター』のサイトを根拠とされています。
②Aはそれを「間違い」とされています。その通り、間違いでしょう。Bのような説明がされることがあるのは事実です。しかし、『参』という字に『群れをなす』とか『あつまる』という意味はありません。むしろそれを言うなら『参』ではなくて『集』の方でしょう。
③中国語の『鯵』という字はどんな意味なのか。確かに『鯵』という字には『生臭い』という意味もあります。では、鯵とは『生臭い魚』という意味なのでしょうか?もちろん、魚は生臭い物です。しかし、鯵が特に生臭い魚の代表だとはとても思えません。むしろ、それは同じ大衆魚なら「生き腐れ」と言われる鯖(さば)の方が似つかわしいでしょう。」

「鯵」の偽字(『字源』は譌(なまる)字としている)をもとに解釈しても,語源には届かないだろう。結局,

アヂ(味)ある魚の意から(和語私臆鈔・俚言集覧・和訓栞・本朝辞源=宇田甘冥・東雅)

が大勢のようだが,『日本語源大辞典』には,

アラヂ(粗路)の義。その背の形から名づけられた(名言通),
イラモチ(苛持)の義(日本語原学=林甕臣),

の説も載るが,『大言海』が少し疑問を投げながら,否定できない「味」説になるのだろう。その場合,

「地方によっては方言で漁獲量の多い美味しい魚全般を『アジ』と呼ぶのだそう。その中でも一番とれたからこの魚が『アジ』と呼ばれるようになったと考えればいいらしい。」

という(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q118663351)ように,「アジ」の範疇を広くとらえていいのではないだろうか。ただ,『大言海』が引用していたように,

「鰺,阿地」(「字鏡」)
「鰺,阿知」(「本草和名」「和名抄」)

の,「アチ」という訓みの問題は残る。「味」は,『岩波古語辞典』の言うように,

「万葉集にアヂサヰを『味狭藍』と書いているから,古くからアヂという言葉はあった」

と,「アヂ」であり,「アチ」ではないのだから。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

posted by Toshi at 05:24| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする