2018年07月25日

はづき


「はづき」は,

葉月,

陰暦八月の意である。仲秋である。

五節句之内%E3%80%80葉月.jpg

(歌川芳虎 五節句之内 葉月 http://ukiyoe.yamabosi.jp/?p=23452より)


「古くはハツキと清音」

とある(『広辞苑』)。『岩波古語辞典』には,「はつき」で載り,

「八月,ハツキ」(色葉字類抄)
「葉月,ハツキ,八月の異名」(伊京集)

を引く。

https://ja.wikipedia.org/wiki/8%E6%9C%88

には,八月の異名が,

秋風月(あきかぜづき),
雁来月(かりきづき),
観月(かんげつ),
建酉月(けんゆうげつ),
木染月(こぞめつき),
壮月(そうげつ),
竹春(ちくしゅん),
仲秋(ちゅうしゅう),
月見月(つきみつき),
燕去月(つばめさりづき),
紅染月(べにそめづき),
月見月(つきみづき),

等々と載る。まさに,新暦九月のイメージである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/8%E6%9C%88

は,葉月の由来を,

「木の葉が紅葉して落ちる月『葉落ち月』『葉月』であるという説が有名である。他には、稲の穂が張る『穂張り月(ほはりづき)』という説や、雁が初めて来る『初来月(はつきづき)』という説、南方からの台風が多く来る『南風月(はえづき)』という説などがある。」

と併記にとどめる。たしかに,「葉落ち月」系の説が目につき,たとえば,

http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/saijiki/hatuki.html

は,

「平安末の藤原清輔著『奥義抄』は『木の葉もみぢて落つるゆゑに葉落ち月といふをあやまれり』とし、『葉落ち月』を略したものと古人は考えていたようだ。『はつき』を『葉尽き』の掛詞としている歌が幾つか見えることも、この語源説の補強材料になるだろうか。
もとより全般として落葉が本格化するのは晩秋からであるが、桜の葉などはこの時期すでに色づいており、散り始める樹も少なくない。陰暦八月頃は、古人にとって殊更木の葉に注意が向く時節だったのだろう。
室町初期の成立と推測されている歌集『蔵玉集』には、八月の異名として『秋風月』『月見月』『紅染こぞめ月』の三つを挙げている。」

歌人の感性は感性として,語源とはなり得まい。ただ,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ha/hazuki.html

が,

「葉月の語源は、新暦では九月上旬から十月上旬の秋にあたるため、葉の落ちる月『葉 落ち月』が転じて『葉月』になったとする説。 北方から初めて雁が来る月なので、『初来月』『初月』から『葉月』になったとする説。稲の穂が張る月『穂張り月』『張り月』から、『葉月』になったとする説がある。「葉落ち月」の説が有力にも思えるが、必ずしも漢字が そのまま残るとは限らず、当て字の可能性もあるため、正確な語源は未詳。」

というように,「葉月」は当て字なので,この字から由来を推測するのは,いささか危うい。『大言海』は,

「稲穂の發月(はりづき)の意と云ふ,或は云ふ,葉落月の意なりと,いかがか」

と決定を避けているが,「いかがか」は,後者の説に向けているように思われる。『大言海』は,これまで,十二月(しわす)から七月(ふづき)まで,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/455892480.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/455932349.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/456805354.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/457607450.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/457762501.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/458763376.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/459166730.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/459184411.html

一貫して,農事と関わらせて「月名」の由来を説いてきた。ただ葉が落散る月は,ありえるのかという含意と見る。和訓栞に,

「はづき,八月を云ふ。葉月の義。黄葉の時に及ぶを云ふめり,西土にも葉月の名あり」

を意識したのかもしれない。『日本語源広辞典』は,「發月」説を採る。

「『稲の穂の張る月。充実する月。つまり,発月(ハリツキ)』が語源と考えます。『稲ばらみの果てる月』ともとれますが,果て月は縁起が悪いので語源となりにくいと考えます」

と。僕も,農事と関わるという意味で,この説に与したい。

『日本語源大辞典』は,例によって諸説挙げている。

ハオチ(葉落)月の略(奥義抄・和爾雅・日本釈名・菊池俗語考・紫門和語類集・大言海),
ホハリ(穂発・穂張)月の義。稲の穂をはる月の意(語意考・古事記伝・百草露・古今要覧稿・日本語原学=林甕臣・大言海),
ハナヅキの略。初稲の花の月の義(兎園小説外集),
ハはハシキのハ。稲の實が端に現れる月の意(嚶々筆語),
初雁の来る月であるところからハツキ(初來)の義(滑稽雑誌・類聚名物考),
ハジメノツキ(初月)の略(和語私臆鈔),

等々。農事にかかわる意味では,

ハナヅキの略,
ハはハシキのハ,

もあるかもしれない。しかし,『日本語の語源』は,

「ハチヅキ(八月)-ハヅキ(葉月)」

と,珍しく滑っている。八月だけが「八」を言う意味がはっきりしなければ,意味のない説に思える。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:20| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする