2018年07月05日

エビ


「エビ」は,

海老,
蝦,
鰕,

と当てる。

hokusai021_main.jpg

(葛飾北斎「姫小松に海老」(特注品として制作された)https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai021/より)

「海老」の字は,当て字のようだが,

「これは中国にはなく、平安時代の漢和辞書『和名類聚抄』(934年)に記載がある。エビはひげを蓄え、体が丸くなった老人に似ていることから、長寿を喜ぶ意味を込めて『海老』となった。」

とか(http://zatsuneta.com/archives/001917.html)。

漢字「蝦」の字は,

「右側の字(音カ)は,仮面や外皮を被る意を含む。蝦は,それを音符として,虫を加えたもの」

蝦蟆(カボ)はガマ,ヒキガエルの意になる。「鰕」(漢音カ,呉音ゲ)は,

「右側の字は,上にかぶせるという基本義をもつ。鰕は,それを音符にし,魚を添えた字」

とある(『漢字源』)。因みに「老」(ロウ)の字は,

「年寄りが腰を曲げてつえをついたさまを描いた」

象形文字。

一説に,「エビ」は,

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q119938581

「新井白石の『東雅』(1719)には、『エビは其(そ)の色の葡萄(えび)に似たるをいひ、俗に海老の字を用ひしは、その長髯傴僂(ちょうぜんうる)たるに似たる故也』と、エビの語源と海老の字義が載っています。 葡萄が語源なのです。」

とあり,この説がネット上では大賑わいである。たとえば,

http://goshoku.co.jp/column/ebi/reason.html

にも,

「 日本では古来からブドウ類をエビヅル(エビカズラ)と呼び、果実が熟した時の実や汁の濃い赤紫色の事をエビ色と呼んでいました。 一方、『エビ』を熱すると『葡萄』のような紫を帯びた暗い赤色になり、葡萄の色に似てきます。 このことから、『エビ』の事も『葡萄=(えび)』と呼ぶようになったんだそうです。」

と。しかし,「エビカヅラ」について,『岩波古語辞典』は,

葡萄,
葡萄蔓,

と当て,

「蔓の巻き具合が,エビのひげに似る故の名か」

とある。

800px-Vitis_ficifolia_1.JPG


「エビカヅラ」は,エビヅルの古名。エビヅル(蝦蔓、蘡薁)は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%93%E3%83%85%E3%83%AB

に,

「古名はヤマブドウとともに『エビカズラ』(葡萄蔓)」

とある。「(ヤマ)ブドウ」の古名でもある。『大言海』も,

「鬚ありて,蝦に似たる故の名かと云ふ」

とある。しかも,

「つる性の木で他の木などに巻きひげによって上昇する。」

とある。どうやら,事情は逆で,「エビ」のひげに似ているから,名づけた,ということになる。「エビ」が「エビカヅラ」に由来するというのは,白石に起因する。『東雅』の説は,いつもあまりあてにならない。

『日本語源広辞典』は,「エビ」の語源を,有力とする二説載せる。

説1は,「曲がる」意味で,海老の老からすると,腰が曲がるに語源がある,ユビ(曲がる指,古語オ,ヨビ,方言イビ)」が,エビと変化した,
説2は, 葡萄の古語を「エビ」といいます。それで体の色からエビと名づけた,

と。因みに,「ゆび」は。古形が「および」。

『日本語源広辞典』も言っているが,「エビ」の語源は諸説ある。『日本語源大辞典』は,

体色がエビ(葡萄・蒲萄)に似ているから(東雅),

説以外に,

エヒゲ(吉髭)の約転(言元梯),
エタヒゲ(枝鬚)の義(名言通),
エヒゲ(枝髭)の義(日本語原学=林甕臣),
エビ(柄鬚)の義(草廬漫筆),
エは江か。ヒはヒゲの略(和句解),
イデハリ(出針)の反(名語記),
エビとは長い毛をいうから(嬉遊笑覧),
エは赤の意(松屋筆記),
よく曲がるというところから,オヨビ(指)の変化したもの(衣食住語源辞典=吉田金彦),

と諸説ある。『東雅』のように,

「エビは其(そ)の色の葡萄(えび)に似たる」

に焦点を当てるより,「ヒゲ」に着目する説が多い。やはり,「海老のひげ」に絡んだと見たい。「海老」の字を当てたのは,後世になってからではあるまいか。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:11| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする