2018年02月18日

アジサイ


「アジサイ」は,

紫陽花,

と当てられるが,「味」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456913388.html

の項で触れたように,

「假名遣いは,万葉集に,紫陽花を,『味狭藍(アヂサヰ)』『安治佐為(アヂサヰ)』」(『大言海』)。

とされていたほどに古い。『大言海』は,「あぢさゐ」の項で,

「集眞藍(あづさあゐ)の約轉(阿治(あぢ)の語原を見よ。眞靑〔サアヲ〕,サヲとなる)。」

としている。「あぢ(阿治)」の項には,

「集(あつ)の転(あづさゐ,あぢさゐ)。群集の意。播磨風土記,揖保郡香山(かこやま)里,阿豆村『人衆,集來談論,故名阿豆』(字鏡廿三『諵,阿豆萬利(あずまり)氏語事』)。アヂガモと云ふが,成語なるべし。臘觜鳥(アトリ)も集鳥(アツドリ)なり。あぢ群(むら)〔鶴群(タヅムラ)〕と云ふは,群がる意。アヂの群鳥(ムラドリ)とも云ふなり。和訓栞,後編,アヂムラ『今,アヂ鳧(ガモ)と云ふ,多く集まる鳥也』。」

とあり,「あぢがも」の項には,

阿治鴨,

と当てている。「アジサイ」という花は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%B5%E3%82%A4

にあるように,

「アジサイ(紫陽花、学名 Hydrangea macrophylla)は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木の一種である。広義には『アジサイ』の名はアジサイ属植物の一部の総称でもある。狭義には品種の一つ H. macrophylla f. macrophylla の和名であり、他との区別のためこれがホンアジサイと呼ばれることもある。原種は日本に自生するガクアジサイ H. macrophylla f. normalis である。」

青色と紫色のあじさい.jpg



が,「アジサイ」の語源は,

「アジサイの語源ははっきりしないが、最古の和歌集『万葉集』では『味狭藍』『安治佐為』、平安時代の辞典『和名類聚抄』では『阿豆佐為』の字をあてて書かれている。もっとも有力とされているのは、『藍色が集まったもの』を意味する『あづさい(集真藍)』がなまったものとする説である。そのほか、『味』は評価を、『狭藍』は花の色を示すという谷川士清の説、『集まって咲くもの』とする山本章夫の説(『万葉古今動植物正名』)、『厚咲き』が転じたものであるという貝原益軒の説がある。」

と諸説紹介しているが,『語源由来辞典』

ガクアジサイ.jpg



http://gogen-allguide.com/a/ajisai.html

は,

「あじさいは,古く『あづさヰ(あじさヰ)』であった。『あづ(あぢ)』は集まるさまを意味し,特に小さいものが集まることを表す語。『さヰ』は『真藍(さあい)』の約。もしくは,接頭語の『さ』と『藍(あい)』の約で,靑い小花が集まって咲くことから,この名が付けられたとされる。ただしあじさいを漢字で『集真藍』と書いたとする説は誤りで,語源をさかのぼって漢字を当てはめるならば『集真藍』の字であろうというものである。漢字の『紫陽花』は中国の招賢寺にあった花の名前で,日本のあじさいとは異なるものであったといわれる。日本の古い文献では,『万葉集』で『紫陽花』の例が見られる。あじさいには『七変化』や『七色花』などの異名があることから,新潟県や佐賀県では皮膚の色が変わることに喩え,『七面鳥』といった呼び方もされる。」

また,『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E7%B4%AB%E9%99%BD%E8%8A%B1

も,

「あじさいの語源は、『藍色が集まったもの』を意味する『あづさい(集真藍)』が変化したものとされる。『あづ』は集まる様を意味し、特に小さいものが集まることを意味し、『さい』は『さあい』の約、接続詞の『さ』と『あい(藍)』の約で、青い小花が集まって咲くことから、この名がつけられたされる。また、『あぢさゐ(味狭藍)』の意で、『あぢ』はほめ言葉、『さゐ』は青い花とする説もある。」

とし,その解釈は異論があるが,「藍色が集まったもの」とするようだ。『日本語源広辞典』も,

「あぢ・あづ(集める)+さゐ(真藍)」

とする。『日本語源大辞典』も,

「『あじ(あぢ)』は『あつ』で集まること,『さい』は真藍(さあい)の約で,靑い花がかたまって咲く様子から名づけられたとする説が有力か」

としている。たしかに,微妙な差はあるが,

アヅサヰの約転。アヅはアツ(集),サヰはサアヰ(真藍)の略,

とする『大言海』説以外にも,

アダアヰの略(万葉考),
ウスアヰ(薄藍)約転(言元梯),
アツ(当・集)フサ(総)アヰ(藍)の転(語源辞典・植物編=吉田金彦),
アツサキ(厚咲)の訛り。またアツアヰ(厚藍)の転(日本釈名・滑稽雑談所引和訓義解),

と色にまつわるものがあるし,その他,

群れて咲くことから,アヂサハヰ(鴨多率)の約(名言通),

もあるが,もっと大事なのは,「味」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/456913388.html

で触れたように,万葉集に,「アジサイ」を「味狭藍(アヂサヰ)」と当てたことから,「あぢはひ」との関係も無視できない。味と関わらせる説には,

アヂサヰ(味狭藍)の義。アヂ(味)はほめることば,サヰ(狭藍)は青い花の色を言う(万葉代匠記・和字正濫鈔・万葉集類林・和訓栞・日本古語大辞典=松岡静雄),

がある。「味」の語源とも絡み,僕は,「味狭藍(アヂサヰ)」説に惹かれる。万葉集に,

「言問はぬ 木すら味狭藍(あぢさゐ) 諸弟(もろと)らが 練りの村戸(むらと)に あざむかえけり」(大伴家持)
「安治佐為(あぢさゐ)の 八重咲くごとく 八つ代にを いませ我が背子 見つつ偲ばむ」(橘諸兄)

を,花色の変化と華々しい八重咲きを,花の「あじはひ」と見たように思うのは,僻目であろうか。

ところで,「アジサイ」に,「紫陽花」と当てたのは,

「『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』で、著書の源順(みなもとのしたごう)が白居易(はくきょい)の詩に出てくる紫陽花をこの花と勘違いしたことによるとされる。漢名の紫陽花は別の花。」(『由来・語源辞典』)

であるが,『倭名類聚抄』には,「紫陽花」ついて,

「白氏文集律詩云 紫陽花 和名安豆佐爲」

とある。では,白楽天はどういっているのか。

320px-Bai_Juyi.jpg

(白楽天・『晩笑堂竹荘畫傳』より https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E5%B1%85%E6%98%93より)

http://blog.goo.ne.jp/yamansi-satoyama/e/904352b2ae5e0bc1e663e73fad2668e8

によると,白居易は,杭州の長官だった頃,郊外にある招賢寺という山寺を訪れ,そこにひっそりと咲く見知らぬ花を「紫陽花」と名付けて,七言絶句一首を作った,という。

何年植向仙壇上   
早晩移栽到梵家   
雖在人間人不識   
与君名作紫陽花   

何れの年に植えて仙壇上に向かう
早晩移し栽えて梵家に到る
人間に在りと雖も人識らず
君に名を与えて紫陽花と作す

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%B5%E3%82%A4

によると,

「日本語で漢字表記に用いられる『紫陽花』は、唐の詩人白居易が別の花、おそらくライラックに付けた名で、平安時代の学者源順がこの漢字をあてたことから誤って広まったといわれている。草冠の下に「便」を置いた字が『新撰字鏡』にはみられ、『安知佐井』のほか『止毛久佐』の字があてられている。アジサイ研究家の山本武臣は、アジサイの葉が便所で使われる地域のあることから、止毛久佐は普通トモクサと読むが、シモクサとも読むことができると指摘している。また『言塵集』にはアジサイの別名として「またぶりぐさ」が挙げられている。」

と,何だか身もふたもない話になってしまう。アジサイは,「綉球花」あるいは「八仙花」と呼ばれるとか。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%B5%E3%82%A4
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
http://blog.goo.ne.jp/yamansi-satoyama/e/904352b2ae5e0bc1e663e73fad2668e8

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

posted by Toshi at 05:35| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする