2018年08月16日

サバ


「サバ」は,

鯖,

と当てる。「鯖」(漢音セイ,呉音ショウ)の字は,

「魚+音符青(あおい)」

である(『漢字源』)。サバの背の色が青いので,とあるが,「鯖」をサバにあてるのは,我が国だけのようである(『字源』)。

「魚,あるいは鳥獣の肉を混ぜて煮た料理」(「五侯鯖」は王氏五侯の珍しいよせなべ)

の意とあり,その他に,

淡水の菁魚(「青魚」),

の意もあり(『漢字源』),「さば」は,

菁花魚,

というらしい(『字源』)。古くは,

「アオサバ(菁魚)」

と呼んだらしいので,「鯖」が「サバ」ではないことは,承知していたと推測される。

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サバは,

「江戸時代に七夕祭の宵,すなわち七月六日の御三家をはじめ諸大名から七日七夕の祝いとして将軍家にサバを(刺鯖にして)献上したものである。後に,本物の鯖ではなく鯖代として金銀を献上することになった。これが今日のお中元と称して進物する起源となったのである。」

という(『たべもの語源辞典』)。因みに,「刺鯖」とは,

「サバを背開きにして塩漬けにしたもの。二尾を刺し連ねて一刺しという。盆の贈物にもちいた」

とある(『広辞苑』)。「二枚ずつ頭のところで一本の串にさした」(『江戸語大辞典』)という。サバはいたみやすたかったからであろう。

サバの語源には諸説あり,『日本語源大辞典』は,

歯が小さいところから,サバ(小歯)の義(日本釈名・滑稽雑誌所引和訓義解・大和本草・和語私臆鈔・柴門和語類集・和訓栞・大言海),
サバ(狭歯)の義(名言通),
セキバ(狭)の略転(関秘録),
多くの集まるところから,サハ(多)の転(東雅),
周防国サバ(佐婆)郡の名産であるところから(和語私臆鈔),
セアヲハ(背菁斑)の義(言元梯),
盂蘭盆の際に蓮葉で包む魚であり,葉をくさくするところから,サはクサシの上下略,ハは葉か(和句解),

と挙げる。この他にも,

アイヌの人たちが,サバを「シャンバ」と呼んでいたことから,これが変化してサバになった,

という説もある。『日本語源広辞典』は,「サバ(小歯)」説,「サバ(多)」説以外に,

磯で獲れる代表的な魚なので,「磯庭,イサバからイ音脱落」説,

も挙げている。

『大言海』は,

「小歯(さば)の義,サバの魚と云ふが,成語なり。其歯,細小なり(鮫も,小眼(サメ),鰆も小腹(さはら)),日本釈名(元禄),鯖『サバは,小歯(さば)也,サは,ササヤカの意。小也。此魚,他魚(コトウオ)に変りて,歯也』。アオサバと云ふは,色靑ければなり。鯖は靑魚の合字」

とし,『たべもの語源辞典』も,

「その名称が魚体の特色からつけられると考えるならば,歯が小さい魚だからサバであるとの説がよい」

としている。

小歯,

狭歯,

なのだろう。『大和本草』(江戸時代,宝永)は,

「此の魚牙小なり,故にサハ(狭歯)と云ふ」

とあり,『日本釈名』(元禄)の,

「サバは,小歯(さば)也」

と,対である。他の説と比較するなら,「菁色」由来の語源が無い以上,この何れか,ということに落着く。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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ラベル:サバ
posted by Toshi at 04:22| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする