2018年05月21日

するめ


「スルメ」については,「あたりめ」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/459478380.html?1526757297

で触れたように,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%AB

によると,

「現在では、加工後の干物を『するめ』と呼び、その材料になる生物、すなわち本種を『スルメイカ』と呼ぶのが普通だが、古くは加工前のイカ自体をも『するめ』と呼んだ。後に干物との呼び分けの必要が生じて、『するめいか』という合成語が使われるようになったらしい。なお、平安時代の辞書『和名類聚抄』を見ると、『小蛸魚』の項に訓じて『知比佐岐太古、一云須流米』(ちひさきたこ、するめともいふ)とあり、『するめ』は古くには、さらに異なる意味をもっていたことがうかがわれる。」

とある。『たべもの語源辞典』も,

「現在は干したタコはヒダコである。昔,小さいタコの干したものをスルメと呼んだとなると,スルメイカの名から『するめ』という名ができたのではないということになる。」

としている。和名鈔を信ずるなら,「スルメ」は,

小さいタコ,

を指していた。今日言うヒダコなのかもしれない。そう言えば,「凧」は,かつて(関西では),

いかのぼり,

と呼んでいた。「たこ」と「いか」は交換可能だったのかもしれない。

で,「スルメ」の語源は,

「墨を吐き、群れる事から来る『スミムレ(墨・群れ)』が「スミメ」を経て転訛したものと考えられている」

というが,これは,生きている「イカ」,「スルメイカ」を指しているのではないのだろうか。しかし,『たべもの語源辞典』が指摘するように,「スルメ」が「スルメイカ」から来たのではないとすると,「スルメ」の語源は別途考えるべきなのに,たとえば,『日本語源広辞典』は,

「墨+群れ」

と,「墨を吐くものの群れ」の意図していると,『日本語源大辞典』も,

スミメ(隅群)の義(言元梯),
スミムレ(墨群)の約転(大言海),

あるいは,

スルドムレ(鋭群)の義(日本語原学=林甕臣),

も,同じく,「スルメ」と「スルメイカ」を混同している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%AB

にあるように,「スルメイカ」は,

「古来、日本人はこれを食してきた。今日においても最も消費量の多い魚介類である。また、東アジアでは中国北宋時代以降(蘇頌が編纂した『本草図経(中国語版)』の刊行[西暦1061年]以降)、もしくは、遅くとも日明貿易以降、日本産のイカとして知られている。真イカのこと。」

とあるが,それはイコール「スルメ」ではない。

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言うまでもなく,「スルメ(鯣)」は,

「イカの内臓を取り除いて素干しや機械乾燥などで乾燥させた加工食品。乾物の一種。古くから日本、朝鮮半島、中国南部および東南アジアにおいて用いられている食品で長期保存に向いている。日本では縁起物とされ結納品などにも用いられ寿留女と表記される。俗語としてアタリメとも言う。」

である。「鯣(するめ)」(漢音エキ,呉音ヤク)の字は,「魚の名」らしいが,いわゆる「スルメ」の意で用いるのは,我が国だけらしい。

http://zatsuneta.com/archives/001945.html

に,

「『鯣』の字は本来ウナギを指す漢字であるが、日本ではこの字をスルメに当てている。この字は室町時代の国語辞書『下学集(かがくしゅう)』(1444年)に記載があり、『易』には『変わる』という意味があり、『イカがスルメに変わる』ことに由来する。」

とあるが,加工は変わるのではなく,変えるのであって,どう考えてもこじつけである。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/su/surume.html

は,

「スルメイカを干して乾燥させたところから付いた名。 ただし、ケンサキイカを使ったするめ が最高級品とされているため、スルメイカを使ったするめは『二番するめ』で、 ケンサキイカを使ったするめが『一番するめ』と呼ばれる(ヤリイカを『一番するめ』と呼ぶ こともある)。 その他、シリヤケイカなどコウイカを使ったものは『甲付するめ』、外套(胴) を開かずに乾燥させるミズイカやアオリイカは『袋するめ』や『おたふくするめ』と呼ばれる。」

と,「スルメ」を「スルメイカ」から来たことを前提に解いているように見える。しかし,他のイカのも「スルメ」と呼ぶところを見ると,「スルメ」の語源は,別に考えるべきだ。『たべもの語源辞典』の,

「現在は干したタコはヒダコである。昔,小さいタコの干したものをスルメと呼んだ」

ことから考えるなら,『日本語源大辞典』の,

スリメ(研理)の義か(名言通),

という説も,少し首を傾げる。

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しかし,『たべもの語源辞典』は,「スミムレ」説を最終的には採る。

「スルメの語源はスミムレ(墨群)であろう。スミムレの転じたものがスルメとなる。昔は墨を吐くものの群れをスミムレとよんだ(イカ,タコ)。これがスミメ・スルメとされたのが名称の起こりで,『するめ』という製品ができると,今日のスルメイカとよばれる種類のイカが最も多くその原料となったので,この製品名がコノイカにつけられてスルメイカと呼ぶようになったのである。」

しかし,「イカ」はともかく,群れていないものを「群れ」と名づけるとは思えない。それならば,「いか(烏賊)」の語源は何か。『大言海』は,

「語源知るべからず,和訓栞『形もいかめしく,骨も異様(ことやう)なれば,名づくるなるべし』。肯はれず,(中略)説文『烏賊魚』正字通『墨魚,一名墨魚』とあり,烏とは黒き義,腹中の墨を云ふなり。」

とし,語源を語らない。「するめ」を「墨群」とした『日本語源広辞典』は,二説挙げる。

説1は,イカ(厳しの語幹),
説2は,「イ(息・墨の意)+カ(吹きかける)」

『日本語源大辞典』は,諸説挙げるが,

イは白いこと,カは背の堅いことをいう(柴門和語類集),
「烏」は黒い意で,墨の色を表すか(たべもの語源抄=坂部甲次郎),

以外見るべきものはない。諸家は,「スルメ」と「イカ」を対比しながら,考えないのだろうか。「イカ」の語源には,

墨群,

こそがふさわしく,「スルメ」は,別にあるのではあるまいか。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
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コトバの辞典;
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書評
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ラベル:スルメ アタリメ
posted by Toshi at 04:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする