2018年04月30日
かわ(皮)
「かわ」には,
皮,
革,
の字を当てる。「革」(漢音カク,呉音キャク)の字は,象形文字。
「動物の全身のかわをぴんと張ったさまを描いたもの。上部は頭,下部は尻尾と両脚である。張りつめた意を含む。」
とある(『漢字源』)。
https://okjiten.jp/kanji944.html
には,
「『改』に通じ(『改』と同じ意味を持つようになって)、『あらたまる』、『あらためる』の意味も表すようになりました。」
ともある。「皮」(漢音ヒ,呉音ビ)の字は,
「『頭のついた動物のかわ+又(手)』で,動物の毛皮を手で体にかぶせるさま。斜めにかける意を含む。」
とある(『漢字源』)。しかし,
https://okjiten.jp/kanji525.html
は,逆に,
「獣の皮を手ではぎとる」象形から,
とする。真逆である。『字源』を見ると,「かわ」には,
韋,革,皮,
があり,「韋」は,
「毛を去りしかは。革を柔らかにしたるなめしがは」
とある。「皮」は,
動物の毛皮,
で,「被う」という意味があり,「革」は,
つくりかわ(獣皮の毛を取り去ったもの),
で,「改まる」という意味がある,ということらしい。「皮」が総称,ということだろうか。
和語「かわ」の語源について,『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/ka/kawa_hi.html
は,
「革は、『皮』と同源。皮の語源は諸説あるが、大きく分けると、表面を包むものなので『外側』の『かは(側)』とする説と、肌の上に被るものなので、『か』は『かぶる(被る)』の 意味、もしくは『上』を意味する言葉に付く『か』で、『わ』は『はだ(肌)』の意味とする説になる。『かわ』の旧かなは『かは』なので、両説とも不自然ではなく、意味としても説得力がありきめがたい。」
とし,『大言海』は,
「動物・植物の體の,表面(そとがは)を包めるもの。倭名抄『皮,被體也。賀波(かは)』」
側説を採る。『日本語源広辞典』は,「ガワ(側)の変化」説ともう一つ説を立てる。
中国語「カク,カウが語源で,カワとなった」
と,中国語由来説を立てる。
念のため,「がわ・かわ(側)」の語源説を見てみると,『大言海』は,「かは」(側)の項で,
「カタハラの略か,すゑそぎ,すそ(裾)。はたばり,はば(幅)」
と,同じ「かわ」でも,「かたわら」が「かわ」に転訛するのは少し難がある。『日本語源広辞典』も,
「かわ(側面)」
とする。「かわ(側)」→「かわ(皮)」は,意味からは少し難があると思う。しかし,もしあるとすると,
とがは(外側)→がは(側)→かは(皮)→かわ(皮),
という転訛なのかもしれない。
その他の説としては,『日本語源大辞典』が,
カブルの義(言元梯),
カブル(被)のカとハダ(肌)のハから。上肌の義(国語の語根とその分類=大島正健),
カはカロキ(軽),ハはハダヘ(肌)の義(和句解),
ホカハルの上下略。身の外をはる義(日本釈名),
カタチハテ(形果)の義(名言通),
ケハダ(毛肌)の義。マタハ,ケヘ(気戸)の義。マタ,キサヘ(気寒)-へ(戸)の義(日本語原学=林甕臣),
キハハダ(際膚)の反(名語記),
「革」の別音「kap」がkapaに転化したもの(日本語原学=与謝野寛),
と諸説並べるが,どうも屁理屈にしか見えない。敢えて考えれば,
被る,
という言葉との類縁が考えられる。「かぶる」は,『岩波古語辞典』には,
「カウブリの転。」
とある。「カウブリ」は,「カガフリ」の転である。
カガフリ(ル)→カウブリ(ル)→カブリ(ル),
と,転訛したことになる。しかし,奈良時代,平安時代は,「かがふる」である。という(『日本語源大辞典』)。それなら,「カブル(被)のカとハダ(肌)のハから」は,難がある。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95