2018年08月30日

石鹸


「石鹸」は,

シャボン,

のこととされる。明治初めまで,石鹸に,シャボンとルビさえ振った。『江戸語大辞典』にも,「しゃぼん」の項で,

「スペイン語でjabonの古い綴字xabonのポルトガル語訓みか」

として,石鹸の意とする。『大言海』も,「石鹸」の項で「しゃぼん」の意とする。確かに,石鹸は,

「日本には安土桃山時代に西洋人により伝えられたと推測されている[4]。最古の確かな文献は、1596年(慶長元年8月)、石田三成が博多の豪商神屋宗湛に送ったシャボンの礼状である。
最初に石鹸を製造したのは、江戸時代の蘭学者宇田川榛斎・宇田川榕菴で、1824年(文政7年)のことである。ただし、これは医薬品としてであった。
最初に洗濯用石鹸を商業レベルで製造したのは、横浜磯子の堤磯右衛門である。堤磯右衛門石鹸製造所は1873年(明治6年)3月、横浜三吉町四丁目(現:南区万世町2丁目25番地付近)で日本最初の石鹸製造所を創業、同年7月洗濯石鹸、翌年には化粧石鹸の製造に成功した。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E9%B9%B8

とされるのが一般的である。『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/se/sekken.html)も,

「石鹸の『石』は固い物の意味。『鹸』は塩水が固まったアルカリの結晶、また灰をこした 水のことで、アルカリ性で洗濯にも使えることから、本来は『鹸』の一字で『石鹸』も意味 する。 つまり、『固い鹸』の意味として日本人が考えた造語である。南蛮貿易により渡来したが、当初は灰汁を麦粉で固めたものを言い、『鹸』の意味のまま用いられていた。江戸時代には『シャボン』が常用語として使われていたため『石鹸』の語はあまり見られないが、明治に入ると漢語重視の風潮になり、多く用いられるようになった。たたし、この当時の振り仮名は『シャボン』とされるのが普通で、『せっけん』と読まれるのは明治後半からである。」

とする。しかし,シャボンと石鹸は別物である,という。

慶長十七年(1612)に,東大寺三蔵(正倉院)の御宝物改めをした記録に,

「長持ち一つ,内しゃぼん一長持有」

とあるそうである(『江戸の風呂』)。つまり,慶長年間には調査した人間が「しゃぼん」という言葉を知っており,奈良時代からあった宝物をそう呼んだ。ただ,これは,

蜜蝋の類,

と今日では見なされている。上記にもあるが,慶長元年(1596)伏見大地震の見舞いに,博多の豪商神屋宗湛(1553-1635)が石田三成(1560-1600)宛にシャボンを贈っており,この時の礼状が,

「しゃぼん二被贈候遠路懇志の至り…」

と,残っているとか(仝上)。

「当時のしゃぼんの産地はおもにスペインで,『ペネチア石鹸』とか,『マルセーユ石鹸』『カスティリア石鹸』と呼ばれる高級品だった」

が,南蛮交易に進出した宗湛だからこそ入手できた(仝上)。

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(マルセイユ石鹸(サヴォン・ド・マルセイユ)  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E9%B9%B8より)


しんし,「石鹸」は,元来中国産である。https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q127648597には,
石鹸を,

中国の湖の付近の石が、アルカリ性で泡が立ち、洗濯に使っていたのが語源,

とし,この石は、

「ラーメンのコシを出すのに使う事もあり、『灌水(かんすい)』とも、呼ばれています。」

とあるが,

「石鹸は元来中国産である。明の名医李時珍が,1590年に著した『本草綱目』のなかに石鹸という字があり,これを幕府の儒官林羅山(1583-1657)が二本に紹介したもので,製法はかの地の山東に産する草の灰汁にうどん粉をこねあわせて石のように固めたもので,洗濯にも使い,まんじゅうのふくらし粉にも使うとあるから,いわゆる脂肪酸アルカリ塩としてのしやぼんとは性質のちがうものだった。」

とある(『江戸の風呂』))。「鹸」(漢音カン,呉音ケン)の字を見ると,

「会意兼形声。『鹵(転々とアルカリの噴き出たさま)+音符僉(ケン・セン 引き締める,集めて固める)』」

とあり,

塩水の固まったアルカリの結晶,
あく,灰を溶かした水の上澄み,アルカリ性で選択に使える,

とあり,まさにこれが「石鹸」であり,シャボンとは全く別物。この字を当てて,シャボンと訓ませていた,ということになる。

しゃぼんは,江戸時代後半には蘭医学とともに薬用としておおいに利用され,明治五年,京都府が設立した舎密局(化学研究所)が石鹸製造を始めたというたという。さらに,

https://www.live-science.com/honkan/soap/soaphistory01.html

に,

「国産の石鹸が初めて売り出されたのは1873年(明治6年)。堤磯右衛門が1本10銭で棒状の洗濯石鹸を販売したのです。しかし、その品質は舶来の石鹸に比べて今ひとつでした。その後1890年(明治23年)には、国内初のブランド石鹸『花王石鹸』が発売になります。現在の花王石鹸創立者・長瀬富郎が製造販売したもので、桐箱に3個入って35銭。当時は米1升が6~9銭で買えましたから、それを考えると非常に高価な商品でした。」

とある。

因みに,サボテンはシャボテンとも言うが,

「日本には16世紀後半に南蛮人によって持ち込まれたのが初めだそうで、その南蛮人がウチワサボテン(↑の画像)の茎の切り口で汚れを拭き、樹液を石鹸(シャボン)として使っていたとか。そこで、石鹸のようなものという意味で石鹸体(しゃぼんてい)となったとか。」(http://coolum.sblo.jp/article/88317671.html

と,シャボンと関係がある由である。

参考文献;
今野信雄『江戸の風呂』(新潮社)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:石鹸 シャボン
posted by Toshi at 04:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする