2018年05月07日

フーテン


「フーテン」というと,映画『男はつらいよ』シリーズの,

「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天 で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」

寅さんということになるのだろうが,僕にとっては,永島慎二の

「フーテン」

である。

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「フーテン」は,もともと,

瘋癲,

と当てる。谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』の「瘋癲」である。『大言海』は,

風癲,

とも当てている。

「韻會學要『風,狂疾也』韻會『癲,囘顚,狂也』」

を引くので,

狂気,

を意味する。「風」事態に,「瘋」の意味がある。

『広辞苑』には,

精神状態が正常でないこと,またそういう人,癲狂,
定まった仕事を持たず,ブラブラしている人,

と意味が載る。今日の「フーテン」は,後者の意味である。「風」(呉音フウ・フ,漢音ホウ)の字は,

「大鳥の姿,鳳の字は大鳥が羽ばたいて揺れ動くさまを示す。鳳(おおとり)と風の原字はまったく同じ。中国ではおおとりを風の使い(風師)と考えた。風はのち『虫(動物の代表)+音符凡(ハン・ボン)』。凡は広く張った帆の象形。はためきゆれる帆のように揺れ動いて,動物に刺激を与えるかぜをあらわす。」

とある。「瘋」は,風に疒(やまいだれ)をつけた字。「狂気」の意味である。「癲」は,「疒+音符顚(テン 仆れるさかさになる)」である。「顚」の字は,「頂」の意味であり,「顛倒(転倒)」の「顚」でもある「顚」(テン)の字は,

「眞(真)は『匕(さじ)+鼎』の会意文字。鼎(かなえ)の中にさじで物を満たすことを表す。また,のち『人+首の逆形』の会意文字となり,人が首を逆さにして,頭の頂を地につけ,倒れることを示す。顛は『頁(あたま)+音符眞(さかさにしてみたす,たおれる)』で,真の本来の意味を表す」

とある。

さて,「フーテン」であるが,辞書には,『広辞苑』以上には載らないが,『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%B5/%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%AF-%E6%84%8F%E5%91%B3/

には,

「フーテンとは、定まった仕事や住所を持たない人のこと。もとは『瘋癲(ふうてん)』で、精神の均衡を失っていること、またはそういう人をいうが、『風来坊(ふうらいぼう)』や『プータロー(風太郎)』などの連想からか、1960年台に新宿に集ったヒッピー風の若者たちを『フーテン族』と呼ぶようになった。この『フーテン』には、『頭のイカれたヤツ』という本来の意味あいが十分に含まれていたように思われる。しかし、1968年にテレビドラマとしてスタートし、その後国民的映画シリーズとなった『男はつらいよ』の主人公車寅次郎の愛称『フーテンの寅さん』の登場で、『イカれたヤツ』のイメージは薄れ、旅から旅への自由気ままな暮らしを送っている心持ちの優しい『フーテン』のイメージが定着した。精神の均衡を失っているという意味の「瘋癲」は、マゾなじいさんの性欲を描いた谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』などに、そのおもかげをとどめるのみである。」

と説く。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/28hu/huuten.htm

も,

「フーテンとはもともと瘋癲と書き、精神状態が異常なこと及び、そういった人をさした。ここから1967年の夏、新宿東口に集まる長髪にラッパズボン、(妙なデザインの)サングラスといった格好をし、定職にも就かず、ブラブラしている無気力な若者集団をフーテン族と呼ぶようになる。瘋癲がカタカナ表記されたフーテンはこうしてアメリカのヒッピーに近いイメージで使われた。」

と同趣のことを書く。しかし,「フーテンの寅さん」を演じた渥美清は,かつて闇市で働いていた時,自分を「フーテン」と呼んでいたと語っていたことがある。この「フーテンの寅さん」の命名自体に関わっていたかもしれない渥美清の発言を信ずるなら,「フーテン」は,もっと古く,アウトローの世界の俗語として使われていた可能性がある。それが,1960年代に一般化したのではあるまいか。

因みに,プータローは,

http://homepage-nifty.com/osiete/s528.htm

によると,

「『風来坊』だそうです。意味は『失業者』『定職を持たずフラフラと暮らしている人』『アルバイト生活者』など。」

とか。

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:39| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする