2018年03月13日

イチジク


「イチジク」は,

無花果,
映日果,

と当てる。『広辞苑』には,

「中世ペルシャ語anjīrの中国での音訳語『映日果(インジークォ)』がさらに転音したもの」

とある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B8%E3%82%AF

にも,

「『無花果』の字は、花を咲かせずに実をつけるように見えることに由来する中国で名付けられた漢語で、日本語ではこれに『イチジク』という熟字訓を与えている。中国で『映日果』は、無花果に対する別名とされた。
『映日果』(インリークオ)は、イチジクが13世紀頃にイラン(ペルシア)、インド地方から中国に伝わったときに、中世ペルシア語『アンジール』(anjīr)を当時の中国語で音写した『映日』に『果』を補足したもの。通説として、日本語名『イチジク』は、17世紀初めに日本に渡来したとき、映日果を唐音読みで『エイジツカ』とし、それが転訛したものされている。中国の古語では他に『阿駔』『阿驛』などとも音写され、『底珍樹』『天仙果』などの別名もある。
伝来当時の日本では『蓬莱柿(ほうらいし)』『南蛮柿(なんばんがき)』『唐柿(とうがき)』などと呼ばれた。いずれも“異国の果物”といった含みを当時の言葉で表現したものである。」

と,ペルシャ語由来,中国語経由説を採る。さらに,『日本語の語源』も,

「いちじくのルーツはイランで,かの地ではアンジーとかエンジーという。中国に渡来したとき,『映日』で表音してインジクォ(映日果。李時珍の『本草綱目』)といった。寛永年間にわが国に伝来したとき,発声を明確にするため,撥音をチに換えてイチジク(無花果)と唱えた(安藤正次『言語学概論』)。ペルシャ語が中国語を経由して日本語化したわけである。」

とし,『たべもの語源辞典』も同じ説を採る。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/i/ichijiku.html

は,

「いちじくの漢字『無花果』は,花嚢の内部に無数の雄花と雌花をつけるが,外からは見えないことから付けられた当て字である。 いちじくは,ペルシャ語の『Anjir』がヒンズー語で『Injir』になり,中国語で『映日(イェンジェイ)』と音写し,更に『果(クォ)』が加えられた。『映日果(イェンジェイクォ)』が日本に入り,『イチジク』と呼ばれるようになった。また,『イェンジェイクォ』から『イチジク』の変化は,単に日本人が聞き取ったのが『イチジク』であったとする説と,いちじくのすこしずつ熟してゆく過程『一熟(いちじゅく)』の意味として捉えたため,『イチジク』になったとする説がある。」

として,少し含みを持たせている。『大言海』は,

「和漢三才圖絵(正徳)八十八,無花果『俗云一熟云々,一月而熟,故名一熟』。和訓栞,後編,いちじく『一熟の義』。重修本草綱目啓蒙(享和)廿二『無花果,いちじく』。佐渡志(文化)五『無花果,いちじく』音韻假字用例に,熟(じゅく),塾(じゅく),じくは,中略和音なりとあり,イチジュク,ジュクセイ(塾生)などと發音するものは一人もなし。以下略」

と記するのみで,「一熟」説を批判するにとどめている。なお,

「大和本草(正徳)十,無花果『寛永年中,西南洋の種を得て,長崎に植ふ。今,諸国に有之云々』」

と載せて,寛永年中(1624-43)に伝来したものらしい。

『日本語源広辞典』は,

「語源は,『中世ペルシャ語anjiir アンジェール』です。中国音訳は,映日果インジークォ,意訳した語が『無花果』です。近世に渡来。日本で犬枇杷をイチジクと呼んでいましたが,これと似ていたので無花果をイチジクといいます。『イチ(美)+熟』で,『ウマク熟する実』です。イチゴ,イチビコのイチと同源です。ゆえに,直接のペルシャ語源と言えるかどうか疑問です。ちなみに,無花果と書きますが,果実そのものが,花で,花を食用としている果物なのです。」

いちぢく.jpg


としている。僕は,

映日果(インジークォ)を意訳した語が無花果,

であり,

日本の犬枇杷と似ていたので無花果をイチジクとした,

というのが妥当だと思う。因みに,「犬枇杷」とは,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8C%E3%83%93%E3%83%AF

には,

「イヌビワ(犬枇杷、学名: Ficus erecta)は、クワ科イチジク属の落葉小高木。別名イタビ、姫枇杷。果実(正確にはイチジク状果という偽果の1種)がビワに似ていて食べられるが、ビワに比べ不味であることから『イヌビワ』の名がある。」

いぬびわ.jpg


とあり,「びわ」より「イチジク」により似ている。そう命名したのがわかる気がする。

「映日果」の転音説,一熟説以外に,

イタメチチコボル(傷乳覆)の約転(名言通),

という説もある。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8C%E3%83%93%E3%83%AF
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B8%E3%82%AF
大槻文彦『大言海』(冨山房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

posted by Toshi at 05:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする