「かき」は,
垣,
以外に,
牆,
籬,
等々とも当てる(和名抄「墻,垣,賀岐」)。
(「垣」金文・戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%9E%A3より)
「垣」(漢音エン,呉音オン)の字は,
「会意兼形声。亘(カン)は,取り巻いて範囲を限ることを示す会意文字。垣は『土+音符亘(カン)』で,周囲にめぐらした土塀のこと。」
とあり,「亘」(セン・コウ)の字は,
「会意文字。『上下二線+めぐるさまを示すしるし』で,ぐるりとめぐらす意味を示す。音符としては,セン・かん・などの音を表す。桓(カン 周囲をめぐらす並木)・垣(エン 周囲にめぐらす垣根)・宣(セン ひろくいきわたる)の字に含まれる。」
とある(『漢字源』)。
https://okjiten.jp/kanji1762.html
は,
「会意兼形声文字です(土+亘)。『土地の神を祭る為に柱状に固めた土』の象形(『土』の意味)と『物が旋回する』象形(『めぐる』の意味)から、城にめぐらした『かき』を意味する『垣』という漢字が成り立ちました。」
と具体的である。
(「牆」殷・甲骨文字 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%89%86より)
「牆(墻)」(漢音ショウ,呉音ゾウ)は,
「会意兼形声。嗇(ショク)は『麥+作物を取り入れる納屋』からなり,収穫物を入れる納屋を示す。牆は『嗇(納屋)+音符爿(ショウ)』で,納屋や倉のまわりにつくった細長いへいを示す」
とある(『漢字源』)。
「籬」(リ)の字は,
「竹+音符離(リ)(別々のもうひとつをくっつける)」
で,柴や竹であんでつくった垣根。まがき,の意である。
「かき」の語源は,『大言海』は,
「構(か)くの名詞形。武烈即位前紀『八重の組哿枳(くみかき),哿哿(かが)めども』
と,「かく」の名詞化説を採る。ほぼ同じなのが,『日本語源広辞典』で,
「語源は,『動詞カク(懸,掛)の連用形,カキ』です。現代語の掛ける・懸けるの意のカクが,語源です。組み立てたり編んだりすることをカクといいます。日本書紀に『組垣カカめども』などと使われています。家と家の境に,石とか,柴とか,竹などで,組んだり,編んだりしたものを掛キ・懸キといったもの。あぐらをカクも組むいです。」
とあり,妥当な見解に思える。因みに,「構く」は,「懸く」と同源。「かく」は,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/456827888.html
で触れたように,
書く,
も,
掻く,
も,
懸く,
も
掛く,
も,
舁く,
も,
構く,
も,
区別なく,「かく」であった。漢字で当て分けて意味を分けているだけである。
『日本語源大辞典』には,その他の説として,
カギリ(限)の略(日本釈名・東雅・古事記伝・和訓考・言元梯・名言通・碩鼠漫筆・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子),
カコヒの約(万葉代匠記・俗語考・家屋雑考),
カコミ,又はカクミの約(俚言集覧),
カコムの名詞形(国語の語根とその分類=大島正健),
動詞カクム(囲)の語幹の母韻交替形。カキ(垣)はカクムモノの代表(古代日本語文法の成立の研究=山口佳紀),
カコヒキ(囲木)の義(日本語原学=林甕臣),
カゲ(陰)の転声(和語私臆鈔),
等々を載せるが,「かく」という動詞由来が妥当に思えてくる。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95