2018年03月18日

イチゴ


「イチゴ」は,

苺,

と当てる。「苺・莓」の字は,「苺」は,

「艸+音符母(どんどん子株を産み出す)」

で(「母」の字は,「乳首をつけた女性を描いた象形文字で,子を産み育てる意味を含む), 「莓」の字は,

「艸+音符毎(子を産む。どんどんふえる)」

とある(「毎」の字は,「頭に髪をゆった姿+音符母」で,母と同系であるが,特に次々と子を産むことに重点をおいたことば。次々と生じる事物をひとつひとつ指す指示詞に転用された)。いずれも,いちごの意味だが,バラ科の一群の植物の総称とある。我が国では,オランダイチゴのことを指す,とある(『漢字源』)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4

に,

「漢字表記の場合は、現代の中国語では、オランダイチゴ属は『草莓 拼音: cǎoméi ツァオメイ』とされる。明治時代から広く日本国内各地で生産されるようになったオランダイチゴ属は、日本語では『苺』と表記される場合が多い。」

とある。なお,

https://okjiten.jp/kanji2331.html

に,「苺・莓」の字について,

苺の字.gif



「会意兼形声文字です(艸+母)。『並び生えた草』の象形(『草』の意味)と『両手をしなやかに重ねひざまずく女性の象形に二点加えた』文字(『おっぱいのある母』の意味[2点は両手で子を抱きかかえるさまとも、乳を子に与えるさまとも言われている])から、乳首のような形の実のなる『いちご』を意味する『苺』という漢字が成り立ちました。」

と,より精しい。なお,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4

に,

「漢字には『苺』と『莓』がある。これらは異字体で『苺』が本字である。辞典によっては『莓』が見出しになっていて『苺』は本字としていることがある。現代日本では『苺』、現代中国では『莓』を普通使う。」

とある。

我々の今日いう「イチゴ」は,

オランダイチゴ,

を指す。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4

に,

「古くは『本草和名』(918年頃)や『倭名類聚抄』(934年頃)に『以知古』とある。日本書紀には『伊致寐姑(いちびこ)』、新撰字鏡には『一比古(いちびこ)』とあり、これが古形であるらしい。『本草和名』では、蓬虆の和名を『以知古』、覆盆子の和名を「加宇布利以知古」としており、近代にオランダイチゴが舶来するまでは『いちご』は野いちご全般を指していた。」

とある。それまでの「イチゴ」は,野イチゴを指すらしい。

オランダイチゴ.JPG

(水耕栽培で育つオランダイチゴ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4より)


また,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4

には,

「狭義には、オランダイチゴ属の栽培種オランダイチゴ(学名、Fragaria ×ananassaDuchesne ex Rozier) を意味する。イチゴとして流通しているものは、ほぼ全てオランダイチゴ系である。(中略)最広義には、同じバラ亜科で似た実をつける、キイチゴ属 (Rubus) やヘビイチゴ属 (Duchesnea) を含める。これらを、ノイチゴ、と総称することもある。」

江戸時代にオランダ人によってもたらされ,一般市民に普及したのは1800年代という。本格的に栽培されたのは1872年(明治5年)からである,とか。

『広辞苑』は,「類聚名義抄」を引いて,

「覆盆子,イチゴ」

と載せる。『岩波古語辞典』には,「枕草子」の,

「見るにことなることなきものの,文字に書きてことごとしきもの。覆盆子」

を引用している。「覆盆子」は,

木苺(木イチゴ 御所苺),

を指す。なお漢方で「覆盆子」は,

http://www.kanpoyaku-nakaya.com/fukubonsi.html

によると,

「「第二類薬品」
覆盆子は名医別録の上品に収載されている。
果実の形が伏せた盆に似ているところから覆盆子の名があるといわれる。
「基源」
1)中国産;バラ科のゴショイチゴの未成熟果実(偽果)の乾燥品である。
2)韓国産:バラ科のクマイチゴおよびトックリイチゴの未成熟果実の乾燥品。」

とある。結構高価である。

覆盆子.jpg



さて,『大言海』は, 「いちご(苺)」の項で,

和名抄「覆盆子,以知古」
枕草子,あてなるもの「いみじううつくしき兒の,いちご食ひたる」
本朝食鑑(元禄)「苺,訓以知古」
合類節合集「覆盆子,苺」

等々を引いているが,

「語原,考へられず,但し此の語は,イチビコの中略なるべし(濁音,顛倒す,臍(ほぞ),戸ぼそ,継(つぎつ)ぐ,つづく)。相新嘗(あひにひなめ),あひなめ。洗染(あらひぞめ),あらぞめなどの如き,中略あり」

とし,「いちびこ(蓬蔂)」の項で,

「イチビの語源。詳ならず。但し,苺は,この語を中略したるなるべし。コは兒ならむ。物と云ふ意に添ふる例あり,大葉子,稲穂子,蒲穂子,の如し。」

とあり,『大言海』は,

いちびこ→いちび→いちご,

を採っている。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/i/ichigo.html

は,

「いちご は、『日本書紀』には「伊致寐姑(イチビコ)」、『新撰字鏡』には『一比古(イチビコ)』、『和 名抄』には『伊知古(イチゴ)』とあり、『イチビコ』が転じて『イチゴ』になったと考えられる。いちびこの語源は諸説あり、『い』が接頭語、『ち』が実の赤さから『血』、『びこ』は人名に用いられる『ひこ(彦)』を濁音化したもので植物の擬人化とする説。『いちび』は『一位樫(いちいがし)』のことで、『こ』は実を意味し、いちごの実が一位樫の実と似ていることから名付けられたとする説。『いち』は、程度の甚だしいことを意味する『いち(甚)』、『び』は深紅色を表す『緋』、『こ』は接尾語か実を表す『子』の意味で、『甚緋子(とても赤い実)』とする説がある。
 現在、一般的に『イチゴ』と呼ばれるものは、江戸時代の終わり頃にオランダから輸入された『オランダイチゴ』であるが、それ以前は『野イチゴ』を指していた。オランダイチゴも赤い色が特徴的だが、野イチゴは更に濃い赤色であるため、いちびこ(いちご)の語源は『い血彦』や『甚緋子』など、実の赤さに由来する説が妥当。
 民間語源には、1~5月に収穫されるから『いちご』などといった説もあるが、『イチビコ』の『ヒ』が何を意味したか、『5(ご)』を『コ』と言った理由など、基本的なことに一切触れておらず説得力に欠ける。
 漢字の『苺(莓)』は、『母』の漢字が『乳房』を表していることから『乳首のような実がなる草』と解釈するものもあるが、『苺』の『母』は『どんどん子株を産み出す』ことを表したものである。」

と詳しいが,『日本語源大辞典』に,

「『イチビコ』は,『書紀-雄略九年七月』に『蓬蔂,此をば伊致寐如(いちびこ)と云ふ』とある」

「イチゴ」の語源は,「いちびこ」から説き起こさなくてはなるまい。『日本語源広辞典』は,

「上代語の『イチ(美)+ビ(実)+コ(子)』です。『旨い実』が語源なのです。平安期にイチゴに変化しました。」

ヘビイチゴ.jpg



とする。『日本語源広辞典』は,「イチジク」の項で,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/457909922.html?1520885030

「語源は,『中世ペルシャ語anjiir アンジェール』です。中国音訳は,映日果インジークォ,意訳した語が『無花果』です。近世に渡来。日本で犬枇杷をイチジクと呼んでいましたが,これと似ていたので無花果をイチジクといいます。『イチ(美)+熟』で,『ウマク熟する実』です。イチゴ,イチビコのイチと同源です。ゆえに,直接のペルシャ語源と言えるかどうか疑問です。ちなみに,無花果と書きますが,果実そのものが,花で,花を食用としている果物なのです。」

として,「イチ」の解釈は一貫している。『日本語源大辞典』は,

イチビコ(蓬蔂)の略(東雅・大言海),
イチビコはイチビ(赤檮・檪)の転。イチビはイツイヒ(厳粒)の約(日本古語大辞典=松岡静雄),
イチビコ(甚緋子)の意(語源辞典・植物編=吉田金彦),

という「イチビコ」系以外に,

イツ(魚)の血ある子の如しというところから(日本釈名・滑稽雑談所引和訓義解),
ヨキチコリ(好血凝)の義(名言通),
イはイシイ(美味)の上略。チはチ(乳)の味。コは如の意(和句解),

を載せているが,どうも,

緋色や血の色(赤)系,
か,
味(美味,旨い)系,

に大別されそうだ。気になるのは,

「『いちび』は『一位樫(いちいがし)』のことで、『こ』は実を意味し、いちごの実が一位樫の実と似ていることから名付けられたとする説。」

である。『語源由来辞典』は,「イチイ・一位(いちい)」の項で,

「昔、笏の材料にしたことから、 位階の『正一位』『従一位』に因んだ名というのが通説。一説には、イチイの材は他の木材に比べ非常に赤いことから、『イチ』は程度の甚だしいことを意味する『いち(甚)』、『ひ』は深紅色を表す『ひ・び(緋)』で、『いちひ(甚緋)』が語源とも言われている。旧かなは『イチヒ』なので、音変化の点で問題なく、ブナ科の『イチイガシ』も赤いという点で一致しており、『いちひ(甚緋)』の説も十分考えられる。」

とあり,

「種子や葉 にはアルカロイドを含むが、薬用にもされる。実は秋に赤く熟し、多肉質で甘い。」

としていることだ。赤系と味系が,ここに合致している。人は,命名するとき,知っているものと関連づける。「イチイ(ひ)」の実と「いちびき」の実が似ているとすれば,「いちひ」には意味があるはずである。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

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posted by Toshi at 04:35| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする