2018年04月11日

ツツジ


「ツツジ」は,

躑躅,

と当てる。「躑(漢音テキ,呉音ジ[ヂ]ャク)」は,「短いきょりだけ,つっと進む」意で,「躅(漢音チョク[タク],呉音ドク[ダク])」は,「じっと立ち止まる」意で,「躑躅」で,

「二三歩いっては止まる,ためらう」

という意である(『漢字源』)。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/tu/tsutsuji.html

は,

「『躑躅』(テキチョク)には『行っては止まる』『躊躇』という意味があり,見る人の足を引きとめる美しさから,この漢字が使われたといわれる。本来は『羊躑躅』で,葉を食べたヒツジが躑躅して死ぬことからという説もある。」

としている。

http://kakashi.sakura.ne.jp/100hana2014pdf/020101tutuji.pdf

は,漢名の『躑躅』について,

「『躑』(テキ)は立ち止まる、または佇む意で、躑躅は足踏みをするという意味である。あまりの美しさに立ち止まって花に見とれたからとする説や、木の葉は有毒であるために、ヒツジがこの葉を食べて、足踏みをして苦しんだからという説などがある。しかしネコはこの葉をしばしば食べる。このため本来の漢名は『羊躑躅』であるともいわれ、学名は『Rhododendron』で、 赤い花が咲く木という意味である。」

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和語「つつじ」の由来は,『大言海』は,

「羊躑躅(いはつつじ)の略」

とある。上記,漢字の由来を引きずっているということになる。

「本草和名」には,

「羊躑躅,羊誤食躑躅而死,故以名之,和名,以波都都之,又,之呂都都之,一名,毛知都都之」(和名抄),

「字鏡」には,

「茵芉,岡豆豆志,伊波都都自」

が引かれている。なお,「萬葉集」には,

青山を,振りさけみれば,都追慈(つつじ)花,にほえる少女,櫻花,栄える少女も

のほか,石乍自(いわつつじ)の用例もあるらしい。

上記の「茵芉」は,『出雲国風土記』(733 年)で,

「大原郡の山野に見られる植物として、『茵芋』(インウ=ツツジのことともマツカゼソウ科の常緑低木であるミヤマシキミともいわれ、葉は薬用になる)と記されている。」

とある(http://kakashi.sakura.ne.jp/100hana2014pdf/020101tutuji.pdf)。

『日本語源広辞典』は,

「ツツ(筒)+ジ(接尾語)」

とし,筒状の花を語源と見なす。『語源由来辞典』『日本語源大辞典』等々を見ると,

ツヅキサキギ(続き咲き木)の義(日本語原学=林甕臣),
ツヅリシゲル(綴り茂る)の義(名言通),
つぼみの形が女性の乳頭に似ているところから,タルチチ(垂乳)の略転,またタクヒ(焚火)の転(滑稽雑誌所引和訓義解),
ねばりがあり,手にツキツキ(付付)てジッとつくところから(本朝辞源=宇田甘冥),
チョウセンヤマツツジをさす朝鮮語tchyok-tchyok,tchol-tchukの転訛(植物和名語源新考=深津正)

等々がある。しかし,

http://kakashi.sakura.ne.jp/100hana2014pdf/020101tutuji.pdf

は,

「『万葉集』には 10 首の歌が記載されており、『茵花』『都追茲花』『白管仕』『白管自』『丹管仕』『石管士』などの文字によって表記され、当時は『筒』も『管』も同じ音だったらしい。『茵芋』と『茵花』だけが、ツツジとの音の共通性がなく、また茵という字は『褥』(シトネ)もしくは『敷き物」を意味しており、花がびっしりと咲く様を敷物に例えたのか、あるいは違う植物だったのかもしれない。」

としており,『茵芋』は,今日の「つつじ」に当てはめていいかどうか,多少留保が要る。「ツツジ」を,敷物に喩えるのは,いくらなんでもちょっと違う気がする。

『日本語の語源』は,例によって,音韻変化から,

「花弁がその基部で癒着して筒状をなして咲く合弁の花,たとえばツツジの花の類をツツザキ(筒咲き)といった。ザキ[z(ak)i]が縮約され,ツツジ(躑躅)になった。」

とする。やはり,筒状の花の特徴に与したい。

ところで,ツツジは,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%84%E3%82%B8

によると,

「ツツジ(躑躅)とはツツジ科の植物であり、学術的にはツツジ属(ツツジ属参照)の植物の総称である。…日本ではツツジ属の中に含まれるツツジやサツキ、シャクナゲを分けて呼ぶ慣習があるが、学術的な分類とは異なる。」

としている。区別している,「シャクナゲ」は,

石南花,
石楠花,

と当てる。

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『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/si/syakunage.html

は,「シャクナゲ」の由来を,

「『石南花』と呉音読みした『しゃくなんげ』が転じた名前である。中国では『石南』とか『石楠』という表記で、『石南花』、『石南草』といった呼び方がある。『石南』と書くのは、石の間に生えて、南向きの土地を好むことからである。
但し、語源は漢名からであるが、中国では『石南』は日本のシャクナゲ(石楠花)とは異なる品種で、誤って名づけられたものである。」

としている。その他,「尺にも満たない」とか「癪に効く」という語源説もあるらしいが,俗説とする。『日本語源広辞典』も,「石楠花」説を採る。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:09| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする