2018年03月28日

ぞう


「ぞう」は,

象,

と当てる。「象」(漢音ショウ[シャウ],呉音ゾウ[ザウ])は,

「ゾウの姿を描いたもの。ゾウは,最も目立った大きす身体をしているところんら,かたちという意味になった」

とある(『漢字源』)。

https://okjiten.jp/kanji302.html

にも,

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「象形文字です。『長い鼻のぞう』の象形から『ぞう』を意味する『象』という漢字が成り立ちました。」とある。和語「ぞう」は,どうやら,呉音ゾウ(ザウ)の訓みそのままである。

実は,「うめ」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458323468.html?1522005349

の項で,『大言海』は,

「朝鮮語,梅(マイ),我が邦に野生なし,記,紀に見えず,萬葉集に,明日香藤原の朝よりの歌あり,初め,外来の烏梅(ウバイ)を薬用とし,字音にて,烏梅(ウメ)(薬名『取半黄梅實,籃盛置煙突上,燻乾則成黒色,故曰烏梅』。烏は黒色の意。梅の實の燻製)と云ひしに,薬用の必用なるより,其生實若しくは,苗木を取り寄せ植ゑて,烏梅(うめ)の木と云ひしが,遂に樹名(萬葉集,三,五十三『吾妹子が,植ゑし梅樹(うめのき),見る毎に,心咽(む)せつつ,涙し流る』。又,賀茂真淵の梅辭あり)となりしなり。象牙,渡りて,斑文あるに因りて,段(きさ)と呼びしが,象(ざう)の名ともなりしが如し」

と記していた。つまり,「ぞう」の語源に関わって,

「象牙,渡りて,斑文あるに因りて,段(きさ)と呼びしが,象(ざう)の名ともなりしが如し」

と記していた。「ぞう」は,かつて,

きさ,

と呼んでいた。『岩波古語辞典』は,「ぞう」では載らず,「きさ」について,

「象の古名」

とある。『大言海』は「きさ」(象)の項で,

「橒(きさ)の義。初め,象牙,渡来し,牙に橒あれば名とす。牙をキサのキと云ふ。即ち,橒(きさ)の牙(き)なり。牙の名の,獣名に移りたるは薬用に渡来せしウメボシの烏梅(うめ)の,梅樹の名に移りたると同趣なるべし。又,梵語に,象(ザウ)を迦邪(Gaya)と云ふとぞ」

とあり,「橒」の項には,

「刻(きざみ)の義」

として,

「木目の文(あや)」

とあり,『和名抄』の,

「橒,木目の文也,木佐」

を引く。「ざう(象))の項では,『史記』の,

「大宛傳『其人民,乗象以戦』」

『和名抄』の,

「象,岐佐,獣名。似水牛,大耳,長鼻,眼細,牙長者也」

を引く。「ぞう」は,近代までは,『日本語源広辞典』の言うように,ほとんどの日本人にとって,想像上の動物でしかなかった,といっていい。よく描かれた虎も同じで,虎図が猫図にみえるのも当たり前であった。

「きさ」の説明は,

http://k-amc.kokugakuin.ac.jp/DM/detail.do?class_name=col_dsg&data_id=68492

で,

「象をキサというのは、象牙の横断面に橒(きさ)(木目の文)があるためである(『萬葉動物考』)。『和名抄』に『和名 伎左』とある。天智紀に『象牙(きさのき)』とあり、当時すでに象牙の輸入されていたことが知られる。『拾遺集』にも『きさのき』(巻7-390、物名)を詠んだ歌がある。その一方で、『名義抄』に『キサ キザ サウ』、『色葉字類抄』に『象 セウ 平声 俗キサ』とあり、平安期には『キサ』『キザ』の他に、『サウ』や『セウ』ともいったらしい。万葉集には、『象山(きさやま)』『象(きさ)の小川』『象(きさ)の中山』と見えるが、いずれも、現在の奈良県吉野郡吉野町にある喜佐谷周辺の地を指したもので、動物の象とは無関係。象山は、弓削皇子の歌(3-242)にも詠まれている三船山と向かい合っており、これらの山の間に象谷(喜佐谷)がある。『象(きさ)』の地名は、橒(きさ)(木目文)の如き、ギザギザと蛇行した谷に由来するという(『角川日本地名大辞典』)。象谷に沿って吉野川の支流である象川が流れている。象川が吉野川にそそぐところを『夢のわだ』といい、この地もまた万葉歌に詠まれている(3-335、7-1132)。」

と詳しい。

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ただ,『日本語源大辞典』を見ると,「きさ」の由来は,「象牙」の何を採るかで微妙に違うようだ。

牙に木目のような筋があるところからキサ(橒)の義(東雅・和訓栞・大言海),

以外に,

牙サシ出ルの意(日本釈名),
キザシ(牙)の略(名言通),
ケサ(牙蔵)の義(言元梯),
キバヲサ(牙長)の義(日本語原学=林甕臣),

等々もあるようだ。まあ,「文(あや)」が妥当に思える。

ところで,こんな経緯から「象」の字は,例えば,『デジタル大辞泉』のように,

「きさ」 象(ぞう)の古名,
「しょう〔シヤウ〕」かたち。ありさま。易(えき)に表れた形,
「しょう」 物の形。目に見えるすがた(印象・気象・具象・形象・現象・事象・心象・対象・万象)。物の形をかたどる(象形・象徴),
「ゾウ」 動物の名
「ぞう」 物の形(有象無象(うぞうむぞう))
名前(名のり)かた・きさ・たか・のり,

等々とあり,椿象(かめむし),海象(セイウチ)などという当て字にも使われる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ぞう きさ
posted by Toshi at 04:15| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする