2018年07月24日

ほむら


「ほむら」は,

焔,
炎,

と当てる。「炎」(エン)の字は,

「『火+火』で,盛んに燃えるさまを示す。談・啖・淡などの音符としては,タンと読むことがある。」

とある(『漢字源』)。

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「焔(焰)」(エン)の字は,

「臽は穴にはまる意をあらわすが,ここでは単に音符で,元の意味は関係ない」

というしかないが(『漢字源』),

https://okjiten.jp/kanji2294.html

には,

「会意兼形声文字です(火+臽)。『燃え立つ炎』の象形(『火』の意味)と『人が落とし穴に落ちた』象形(『落ちる、落とす』の意味)から、火が落ちる事を意味し、そこから、『火が少し燃え上がるさま』を意味する『焰』という漢字が成り立ちました。」

とある。

k-2294.gif


「焔」「炎」いずれも,「ほのお」の意味である。

『広辞苑』『デジタル大辞泉』は「ほむら」の項で,

「火群(ほむら)の意」

としている。

The_flame_of_wisdom.jpg

(蝋燭の炎 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%8Eより)


「ほ(火)」は,

「ひの古形,他の語を伴って複合語をつくる」

とある。「火影(ほかげ)」「火口(ほぐち)」「火屋(ほや)」「火筒(ほづつ)」「火 垂 (ほたる) 」等々。「ほむら」は,単なる火ではない。

火の群れ,

である。だから,「ほむら」は,メタファとして,

怒り,怨み,嫉妬の燃え立つ,

意としても使われる。「炎」は,また,

ほのお,

とも訓ませるが,語感としては,「ほのお」より大きく盛んな感じである。「ほのお」は,

「火の穂」

と,『広辞苑』にはある(『大言海』『日本語源広辞典』も)。『日本語源大辞典』には,

「キ(木)に対して複合語に表れる「コ」(木だち,木の葉)と平行的関係のもの」

とある。「ほのお」は,単に「火の穂」を示していて,ここには,状態表現しかない。「ほむら」となると,そこに価値表現が加味されている気がする。

そして,この「ほ」(火)は,

穂,

にも通じる。「ほ(穂)」について,『日本語源広辞典』は,

「抜きん出ているもの」

の意とし,火の穂,稲の穂の意とし,『大言海』は,

「秀(ほ)の義,分明にあらわるるより云ふ」

とある。際立つ,という含意であろうか。『日本語源大辞典』には,「穂」を,

火の義,穂の出始める色が赤いところから(和訓栞・柴門和語類集・言葉の根しらべの=鈴木潔子),

とする説もある。「穂」「火」は漢字でしかない。「ほ」は,穂でもあり,火でもあり,秀でもあった。『岩波古語辞典』は,「ほ」の字に,

穂,
秀,

であった。際立ち,抜きん出る物を指していたと見ていい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ほむら
posted by Toshi at 04:09| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする