2018年05月05日

ふづき


「ふづき」は,

文月,

と当てる。

ふみづき,
ふつき,
ふんづき,

とも言う。陰暦七月を指す。「七」は「なな」とも呼称するが、歴史的には「しち」の方が古い,という。他に,

女郎花月(おみなえしづき・をみなえしづき),建申月(けんしんげつ),親月(しんげつ),七夕月(たなばたづき),桐月(とうげつ),七夜月(ななよづき),はつあき(初秋),文披月(ふみひろげづき),愛逢月(めであいづき),蘭月(らんげつ),涼月(りょうげつ),相月(そうげつ),申の月(さるのつき),親月(おやづき),

等々とも言うらしい。陰暦七月からは,秋なのである。


https://ja.wikipedia.org/wiki/7%E6%9C%88

によると,

「文月の由来は、7月7日の七夕に詩歌を献じたり、書物を夜風に曝す風習があるからというのが定説となっている。しかし、七夕の行事は奈良時代に中国から伝わったもので、元々日本にはないものである。そこで、稲の穂が含む月であることから『含み月』『穂含み月』の意であるとする説もある。また、『秋初月(あきはづき)』、『七夜月(ななよづき)』の別名もある。」

とある。「ふづき(ふみづき)」は,古くからあったはずで,それに音と意味が重なる「文月」の文字を当てたのはないか,と思う。となると,「みなづき」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/459166730.html?1525373973

でも触れたように,一貫して,「むつき(一月)」以来一貫して,農事に関わってきた名づけである以上,「ふ(み)づき」もまた,そうだと考えるのが妥当であろう。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/hu/fumizuki.html

は,

「短冊に歌や字を書き、書道の上達を祈った七夕の 行事に因み、『文披月(ふみひらきづき)』が転じたとする説が有力とされる。その他、陰暦七月が稲穂が膨らむ月であるため、『穂含月(ほふみづき)』『含月(ふくみづき)』からの転とする説。 稲穂の膨らみを見る月であるため、『穂見月(ほみづき)』からの転と する説もある。」

は,「文月」という文字と一緒に「七夕」が入って以降の後解釈でしかない。その前から,我々の祖先は,月々を名づけていたということが,念頭に浮かばないのであろうか。

『大言海』は,

「稲の穂の含月(ふふみづき)の義。一説に,七月七日,牽牛,織姫の二星に,詩歌の文を供へて祭るより起こる名と云ふ」

とする。その上で,

八雲語抄「七月,ふみづき,本は,フム月なり」
語意考「七月を布美月と云ふは,保布布美(ほふふみ)の上下を略きて云ふ也。稲は七月に穂を含めり云々」
下學集「文月,此月,七夕,諸人以詩歌之文献於二星,或晒書篇以供星,故云文月也」
古今要覧稿「フミヅキの名は,フクミ月の義にとるかたしかるべし,此月,稲穂を含めり,八月穂を張り,九月かりとるなり」

等々を引く。「七夕」の風習が中国より入る前から「ふみづき」という呼び名があったとすると,「含む」月というのは,至極自然に見える。

『日本語源広辞典』は,

「「フフミ(含み)+月」

とし,

「稲の穂の膨らむ月です。フフミは,平安中期まで存在した語です。文月は当て字です。七夕伝説が中国から伝来し,星に詩歌(ふみ)を祭るところからの貴族の趣味による用字とおもわれます。」

とする。「ふふ(含)む」は,『岩波古語辞典』によると,

ふくむ,

意で,

花や葉がまだ開き切らない,

状態を指す。『日本語源大辞典』に,その語源を,

物を口内にふくむ形声から(国語溯原=大矢徹)。
ホホエミ(頬笑)の義(言元梯),

とある。なるほど,咲(わら)いが開花する前の蕾を「ほほえみ」とはよく言った,という感じである。

『日本語の語源』は,

(籾が実を)フフミヅキ→フミヅキ(文月)→ふづき(文月),

と端的である。それでも,

七夕に詩歌のフミ(文)を供えるところから(壒嚢鈔),
フミヒロゲ月の義(名語記),
七月に書物の虫干しをするところから(和邇雅),
七夕に書物を供える意からフミヒラキヅキの誤り(奥義抄),
秋風の立つ月の意でフミ(風微)月の義(和語私臆鈔)
墓参の習慣のある月という意からフヅキ(親月)の義(壒嚢鈔),

等々の説はあるが,ふふむ(含む)だけではないが,稲穂に絡むとする説が大勢である。

稲の穂のフフミヅキ(含月)の義(語意考・類聚名物考・古事記伝・黄昏随筆・兎園小説外集・百草露・菊池俗語考・日本語原学=林甕臣・大言海),
ホミヅキ(穂見月)の義(古今要覧稿・嚶々筆語・和訓栞),

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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posted by Toshi at 04:01| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする