2018年05月20日

あたりめ


「あたりめ」は,

鯣(するめ)の忌詞,

と『広辞苑』にある。『大言海』には,「あたりみ」に,

擂肉(すりみ)の異名,

とあり,「あたりばち」を見ると,

擂鉢(すりばち)の異名,

として,

「耗(す)るに通づるを忌み,言ひかへて云ふ。」

とある。

擂木(すりこぎ),
擂薯(あたりいも),
擂肉(あたりみ),

といった類例が並ぶ。「あたりめ(鯣)」もその流れになる。で,『大言海』は,

「随って,硯箱(すずりばこ)を,アタリバコと云ひ,鯣(するめ)をアタリメなどと云ふ」

と。「當(当)る」の項で,「忌詞」に対応させる意味が,載る。ひとつは,

果実などがいたむ(たとえば,ミカンがタル),

で,いまひとつは,

「(他動詞的に使って)剃る,擂る。商家で『する』『そる』というのを嫌って言う」

とある(『広辞苑』)。『大言海』にも,例えば,「擂る」なら,

味噌をあたる,
薯をあたる,

などと使い,

「随って,擂鉢をアタリバチ,擂木(すりこぎ)をアタリギ,擂肉(すりみ)をアタリミ,鯣(するめ)をアタリメ,硯箱をアタリバコなどとと云ひ,又,髭を剃るを髭をアタルと云ふ。」

とある。要は,

「『する(擦る・摺る・擂る)』は『(お金を)する』に通ずるので、縁起の良い『あたり』に置き換えた。」(『大辞林』)

ということで,スリッパを,

アタテリッパ,

というところまでいくと,いささか滑稽ではある。「そる」は,「逸る」を忌むということだろうか。

なお,

http://www.zen-ika.com/ikaQA50/ikaQA-4.html#Q45

に,

「するめは昔の儀式や結納の際の縁起物として使われてきましたが、これは室町時代にお金のことを『お足』といっていたことによるらしく、足がたくさんあるイカは縁起が良いということになったようです。また、するめは保存性のいい食べ物なので幸せが長く続くという意味にも通じます。結納の時には寿留女と書いて昆布(子生婦)とともに使われたりもします。ただ,『するめ』という言葉は『お金を掏る』ということにも通じますので、これも縁起を担いで、逆に『あたりめ』というようにもなりました。葦のことを地方によっては『よし』というのと同じことです。」

とあり,どうやら「するめ」を縁起物ににつかったから,尚のこと,「する」を忌んだとみていい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%A1

には,

「日本においては古くからイカを食用としており、保存ができる乾物加工品としてのスルメも古い歴史がある。古典的な儀式や儀礼の場では縁起物として扱われ、結納の際に相手方に納める品としても代表的なものである。結納品の場合には寿留女の当て字を用い、同じく結納品である昆布(子生婦)とともに、女性の健康や子だくさんを願う象徴となっている。また大相撲の土俵にはスルメが縁起物として埋められている。」

とし,

「縁起物であるとする理由は諸説有るが、日持ちの良い食品であることから末永く幸せが続くという意味とする説、室町時代の頃からお金を「お足」といい、足の多いスルメは縁起が良いとする説などがある。」

とあり,しかし,その「するめ」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%AB

によると,

「現在では、加工後の干物を『するめ』と呼び、その材料になる生物、すなわち本種を『スルメイカ』と呼ぶのが普通だが、古くは加工前のイカ自体をも『するめ』と呼んだ。後に干物との呼び分けの必要が生じて、『するめいか』という合成語が使われるようになったらしい。なお、平安時代の辞書『和名類聚抄』を見ると、『小蛸魚』の項に訓じて『知比佐岐太古、一云須流米』(ちひさきたこ、するめともいふ)とあり、『するめ』は古くには、さらに異なる意味をもっていたことがうかがわれる。」

とある。『たべもの語源辞典』も,

「現在は干したタコはヒダコである。昔,小さいタコの干したものをスルメと呼んだとなると,スルメイカの名から『するめ』という名ができたのではないということになる。」

としている。和名鈔を信ずるなら,「するめ」は,

小さいタコ,

を指していた。今日言うヒダコなのかもしれない。縁起物として足の多さを吉とするのなら,蛸でもかまわないのだから。そう言えば,「凧」は,かつて(関西では),

いかのぼり,

と呼んでいた。「たこ」と「いか」は交換可能だったのかもしれない。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/a/atarime.html

によると,「あたりめ」は,

当たりめ,

と当てるらしい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする