2018年06月27日
ヒヨドリ
「ヒヨドリ」は,
鵯,
と当てる。『広辞苑』は,
白頭鳥,
とも当てる,としている。
「鵯」(ヒ,漢音ヒツ,呉音ヒチ)の字は,
「『鳥+音符卑(背が低い)』あるいは,ぴっぴいと鳴く聲を真似た擬声語か」
とある(『漢字源』)。
必ずしも,「ヒヨドリ」を指していおらず,『字源』は,我が国だけで「ひえどり(鵯鳥)」,「ヒヨドリ」を指す,としていて,はしぶとがらす,みやまがらす,の意としている(鵯烏)。『漢字源』は,白頭鳥,またひよに似た鳥の総称,としている。どうやら,姿形もさることながら,
鳴き声,
から来た字のようである。『大言海』は,
「ヒエドリ(鵯鳥)の転」
とし,「ひえどり」の項で,
「稗鳥の義。稗を食へば云ふならむ。字は,蓋し,鵯鳥の二合和字」
とある。しかし,
http://www.nihonjiten.com/data/45847.html
は,
「鳴声『ヒィーヨヒィーヨ』に由来する説、ヒエを好んで食べることから、古名『稗烏(ヒエドリ)』が転じた説がある。ただし、ヒヨドリはヒエは食べない。漢字表記『鵯』は国訓で『ヒヨドリ』、いやしいの意『卑』は『小さい』の意味に用いる『稗(ヒエ)』に通じるか。」
としており,「稗」は当て字,僕は漢字「鵯」から,名を取ったのではないか,だから,
ヒドリ→ヒエドリ,
と訓んだのではないかと勘繰りたくなる。しかし,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A8%E3%83%89%E3%83%AA
の言うように,
「鳴き声は『ヒーヨ!ヒーヨ!』などと甲高く聞こえ、和名はこの鳴き声に由来するという説がある。また、朝方には『ピッピッピピピ』とリズムよく鳴くこともある。」
とあり,
ひいよひいよ(『広辞苑』)
ピーヨピーヨ(『デジタル大辞泉』)
とい鳴き声からか,
ヒヨ,
とも呼ばれる。その意味では,
ヒヨ→ヒヨドリ,
は考るのが,自然なのかもしれない。『日本語源広辞典』は,
「ピーヨ,ピーヨ+鳥」
とするが,カラス,ウグイス,ホトトギス,の「ス」,スズメ,ツバメ,の「メ」等々と違い,なぜか,
ヒヨメ,
ヒヨス,
とはならなかった。『日本語源大辞典』も,
鳴き声(和句解・音幻論=幸田露伴),
古名ヒエドリ(稗鳥)の転(大言海),
の二説挙げるのみである。やはり,
ピーヨ→ヒヨ→ヒヨドリ,
と転訛したと見るのが妥当に思える。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95