2018年05月03日

はだし


「はだし」は,

裸足,
跣,

と当てる。「跣」(セン)の字は,

「先の地の上部は,足先の部分,下の儿印は人体の足の部分,足の指がわかれ出た足先をあらわす。跣は『足+音符先』。先が,広く物の先端をあらわすようになったので,跣の字でその原義を示すようになった。」

とある。「素足」の意味である。「先」の字が,「足+人の形」で,跣の原字,しかし「先」の字の意味が広がったため,さらに「足」偏をつけた形になる。

跣足,

とも書くから,屋上屋の屋,という感じ(漢字)になる。

「はだし」は,

『日本語源広辞典』の説明が的確である。

「語源は,『ハダは,本来二音節語』です。ハダ+エ(接尾語)も同源です。傍証として,バダ+アカ(赤・明)が,音韻変化でハダカとなり,同じように,ハダアカシの略のハダ+足が,ハダシとなった」

『大言海』は,

膚足(はだあし)の約,

とし,

名義抄(平安末期)「徒跿,ハダシ,スアシ」
字鏡(平安後期)「跣,波太志」
易林節用集(慶長)「徒跿,裸足,ハダシ」

を載せる。他方,『日本語の語源』は,

「履物を脱いだハダアカシ(裸足)はハダシ(跣)に転音した。」

とする。

膚(肌)足,
か,
裸足,

とにわかれるらしい。

『日本語源広辞典』は,

「ハダカ+アシ」

とし,

ハダカアシ→ハダアシ→ハダシ,

と音韻脱落により変化した,とする。他方,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ha/hadashi.html

は,

「はだしは漢字で『裸足』と表記するため、『はだかあし(裸足)』の 変化した語と思われがちだが、『はだあし(肌足)』の略である。 現代では足に履物を履か ない『素足』と同様の意味でも用いられるが、本来は素足のまま歩くことに関して用い られた。」

と,「裸足」を否定し,「肌足」説を採る。

『日本語源大辞典』は,

「平安時代初期から,訓点資料で『跿』『徒跿』『践』『蹤』などの訓として現れるが,『徒跿』は,徒の字義の誤解から,鎌倉時代に『かちはだし』の語が生み出された。語源説を反映する『裸足』(『易林本節用集』など),『膚足』(『文明本節用集』など)といった表記は室町時代以前には見られない。」

とする。で,『日本語源大辞典』は,

ハダアシ(肌足・膚足)の義(俚言集覧・言元梯・松屋筆記・語簏・和訓栞(増補)・日本語原学=林甕臣・大言海・日本語源=賀茂百樹・猫も杓子も=楳垣実),
ハダカアシ(裸足)の約(海録・柳亭記・名言通・和訓栞),
タダアシ(徒足)の義(言元梯),

を挙げる。「裸足」は,漢字が入ってからの解釈ではあるまいか。「裸の足」という言い方をするとは思えない。「肌の足」の言い方の方が自然なのではあるまいか。やはり,ここは,

はだ(のままの)足,

という言い方でいいように思える。しかし,「裸足であること」を意識するのは,履き物を履くことを知ってからのはずで,卑弥呼の時代,

倭地温暖 冬夏食生菜 皆徒跣

とある。裸足なのである。だから,裸足が普通なので,そのことを特に意識しない。漢字を知ってから,それを意識したに違いない。ちょうど,中国で,漢字を,

字,

としかよばなかったのに,他国がそれを真似するようになって,

漢字,

と,漢民族の字を意識したようなものだ。とすると, あるいは,

裸の足,

を意識したのかもしれない。とすると,

はだかあし→はだあし→はだし,

というのは捨てがたいのかもしれない。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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ラベル:はだし 裸足
posted by Toshi at 04:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする