2018年07月18日

よまいごと


「よまいごと」は,

世迷言,

と当てるが,当て字のようだ。『広辞苑』には,

世迷い言の意か,

とある。つまり,「よまよいごと」の意だと。で,

他人に通じないような不平・愚痴をいうこと,またその言葉,
わけのわからぬ繰り言,

という意味である。でも語感はちょっと違うような感じがする。『江戸語大辞典』も,

わけのわからぬ繰り言,

と載せる。しかし,僕には,『岩波古語辞典』の,

言っても甲斐のないことをくどくど言うこと,

の意が一番しっくりくる。

『大言海』は,

世迷言の義か,

と『広辞苑』と同趣旨のことを述べ,

独語とし,つぶやくこと,

とある。どうやら,

独語,
繰言,

が,この要件らしい。『大言海』は,「狂言記」(茶盃拜)から,

「明暮なにやらよまひごとばかり云ふて,涙を流し」

を載せる。な,「狂言記」は,江戸時代に出版された狂言の台本集らしい。

さて,

世迷言,

が当て字だとすると,「よまいごと」の由来は何か。『日本語源広辞典』は,

「ヨマフ(愚痴を言う)の連用形+こと(言葉)」

とし,

「わけのわからない繰言を言います。当て字『世迷言』をヨマヨイと読むのは誤り」

とある。そういう誤りがあるのか思うと,それが結構あるらしい。

http://blog.livedoor.jp/yamakatsuei/archives/52111702.html

には,その例が満載である。「当て字」から誤読みする例は,「取り付く島がない」「けんもほろろ」といった言い回しを,耳で聞き覚えるせいか,「とりつくひまがない」「けんもほろほろ」というのに似ている。

さて,「ヨマフ」だが,『岩波古語辞典』には載らない。しかし,『日本語源大辞典』は,

動詞ヨマフから。ヨハフは中国地方でいうヨーマー(「ようもまあそんなことが言える」の省略)の語からか(毎日の言葉=柳田國男),

を載せおり,「ヨマフ」説の由来が柳田國男だと知れる。『日本語源大辞典』は,もうひとつ,

ヤマヒ(病)言の意(音幻論=幸田露伴),

を載せている。「ヨマフ」説は,確かめようはないが,「ヤマヒ」説は,語呂はあっても,意味は違う気がする。

「世迷言」の類語には,

繰言,
愚痴,

以外に,

死児の齢(よわい)を数える,

というのがある。これはメタファだかが,「世迷言」にある,

言っても甲斐なきことを言う,

の意は通じるが,『類語新辞典』には,

他人に通じない愚痴,

とあり,他人が聞いても,共感できないものを差すらしい。その要件を加えると,

死児の齢を数える,

とは,僅かにずれる。その意味では,傍から聞くと,

よまよいごと,

にしか思えない繰言,ということなのだろう。『類語例解辞典』には,繰言と比較して,

「世迷い言」は、言っても無意味な、また、その状況では言っても甲斐(かい)のないような不平や不満を言うこと。また、その言葉。

「繰り言」は、同じ愚痴を繰り返し言うこと。

とあるらしい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大野晋・浜西正人『類語新辞典』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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posted by Toshi at 04:19| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする