2018年04月25日

ヤンマ



「ヤンマ」は,トンボの異称である。

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『大言海』は,「ヤンマ」で,

「古名,ヱンバの轉」

とするが,「トンボ」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458977302.html?1524510911

で触れたように,「とんぼ」の項で,

「飛羽(とびは)の音便延(縫物,ぬんもの。追物射[おひものい],おんものい。布衣,ほうい。牡丹,ぼうたんと同趣)。今トンボと云ふは,却って本語に近きなり。昔蜻蜓をヱバと云ひキ(これがヱンバとなり,ヤンマとなる)。」

とし,さらに,「アカヱンバ(赤蜻蛉)」の項で,

「東雅(享保)廿,蜻蛉『萬葉集抄(仙覚)に,アキツと云ふは,東詞には,ヱンバと云ふなり,と見えたり。赤卒,アカヱンバは,東國の方言に,今も,ヱンバと云ひ,童部のヤンマと云ふは,轉ぜしなり。ヱンバは即ち,ヱバなり。ヤヘバ(八重羽)と云ふが如し。世の常の蟲の羽は,多くは二つあるを,此蟲の羽,四つあれば重なれると云ふなり』。赤トンボの古名。黄トンボの古名をキヱンバと云ふ。」

と,

ヱバ→ヱンバ→ヤンマ,

と転訛したとするのである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%83%9E

で,

「ヤンマ(蜻蜓)はトンボ目 不均翅亜目 ヤンマ科(Aeshnidae)の昆虫の総称を指す。大概はヤンマといえばオニヤンマ科の昆虫も含む。広義にはエゾトンボ科やサナエトンボ科などの昆虫も含む。」

とし,

「ヤンマ科の昆虫はアオヤンマなどを除いて胸に接した腹節が胸の方向にくびれており、その他は節によって太さに差がないのが特徴である。地色は未熟なものでは黄色のものが多く、成熟したものは種によってさまざまな色に変化する。また、ほぼ全ての種において腹部に明色の紋がある。トンボ科の昆虫などより相対的に長い腹部を持ち、頭部はトンボ科の昆虫に似ておおむね球形である。」

「トンボ」は,

「大型のヤンマ科と比べて小さく、全長6 cm以下の小型から中型のトンボ。体色は金属光沢の単純な色調、黄色、赤色、青色など変異に富む。…。シオカラトンボやハラビロトンボのように羽化した時のオスがメスと同色で、成熟するとオスの体色が大きく変わるものが多い。」

と。やはり,大きさて,「ヤンマ」と「トンボ」を区別していたのであろうか。

『日本語源大辞典』は,

羽が四枚あるところから言ったヤヘバ(八重羽・弥重羽)の訛り(俗語考・上方語源辞典=前田勇),
古名ヱンバの転(万葉代匠記・物類称呼・箋注和名抄・言元梯・天野政徳随筆・比古婆衣・俚言集覧(増補)・大言海),
ヤマヱンバ(山蜻蛉)の義(日本語原学=林甕臣),

を挙げる。『日本語源広辞典』は,

「古語,八重羽」

を採る。その他,

羽の美しい意で「笑羽(ヱバ)」からとする説,

もあるようだが,どうも語呂合わせでは実態がつかめない気がする。「トンボ」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458977302.html?1524510911

でも触れたが,

http://www.tombow.pippo.jp/hojo/index.html

での北條忠雄氏の説,

「秋田県では蜻蛉をアゲズ・アゲズコという地域もあるが、これは古語のアキツが多少訛って今に残ったのである。その外の地域では)ダンブリ・ダンブ・ジャンブ・ザンブ・ドンブ・ドブ・ドブリンコなどいい、これに類した呼称は東北の各地にも見えている。他、山形・会津などではドンバというらしい。これらの呼称は決して新しい発生ではなく、文献にトンバウの見える平安末期或はそれ以前にあらわれたものであって、トンバウが伝播していく間に転々と訛っていったものとは考えにくい。蜻蛉の語原は正しくこのあたりから考えられそうである。岩手県ではヤチ(湿地・本来アイヌ語)にいる蜻蛉をヤチコといい、秋田の平鹿郡ではヤンマのことをノンマというが、それはノマ(沼)のあたりを飛翔するところから来ている。岩手でヤンマをヌマダンブリというのも同じである。これらは蜻蛉の発生し飛翔し或は更に産卵する場所から来た命名で、いわば棲息地域から名づけたものといえる。ところで、ダンブリ・ダブ・タンボ・ドバ・ドンブ・ドンボというような語が、全国でどんな意味に用いられているかというと、それは悉く湿地・淵・泉・淀・沼・池・水たまりなどの意味に用いている。大阪ではボウフラ(蚊の幼虫)をドンブリというところがあるらしいが、これはドブに棲息するからであろう。こう考えて来ると、蜻蛉をダンブリ・ダブ・ドンブ・ドンバなどいうのは、大阪のボウフラと同じく、それが泉・淵・溝・湿地等に発生し飛翔し産卵するから名づけられたことが明らかである。即ちこれも棲息地域による命名である。」

と,「トンボ」は,

ドンバ(ドンボ・ドンブ)→ドンボウ→トンボ,

であり,ヤンマが,

ノマ(沼)→ノンマ→ヤンマ,

と,その生息地を指していたとする説に,ここでも与したい。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95


ラベル:ヤンマ
posted by Toshi at 04:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする