2018年05月26日

カモメ


「カモメ」は,

鷗(鴎),

と当てる。「鷗(鴎)」(漢音オウ,呉音ウ)の字は,

「『鳥+音符區(ク オウ)』。ウ・オウと鳴くかもめの鳴き声をまねた擬声語」

である。

https://okjiten.jp/kanji2802.html

も,

「『尾を引いた亀の甲羅』の象形(『甲羅』、『殻』の意味だが、ここでは『あひるの鳴き声の擬声語』)と『鳥』の象形から『あひる』を意味する『鴨』という漢字が成り立ちました。)

としている。

800px-Kalalokki_wiki-01.jpg



「カモメ」の語源については,「カモ」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/459575672.html?1527186796

の項で触れたように,

「古くはカモとカモメの区別があいまいで、カモメの語源と同じとする説もある。」
「水面に浮かんでいるカモメの姿は、意外なほどカモに似ています。このため、万葉の時代にはカモとカモメが同族と見なされていて、あまり区別されていなかったのではないかと推察している研究者のかたも、かなりおられます。」

という説がある。「カモメ」は,『大言海』も,

「鴨群(かもむれ)の約にて(あぢむら,すずめ,つばくらめ),小さき意にもなるか」

とする。確かに,「かも」も「カモメ」も鳴き声がうるさいとして,

「カマ(囂,やかましい)」→カモ,
「カマ(囂,やかましい)」→カモメ,

と同源がなくもないが,しかしやかましい鳥はもっといるのではあるまいか。それよりは,

カモの語源には、「浮ぶ鳥」「浮む鳥」の略転「カモドリ」が略され、「カモ」になった,

とする説に,個人的には肩入れしたい気がする,と「かも」の項で述べた。しかし,「かも」と絡ませる語源説は多い。『日本語源広辞典』は,

「カマ(囂,やかましい)+メ(群鳥・小鳥)」

説を採る。「メ」については,「スズメ」「ツバメ」等々

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458447405.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/458420611.html

で触れたように,「トリ」を示したが,しかしツバメ・スズメ・ヤマガラメはともかく,それと同列に「カモメ」の「メ」を持ってくるのはどうであろうか。「メ」が付くものの,大きさが違いすぎる。

確かに,『日本語源大辞典』の挙げる説も,「カモムレ」説(大言海)以外にも,

カモは鳬,鷖に通ずる名で鷖(鳧)は鴨のこと。メは群鳥を呼称するときに用いる語(日本古語大辞典=松岡静雄),
鴨に似て型の小さいところからカモメ(鴨妻)の義(東雅),
鴨に連なり行く姿が,雄に雌がそうようでうるところから,カモメ(鴨女)の義(円珠庵雑記),

と,「カモ」と絡ませる説がある。その他には,

カモメ(員百群)の義(言元梯),
米をかむように,この鳥が目をしばたたいて眠るところから,カモ(醸)スル目の義か(和句解),
カモメの古形はカマメであることから,カマ(囂)と同源か。メは「群れ」か(語源辞典・動物篇=吉田金彦),

がある。「カマメ」は確かに「カモメの古形」(『岩波古語辞典』)であるので,

「カマ(囂,やかましい)」+メ→カマメ→カモメ,

の転訛は,ひとつ説得力がある。しかし,「メ」がつくだけで,スズメ,ツバメと同列の「メ」とするのには抵抗がある。『日本語の語源』は,全く別の音韻変化説を採る。

「鷗は,(中略)翼が長くて飛翔力があるので,大昔の人はナガバネ(長羽)鳥と呼んでいた。語頭の『ナ』を落としたガバネは,ガバネ・カマネに転化するとともに,『マ』の子音の順行同化の作用で語尾の『ネ』が子交(子音交替)[nm]をとげた結果,カマメ(鴎。上代語)になった。〈うなばらにカマメたちたつ〉(万葉)。
 カマメ(鴎)はさらにカモメ(鴎)になった。津軽方言では,カモ[k(am)o]が縮約されてコメ・ゴメになった。」

としている。つまり,

ナガバネ(長羽)→ガバネ・カマネ→カマネ(カモメの古形)→カモメ

と転訛したということになる。

カマ(囂,やかましい)+メ(鳥)→カマメ→カモメ,

ナガバネ(長羽)→ガバネ・カマネ→カマネ(カモメの古形)→カモメ

ということだ。決定的な説はないが,「メ」に違和感があるので,後者に与する。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:カモメ
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カモメ


「カモメ」は,

鷗(鴎),

と当てる。「鷗(鴎)」(漢音オウ,呉音ウ)の字は,

「『鳥+音符區(ク オウ)』。ウ・オウと鳴くかもめの鳴き声をまねた擬声語」

である。

https://okjiten.jp/kanji2802.html

も,

「『尾を引いた亀の甲羅』の象形(『甲羅』、『殻』の意味だが、ここでは『あひるの鳴き声の擬声語』)と『鳥』の象形から『あひる』を意味する『鴨』という漢字が成り立ちました。)

としている。

800px-Kalalokki_wiki-01.jpg



「カモメ」の語源については,「カモ」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/459575672.html?1527186796

の項で触れたように,

「古くはカモとカモメの区別があいまいで、カモメの語源と同じとする説もある。」
「水面に浮かんでいるカモメの姿は、意外なほどカモに似ています。このため、万葉の時代にはカモとカモメが同族と見なされていて、あまり区別されていなかったのではないかと推察している研究者のかたも、かなりおられます。」

という説がある。「カモメ」は,『大言海』も,

「鴨群(かもむれ)の約にて(あぢむら,すずめ,つばくらめ),小さき意にもなるか」

とする。確かに,「かも」も「カモメ」も鳴き声がうるさいとして,

「カマ(囂,やかましい)」→カモ,
「カマ(囂,やかましい)」→カモメ,

と同源がなくもないが,しかしやかましい鳥はもっといるのではあるまいか。それよりは,

カモの語源には、「浮ぶ鳥」「浮む鳥」の略転「カモドリ」が略され、「カモ」になった,

とする説に,個人的には肩入れしたい気がする,と「かも」の項で述べた。しかし,「かも」と絡ませる語源説は多い。『日本語源広辞典』は,

「カマ(囂,やかましい)+メ(群鳥・小鳥)」

説を採る。「メ」については,「スズメ」「ツバメ」等々

http://ppnetwork.seesaa.net/article/458447405.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/458420611.html

で触れたように,「トリ」を示したが,しかしツバメ・スズメ・ヤマガラメはともかく,それと同列に「カモメ」の「メ」を持ってくるのはどうであろうか。「メ」が付くものの,大きさが違いすぎる。

確かに,『日本語源大辞典』の挙げる説も,「カモムレ」説(大言海)以外にも,

カモは鳬,鷖に通ずる名で鷖(鳧)は鴨のこと。メは群鳥を呼称するときに用いる語(日本古語大辞典=松岡静雄),
鴨に似て型の小さいところからカモメ(鴨妻)の義(東雅),
鴨に連なり行く姿が,雄に雌がそうようでうるところから,カモメ(鴨女)の義(円珠庵雑記),

と,「カモ」と絡ませる説がある。その他には,

カモメ(員百群)の義(言元梯),
米をかむように,この鳥が目をしばたたいて眠るところから,カモ(醸)スル目の義か(和句解),
カモメの古形はカマメであることから,カマ(囂)と同源か。メは「群れ」か(語源辞典・動物篇=吉田金彦),

がある。「カマメ」は確かに「カモメの古形」(『岩波古語辞典』)であるので,

「カマ(囂,やかましい)」+メ→カマメ→カモメ,

の転訛は,ひとつ説得力がある。しかし,「メ」がつくだけで,スズメ,ツバメと同列の「メ」とするのには抵抗がある。『日本語の語源』は,全く別の音韻変化説を採る。

「鷗は,(中略)翼が長くて飛翔力があるので,大昔の人はナガバネ(長羽)鳥と呼んでいた。語頭の『ナ』を落としたガバネは,ガバネ・カマネに転化するとともに,『マ』の子音の順行同化の作用で語尾の『ネ』が子交(子音交替)[nm]をとげた結果,カマメ(鴎。上代語)になった。〈うなばらにカマメたちたつ〉(万葉)。
 カマメ(鴎)はさらにカモメ(鴎)になった。津軽方言では,カモ[k(am)o]が縮約されてコメ・ゴメになった。」

としている。つまり,

ナガバネ(長羽)→ガバネ・カマネ→カマネ(カモメの古形)→カモメ

と転訛したということになる。

カマ(囂,やかましい)+メ(鳥)→カマメ→カモメ,

ナガバネ(長羽)→ガバネ・カマネ→カマネ(カモメの古形)→カモメ

ということだ。決定的な説はないが,「メ」に違和感があるので,後者に与する。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:カモメ
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