2018年03月24日

つくつくぼうし


「つくつくぼうし」は,

つくつく法師,

と当てる。

寒蝉,

とも当てるらしい。その名は,

Meimuna_opalifera1.jpg



「鳴き声からの名。『法師』は当て字」

と,鳴声から来ているらしい。『日本語源広辞典』も,鳴声からとしている。

『大言海』は,「つくつくほうし」に,

蛁蟟,

の字を当てている。しかし,これは,『大辞林』には,

みんみんぜみ(みんみん蟬)

とある。しかし,

https://furigana.info/w/%E8%9B%81%E8%9F%9F

をみると,

「蛁蟟(つくつくほうし)が八釜やかましいまで鳴いているが車の音の聞えぬのは有難いと思うていると上野から出て来た列車が煤煙を吐いて通って行った。」(根岸庵を訪う記 / 寺田寅彦)
「汽車がまた通って蛁蟟(つくつくほうし)の声を打消していった。」(同)

を引き,「蛁蟟」にわざわざ「つくつくほうし」とルビを振っている。「蛁蟟」は,『字源』には,

むぎわらぜみ,

とある。僕はあまり聞かないが,『大言海』には,

なつぜみ(夏蝉),

のことという。「なつぜみ」とは,『デジタル大辞泉』に,

夏に鳴く蝉。アブラゼミ・クマゼミ・ニイニイゼミなど,

とあり,別の蝉に行き着く。どやら,この漢字を当てる背景はあるのだと思う。 『大言海』は,「つくつくぼうし」の項で,やはり,

「其鳴聲,ツクツクボウシと聞ゆる故に名とす」

と説明し,別に,

くつくつぼうし,
ほうしいつくつく,
おうしいつくつく,
うつくし,
うつくしよし,

とも言う(『大言海』)として,以下を引用している。

「蛁蟟 ツクツクボウシ」(和玉篇)

http://hyogen.info/word/6749428

に,「つくつくほうし」として,

つくつく法師・寒蝉・蛁蟟,

と当て,

「セミ科の一種。夏の半ば過ぎから鳴く小形の蝉。体長3cmほど。『オーシーツクツク』と鳴くのが名前の由来。筑紫恋し。法師蝉。『蛁蟟』は『みんみんぜみ』とも読める。」

とある。本来,

おうしいつくつく,

であったのが,

おうしいつくつく→ほうしいつくつく→つくつくほうし,

と転じた,ということか。

Meimuna_opalifera_female.jpg



しかし,『日本語源大辞典』は,

「①平安時代にはクツクツホウシ(ボウシ)と呼ばれていたようである。『高遠集』によれば,ウツクシともよばれたらしい。ウツクシという呼び名は和歌の世界で好まれ,ウツクシヨシという雅な鳴声の表現をも生み出した。②鎌倉時代になると,ツクツクの形も辞書にのり始め,ツクツクとクツクツの勢力争いといった形になる。しかし室町初期には『頓要集』などにツクツクの形のみ記したものも登場し,室町後半にはこれが主流となる。③ツクツクが主流となると,ツクシヨシという聞き方が現れた(『大和本草』)。これは,『筑紫,良し』ともとられ,さらにツクシコイシという聞きなしまで生み出された。『鶉衣‐前・下・四八・百虫譜』にそれがあるが,さらにそこで旅に死んだ筑紫の人がこの蝉になったという俗説も紹介している。④現代ではその鳴き声を『おーしいつくつく』と聞くこともある。」

としているので,事態は逆で,どうやら,

クツクツホウシ→ウツクシ(ウツクシヨシ)→ツクツクホウシ→ツクツクヨシ→オーシイツクツク,

と,いうことになるらしい。

所詮擬音語なので,どう聞くかは,人次第とはいえ,あまりにも差が大きい。この言葉に,ある意味日本語の特徴,文脈依存性(つまりその時,その場の状況次第)が象徴的に出ているといっていいのかもしれない。


参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1

スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8

posted by Toshi at 04:38| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする