2018年09月08日

ろくろくび


「ろくろくび」は,

轆轤首,

と当てるが,

ろくろっ首,

とも言う。

Hokusai_rokurokubi.jpg

(葛飾北斎『北斎漫画』より「轆轤首」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96より)


首が非常に長くて,自由に伸縮できる化け物,

と『広辞苑』にあるが,化け物ではなく,そういうタイプの人間がいる,と見なされていた説話もある。「ろくろ首」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9B%E9%A0%AD%E8%9B%AE

には,

「首が胴から離れて飛び回るものがあるが(『曽呂利物語』や『諸国百物語』などの説話、小泉八雲の『怪談』収録の「ろくろ首」等にみられる)、これは中国の飛頭蛮が由来と考えられている。」

とある。確かに,江戸時代の『画図百鬼夜行』では,「飛頭蛮」の字に「ろくろ首」と訓が添えられている。

SekienRokurokubi.jpg

(鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「飛頭蛮」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96より)


中國の「飛頭蛮」は,通常は人間の姿と変わりないが、夜になると首(頭部)だけが胴から離れて空中を飛び回るものとされる。

「『三才図会』によれば、大闍婆国(だいしゃばこく、ジャワ島のこと)に、頭を飛ばす者がいる。目に瞳がないのが特徴で、現地では虫落(むしおとし)、落民(らくみん、首が落ちる人の意)と呼ばれる。漢の武帝の時代には、南方に体をばらばらにできる人間がおり、首を南方に、左手を東海に、右手を西の沢に飛ばし、夕暮れにはそれぞれが体に戻って来るが、途中で風に遭うと、海の上を漂ったりしたという」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9B%E9%A0%AD%E8%9B%AE)とか。

Wakan_Sansai_Zue_-_Hitoban.jpg

(日本での図像化の例。『和漢三才図会』より「飛頭蛮」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9B%E9%A0%AD%E8%9B%AEより)


『和漢三才図会』では,ただ首が離れるのではなく,紐というか綱というか,首とつながっていると解されている。

ただ,日本での原型は,「抜け首」とも呼ばれ,ろくろ首の原型とされている,らしい。

「このタイプのろくろ首は、夜間に人間などを襲い、血を吸うなどの悪さをするとされる。首が抜ける系統のろくろ首は、首に凡字が一文字書かれていて、寝ている(首だけが飛び回っている)ときに、本体を移動すると元に戻らなくなることが弱点との説もある。古典における典型的なろくろ首の話は、夜中に首が抜け出た場面を他の誰かに目撃されるものである。抜け首は魂が肉体から抜けたもの(離魂病)とする説もあり、『曽呂利物語』では「女の妄念迷ひ歩く事」と題し、女の魂が睡眠中に身体から抜け出たものと解釈している。」

Sorori_wandering_soul.jpg

(『曽呂利物語』より「女の妄念迷ひ歩く事」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96より)


とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96より)。ここでは,中国の「飛頭蛮」そのものである。それを,

「ろくろ首(抜け首)の胴と頭は霊的な糸のようなもので繋がっているという伝承があり、石燕などがその糸を描いたのが、細長く伸びた首に見間違えられたからだとも言われる」

らしい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96)。つまり霊的糸を視覚化した流れから,それが伸びる首へ転じていったものとみられる。

「ろくろ首」は,どうやら中国の志怪小説から由来したものらしいが,では,「ろくろ首」とはどこから来たのか。この語源は、

ろくろを回して陶器を作る際の感触,
長く伸びた首が井戸のろくろ(重量物を引き上げる滑車[5])に似ている,
傘のろくろ(傘の開閉に用いる仕掛けを上げるに従って傘の柄が長く見える,

の説がある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96)。どうやら,これは,「轆轤」の意味からくる。

「主として回転運動によって円形の器物をつくる機械で、木工用、焼物用、金属加工用などがある。また、重い物を引いたり持ち上げたりする巻上げ機、船の錨(いかり)を引き上げる揚錨(ようびょう)機、車井戸のつるべを上下させる滑車、傘の先の骨が集まって、傘を開閉させる仕掛けの部分などもろくろと称する。」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)

で,どれが古いかわからないが,土器のそれは,

「土器を作るための回転台です。手で回したり、足でけって回したりします。古墳時代の中頃に朝鮮半島から伝えられました。」

とあり,滑車のそれも,古墳という土木事業をしている以上,その時代までに伝わっていたと見ることができる。傘の「轆轤」は,そのどちらから当てたと見ることができるので,滑車か,轆轤台のいずれかに由来すると思われる。

ちなみに,「轆」(ロク)の字は,

「ころころ,くるくるという音をあらわす擬声語」

で,滑車や車の意味,「轤」(漢音ろ,呉音ル)は,滑車で,「轆轤」として使われる。滑車,回転する車などの称。これを木工用、焼物用、金属加工用など,円形のものを形作ったり,削ったりする工作機械に当てたのは,我が国だけで,「轆轤」は回転装置を指し,それを応用する機械にまで広げて使うのは,我が国だけということになる。

『日本語源広辞典』は,

「轆轤+首」

とする。「轆轤」は,「陶器を作るのに使う回転する機械」で,

「地面においた木製の大きなロクロの回転軸がすり減って,奇妙な形に細くなったものを,首に喩えたもの」

とする。

https://akio-aska.com/column/100/100_01.html

も,

「ろくろ首のろくろは「轆轤」と書き、陶芸家が粘土をこねるのに使う回転盤のことである。」

としつつ,

「縄に吊り下げられた釣瓶〔つるべ〕を上げ下げすると、釣瓶の縄が伸びたり縮んだりすることから、ろくろ首が生まれたのかもしれない。」

と,断定しかねている。ただ,釣瓶の綱の上下と,伸縮する首とは,つながらない。

首の回りに輪のような筋がある,

とあり,それはむしろ糸巻きの玩具に似ているように思える。

参考文献;
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9B%E9%A0%AD%E8%9B%AE
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:23| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする