2018年04月13日

さつき


「さつき」は,

皐月,
五月,

と当ててあるが,陰暦五月のことである。『広辞苑』には,

「『早月』とも書く」

とある。陰暦「五月」の異名は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/5%E6%9C%88

に,

「いななえづき(稲苗月)、いろいろづき(五色月)、うげつ(雨月)、けんごげつ(建午月)、つきみずづき(月不見月)、さつき(皐月)、さなえづき(早苗月)、さみだれづき(五月雨月)、しゃげつ(写月)、たちばなづき(橘月)、ちゅうか(仲夏)、ばいげつ(梅月)、よくらんげつ(浴蘭月)」

等々とあるとあり,「あやめづき(菖蒲月)」ともいう,とある。旧暦の五月は新暦では六月から七月に当り,梅雨である。五月雨(さみだれ)とは梅雨の別名であるし、五月晴れとは本来は梅雨の晴れ間である,という。そういった季節感がよく出ている。

800px-Rice-transplanting_Festival_in_Katori-jingu_1,katori-city,japan.jpg

(昔の田植え風景の再現 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E6%A4%8D%E3%81%88より)


https://ja.wikipedia.org/wiki/5%E6%9C%88

によると,「さつき」は,

「田植えをする月であることから『早苗月(さなへつき)』と言っていたのが短くなったものである。また、『サ』という言葉自体に田植えの意味があるので、『さつき』だけで『田植の月』になるとする説もある。
『日本書紀』などでは『五月』と書いて『さつき』と読ませており、『さつき』を皐月と書くようになったのは後のことである。『皐月』という表記は元来、漢籍に現れる陰暦五月の別名である。『爾雅』によると古代中国では12か月をそれぞれ「陬如寎余皋且相壯玄陽辜涂」と呼んでいた(皋は皐の本字)。」

とある。「皐月」の「皐」については,「サツキツツギ」の「サツキ」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458743810.html?1523472902

で触れた。

k-2606.gif



『大言海』には,

「早月とも記す。奥義抄,一『早苗月の略』(卯花月,卯月。かみなし月,かみな月。あれつく少女[をとめ],あれをとめ。播殖子[うまはりこ],うまご)。即ち,五月を,早苗(さなえ)月とも云ふの,早苗を植うる月の義なり。…早苗を下略する語に,早少女(さをとめ),早開(さびらき),早上(さのぼり),早下(さおり)などあり。またこのサを,五月のことに用ゐらる。五月蠅(さばえ),五月雨(さみだれ),五月夜(さよ)など,これなり」

とある。『岩波古語辞典』に,

「サは神稲,稲を植得る月の意」

とあるので,「さ」のみで意味があったのかもしれない。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/sa/satsuki.html

には,

「皐月は、耕作を意味する古語『さ』から、稲作の月として『さつき』に なった。 早苗を植える月『早苗月(さなえづき)』が略され、『さつき』になったとする説もあるが、『早苗』の『さ』も耕作の『さ』が語源とされる。 漢字『皐』には『神に捧げる稲』の 意味があるため、皐月が当てられたと思われる。」

としている。単純に,

「早苗を植える月の意で『早苗月(さなへつき)』と言っていたのが短くなった」

というだけではないだろう。しかし,「さ」の意味が分からなくなっている。

『日本語源広辞典』は,

「『サ(稲の神)+月』です。稲作の神が,田植えを見守ってくださる月です。サトメは,早乙女は当て字で,稲作に奉仕するオトメです。サナエは,稲作の心霊の宿った苗,古典に出てくるサニワは,農業の神を祭る神聖な斎場なのだという意味も納得できます。」

サツキの花が,山籠りから降る乙女がかざすことについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458743810.html?1523472902

で触れた。その意味では,「さ」の意味に言及しない語源説は採るに足らないと思う。『日本語源大辞典』には,十数の説が載るが,

サは工作のことをいう古語。田植えの月であるところから(兎園小説外集),
サは「社」の別音sa。社祭を行う月の意(日本語原学=与謝野寛),

あたりまでであろう。

http://xn--cbktd7evb4g747sv75e.com/2015/0218/satukinoimi/

は,その辺りを,

「皐月は、『耕作』を意味する古語の『さ』から、稲作の月の事を指して『さつき』になったと言われています。別名にもある早苗を植える月である『早苗月(さなえづき)』が略され、『さつき』になったという説もあります。ただし、『早苗』の『さ』も耕作の『さ』が語源になったと言われているので、皐月の由来には 『耕作(稲作)』が関与しているのは間違いないようです。さつきの『皐』という漢字には『神にささげる稲』という意味があるため、『皐月』という漢字が当てられたと考えられています。」

とする。ただ,

「『皐』という漢字には『神にささげる稲』という意味があるため、『皐月』という漢字が当てられた」

という説は,手元の漢和辞典では見あたらなかった。「皐」は,五月の異称だから,採っただけではあるまいか。

なお,

https://www.chiba-muse.or.jp/MURA/kikaku/nencyugyozi/kaisetu/sanaburi.htm

の,「サナブリ」という言葉の説明で,

田植えが無事に終了したことを感謝し、田の神を送る、田植え終いの稲作儀礼」

とし,

「サナブリ(またはサノボリ)という行事名の最初のサは、豊作をもたらすとされる田の神様、または田植えそのものをさす言葉といわれます(5月のことをサツキ=皐月というのは、旧暦の5月が田植えのある月だからとか、田植えをする女性や少女のことをサオトメ=早乙女というのも、サが同じような意味で使われていると考えられる)。つまり、田の神様を天上へ送る行事のことを、サナブリ(サがのぼる)というわけです。これに対して、田の神様を地上へ迎える行事のことをサオリ(サがおりるという意味)といったりします。通常サオリが田植え始めにあたって行われ、サナブリが田植え終了に際して行われます。このように田植えは、田の神様の見守られる中で行われるという意識があるため、かなり神事的な意味あいを持つものでした。田植えで残った苗を荒神様(火やカマドの神)などに供える風景がよく見られますが、そうすることで、苗の無事な生長と豊作を祈ったのです。」

というのが,「サ」の傍証となろう。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする