2018年04月08日

くるま


「くるま」は,

車,

と当てるが,「車」の字は,象形文字で,

「車輪を軸どめでとめた二輪を描いたもので,その上に尻(シリ)を据えて乗る,または載せるものの意。もと居(キョ)と同系。キョの音に読むことがあるのは,上古の音が残ったもの」

とある。

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中國では,古くから車が登場する。。たとえば,戦車は商(殷の墳墓から戦車と馬の骨が多数出土)から周時代などで広く用いられた,とある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88

には,

「中国では春秋時代までは戦車が主流であったが、都市国家から領域国家の時代に移行する戦国時代ころより歩兵戦が主流となった。趙の武霊王は紀元前307年に胡服騎射を取り入れ、これ以降は騎兵の時代となる。しかしながらそれ以降の前漢代以降も防御力・輸送力の高さから戦車は用いられており、屋根のある戦車や屋根の上に建物が立てられた戦車も用いられている。戦車は歩兵の指揮官用の指揮車としても使われた。『司馬法』では、戦車は密集すると守りが固くなるとされている。また『孫子』には戦車の戦力維持に要する膨大なコストに対する警告が見受けられる。」

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しかし,日本では,『岩波古語辞典』の言うように,

「平安時代の仮名文では多く牛車(ぎっしゃ)をさす。」

「牛車」とは,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%9B%E8%BB%8A

に,

「牛車は馬車とともに中国から伝わったと推定されている。牛車は大きく分けて荷車用と乗用の2つの要素があった。牛車は速度が遅い反面、大量の物資を運ぶのに向いていたため荷車として活用されて『石山寺縁起絵巻』や『方丈記』などにも登場する。運ぶ物資や速達性によって牛車と馬車の使い分けがされていたと推定され、中世に入るとそれぞれ車借・馬借と呼ばれる運送業者が成立することになった。
中国では196年に後漢の献帝が長安から洛陽へ脱出する途中、車を破損した献帝が農民の牛車に乗って洛陽に辿り着いたという故事から、貴人が牛に乗るようになったという伝承がある。中国の律令制を取り入れた日本でもこの影響を受けたと言われている。」

とある。

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(『源氏物語絵巻』匂宮 (平安時代後期)  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%9B%E8%BB%8Aによる)


「くるま」の語源は,「くるぶし」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458644074.html?1523042309

で触れたように,「くるま」の「くる」ま「くるくる」回るという擬態語から来ている。『擬音語・擬態語辞典』には,

「『くるくる』は平安時代から見られる語で,奈良時代には『くるる』と言った。「枢」(くるる)は,「くるぶし」て触れたように,

回転軸となる軸材,

の「まわる」機能からきている。『大言海』は,

「クルは,回轉(くるくる)の義,マは,輪と通ずと云ふ(磯間[いそま],磯曲[いそわ]。曲[ま]ぐる,わぐる)。或は,クルクル廻はる意か」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ku/kuruma.html

は,

「『くる』は物が 回転するさまを表す『くるくる』や、目が回る意味の『くるめく(眩く)』などの『くる』で擬態語。 『ま』は『わ(輪)』の転と考えられる。 漢字の『車』は、車輪を軸でとめた二輪車を描い た象形文字である。 単に「車」と言った場合、現在は自動車を指すことが多いが,中古・中世には『牛車(ぎっしゃ)』、明治・大正時代は『人力車』を指すのが一般的であった」

と,

「『くる』+『わ』(輪)」説,

を採り,『日本語源広辞典』も,

クルクル回る+ワ

を採る。それに似たのは,

クルワ(転輪)の義(和訓栞),
メグルワ(転輪)の略(関秘録・言元梯),

等々,しかし,『大言海』がもう一つ挙げていた,

「クルクル廻はる」説もある。

クルマ(転廻)の義(日本釈名),
クレマワル(転廻)の義(名言通),

等々。「廻る輪」を目にしているなら,わざわざ「ワ(輪)」をつける必要はない。文脈依存とは,文字を持たないので,その場その時に発語するもので,抽象レベルで堅固空間を駆使する意ではないのだから。

『日本語の語源』は,「クルクル回る」言葉の系譜を次のように整理している。

「クルクル回るという意味の動詞,クルメク(転く)は,その名詞形のクルメキが語尾を落としてクルメ・クルマ(車)になった。省略形のクマはコマ(独楽)・ゴマ(独楽,車輪)になり,クルメクの原義を温存している」

つまり,「クルクル回る」という意の動詞「くるめく」の名詞化の転訛,と言うのである。これが妥当と思う。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:戦車 くるま 牛車
posted by Toshi at 04:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする