「かわ」は,
川,
河,
江,
と当てるが,「川」の字は,旧字は,
巛,
である。「川(巛)」(セン)の字は,
「〈印は違いの間を縫って流れる川の象形。川は三筋の〈印で川の流れを描いたもの。貫(つらぬく)と同系であろうか〉
とある。
(殷・甲骨文字 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B7%9Dより)
「河」(漢音カ,呉音ガ)の字は,
「原文字は『水の流れ+˥ 型』の会意文字で,直角に˥ 型に曲がった川のこと。黄河は西北中国の高原に発し,たびたび直角に屈折して,曲がり角で水はかすれて激流となる。のち,『水+音符可』」
とあり,黄河を指す。
「江」(コウ)の字は,揚子江の意味であるが,全体は長江,下流域を揚子江という。
「工は,上下の面に穴をあけて突き通すことを表す指事文字。江は『水+音符工』で,突き通す意味を含む。大陸を貫く大河」
とある。わが国では,「川」の意味よりは,「入り江」の意味で,「海や湖の水が陸地に入り込んだところ」の意で使う。
さて,その字を当てた「かわ」の語源であるが,『大言海』は,「かは」の項で,
「水の流るる音か,がはがは」
と,擬音と見る。『日本語源広辞典』も,
「『川の水音』のガワガワ,カワカワ,語源説が有力」
とする。その他に,
「『カ(気・水気)+ハ(ハウ・延フ)』で,水が長く延び続けたもの」
という説も載せる。『日本語源大辞典』によると,
水が日夜カハルものであるところから(日本釈名・和語私臆鈔・言元梯・名言通・本朝辞源=宇田甘冥),
川水と海水がカハルところから(桑家漢語抄),
等々もあるらしいが,やはり擬音から来ているのではないか。日本の川は,狭く,細く,浅い急流が多い。瀬音は確かに喧しい。
がはがは,
とは,音感的にも合う気がする。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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