2018年04月19日

クリ



「クリ」は,

栗,

と当てる。「栗」の字は,

「『木+ざるの形』。クリの実がはじけてざるのような形をしたイガが木の上に残っているさまをあらわす」

とある。

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((https://okjiten.jp/kanji1618.htmlより)

『岩波古語辞典』には,

「古くは「くる」といった。」

とある。「くる」の項に,

栗栖野(くるすの),
栗本(くるもと),

などの複合語に残っている,とする。『大言海』は,

「黯(クリ)の義。クリの木と云ふが,成語なるべきか,樹の皮は黒灰色にて,實の鬼皮の色は赭黒なり」

とある。「鬼皮」とは,

「栗の實の皮」

の意である。渋皮に対して堅い外皮をいうらしい。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA

に,

「日本において、クリは縄文時代初期から食用に利用されていた。長野県上松町のお宮の裏森遺跡の竪穴式住居跡からは1万2900年前~1万2700年前のクリが出土し、乾燥用の可能性がある穴が開けられた実もあった。縄文時代のクリは静岡県沼津市の遺跡でも見つかっているほか、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリの実のDNA分析により、縄文時代には既にクリが栽培されていたことがわかっている。」

とある。

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『たべもの語源辞典』には,

「山中自然生の小さい栗の実を柴栗,または笹栗・山栗・ヌカグリ・モミジグリなどといい,漢名は茅栗(ぼうりつ)である。ササグリのササは小さいという意味である。(中略)柴栗というのは,柴柯(しばのえだ)に実るからの名である。漢名を柯栗という。日本の在来栗は,小さい柴栗と中位の土用栗と大きい丹波栗の三種である。丹波栗を料理栗,またテウチグリという。握って手の中が一杯になる手内栗の義である。」

とある。在来種の栗の方が,アメリカ種かヨーロッパ種より,味も形も勝るらしい。

さて,「クリ」の語源であるが,『日本語源大辞典』は,

果皮の色から,クリ(涅・黯)の義(燕石雑志・大言海),
果皮の色から,クロ(黒)の転(和句解・日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解・箋注和名抄・和訓栞),
落ちた実が地にあるさまが石のようであるところから,石を意味する古語クリの転義(東雅),
果実のさまから,コリ(凝)の義(名言通),
樹木を意味するクラと通じるか(日本古語大辞典=松岡静雄),
カツ(搗)ラシの反(名語記),
果皮の色から,黒の意の梵語クリから(和語私臆鈔),
朝鮮語kul(クリの意)からという(木の名の由来=深津正),

と諸説挙げ,その他に,『日本語源広辞典』は,

ク(外殻,容器)+リ(接尾語),

を挙げるが,『たべもの語源辞典』は,

「僧契沖の説に『くりは涅なり。その色をもて名づく』とある。涅(くり)は水中の黒い土である。涅はくらき色を染める物である。その色は栗の皮に似ている。これを,滝沢馬琴が『燕石雑志』に『物の名』で書いている。(中略)要するにクリの名は,果皮の黒っぽいという特色からでたものと考えられる。」

とする。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ku/kuri.html

も,

「石を意味する古語『クリ』は、水底によどむ黒い土を表す『くり(涅)』と同源であるため、『クリ』は色の『黒』や石の『クリ』と同系と考えられる。」

としている。

http://ppnetwork.seesaa.net/article/429360431.html

でふれたように,

「古代日本では,固有の色名としては,アカ,クロ,シロ,アオがあるのみで,それは,明・暗・顕・漠を原義とする」

という。で,「黒」は,

「『くら(暗)』と同源か。またくり(涅)と同源とも」

とある。「涅」は,水底に沈んだ黒い土,涅色を指し,明暗の意である。『日本語の語源』は,

「栗の実は焦げ茶色,胡桃の核は褐色であるが,ともにクロミ(黒実)といった。ロミ[r(om)i]の縮約でクリ(栗・万葉)になり,『ロ』が母韻交替[ou]をとげてクルミ(胡桃。源)になった。」

とある。単純に,

くら(暗)→くろ(黒)→くり(栗),

と考えてもいいのかもしれない。古形「クル」を考えると,

くら(暗)→くろ(黒)→クル→くり(栗),

かもしれない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95


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