2018年07月02日

たいまつ


「たいまつ」は,

松明,
炬,

と,『広辞苑』は当てている。「松明」の字は,

「タキマツ(焚松)の音便」(『広辞苑』『大辞林』)

から来た当て字と想像される。「炬」(漢音キョ,呉音ゴ)は,

「巨(キョ)は,工印のものさしにコ型の手で持つ所のついた形を描いた象形文字。上の一線と下の一線とがへだたっている。距離の距(間がへだたる)と同系のことば。炬は『火+音符巨』で,長い束の先端に火をつけてもやし,ずっとへだたった手に持つたいまつ」

で,

かがり火,
たいまつ,

の意である。

Hakone_Reisho_Tokaido.jpg

(『東海道五十三次(隷書東海道)』より「東海道 十一 五十三次 箱根 夜中松明とりhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E9%81%93%E4%BA%94%E5%8D%81%E4%B8%89%E6%AC%A1_(%E6%B5%AE%E4%B8%96%E7%B5%B5)より」)

「たいまつ」は,

松や竹の割り木,または枯れ草などを束ね,これに火をつけ照明とするもの,

で,

ついまつ,
しょう めい(松明),

ともいう。『大言海』は,

「焼(た)き松の音便。松明(しょうめい)は,通鑑,唐肅宗紀,註『松枯而油存,可燎之為明』という語句アリ,正字通『滇人以松心為炬,號曰松明』

としている。これを見ると,「松明」は当て字ではなく,中国由来の言葉と見える。『字源』をみると,

松炬(しょうきょ),
松明(しょうめい),

というらしい。

『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E6%9D%BE%E6%98%8E

も,やはり,

「火を焚くための松の意の『たきまつ(焚き松)』が音変化して『たいまつ』になった」

としており,『日本語の語源』も同様であるが,『日本語源広辞典』は,二説挙げている。

説1は,「タキ(焚)+マツ(松)」
説2は,「手+火+松」。

後者は,手にかざす松の灯り,の意で,由来になっていない気がする。なお,『日本語源広辞典』には,

「松明に使う松は松脂(まつやに)の多い部分(コエマツ)を使った」

とある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%A4

も,

「『焚き松』や『手火松』」

を挙げている。しかし,『世界大百科事典 第2版』は,

「神話では伊弉諾(いざなき)尊が黄泉国(よみのくに)を訪れるとき,櫛の男柱を欠いて燭(しよく)としたとつたえる。国語の〈たいまつ〉は〈たきまつ(焼松)〉の音便であろう。手火松(たひまつ)とする語源説は文献からは成立しない。松を灯火に用いるには,〈ひで〉(根の脂の多い部分)をこまかく割って台の上で燃やすことが,近年まで日本の山村や中国の一部で行われており,松脂をこねて棒にした〈松脂ろうそく〉も用いられていた。」

と,「たきまつ(焼松・焚松)」説を採る。『日本語源大辞典』は,三説挙げる。

タキマツ(焼松・焚松・燔松)の(名語記・日本釈名・類聚名物考・箋注和名抄・俗語考・柴門和語類集・日本語原学=林甕臣・大言海),
タヒマツ(手火松)の義(東雅・言元梯・和訓栞・語簏・火の昔=柳田國男),
ツキマツ(続松)の転(塵袋),

その上で,

「平安時代には,単に『まつ』とも言い,庭上で立てて使う場合は『たてあかし』『たちあかし』とも呼んだ。また,『ついまつ(続松)』と記した例も多く,両者は同じように使われていたらしい。鎌倉・室町時代になると『まつび』『まつあかし』『あかしまつ』などと新しい呼び名も生まれる」

としている。こうみると,「あてあかし」とわざさわ立てる場合読んだのは,「まつ」ないし「たいまつ」が,手で持つことを全体としていたからだと想像される。とすれば,わざわざ,屋上屋を重ねる,

タヒマツ(手火松),

という言い方をしたとは思えない。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:たいまつ 松明
posted by Toshi at 03:50| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする