2018年09月27日

めぐる


「めぐる」は,

廻る,
巡る,
回る,

と当てる。「巡る」以外は,「まわる」と訓むのかどうかは,文脈に依存するほかない。「巡」(漢音ジュン,呉音シュン)は,

「会意。川は,川の流れが大地をめぐることをあらわす意。巡は『川+辶(すすむ)』で,川の水のようにぐるりとめぐること」

とある(『漢字源』)。「回」「廻」との違いは,

「回は廻るに同じ。もと水のうずまき流れる貌なり。旋に近し。」

とある(『字源』)ので,「回」「廻」は回転のイメージが強い。因みに,「周」は,

「帀(ソウ,めぐる)なり。ぐるりと一まわりするなり」

とあり,「旋」は,

「行・巡・周などとは異なり,物のくるくると幾遍もめぐるなり」

とある。「行」は,ここでは,

「巡行と連用す。ひと通りめぐり行くこと」

とある。ついでに「運」は,

「めぐりて行くこと,日月之運行,四時之運の如し。世運は,時代のうつりかわりて行くことことなり」

とある(『字源』)。

『岩波古語辞典』には,「めぐる(廻)」について,

「物の周囲を一周りするように囲む意。転じて,一つ方向に順次移動して,再び出発点に戻る意。類義語ミ(廻)は,曲線にそって動く意,モトホリ(廻)は,ひとつ中心をぐるぐる回る意。マハリ(廻)はマヒ(舞)と同根で,平面上を大きく旋回する意」

と区別している。

『大言海』は,「めぐる(廻・回・旋)」について,

「目轉(めく)るの義か,或は,圓繰(まじく)るの略轉かと云ふ」

とする。「まく」「まわる」「まる」との関連は当然予想される。『日本語源大辞典』は,

メクル(目転)の義(名言通・大言海),
目牽の義(和句解),
目の暗くなる意(和句解),
ミエカクレル(見隠)の反(名語記),
メはマル(円)のマの転(国語の語根とその分類=大島正健),
マロクル(円繰)の略転か(大言海),
マクル(間転)の義(言元梯),
アメメグる(天行)の略(和語私臆鈔),
メグ得るの義。メは起こり始める意。グは付止まらない意(国語本義),
動詞マグ(曲)の派生語(続上代特殊仮名音義=森重敏),

と諸説挙げ,『日本語源広辞典』は,

「メ(物の次第。順序)+繰る」

で順序が回る,とするが,「繰る」は,『日本語源広辞典』自身が,

「タグルカラ,タの脱落」

と語源をするように,「手繰る」は,こちらへ引き寄せる意で,「めぐる」の意の「まわる」のイメージとはかけ離れているのではあるまいか。ただ『大言海』は,「くる」に,

繰る,
刳る,

の二項に分け,「繰る」について,

廻らして手繰り引く,

の意とし,「刳る」を,

廻らし,穿つ,

の意とするので,「廻る」意がないとは言えない。しかし『岩波古語辞典』の「くる(繰・絡)」の意は,

「糸などの細長いものを手許に引いて寄せる」
「順次引き出す」

意で,「綿繰車にかけて,綿花の種子を捨てる」意が,辛うじて引っかかる。どうも,「まわる」意味とは直接つながらない。

また,「メ」を「目」と当てるのは,「目」の古語は,「マ」であることから考えると,ただちに,「メクル(目転)」と当てるのには,疑問が残る。

完全な億説だが,「まわる(回る)」が,名詞化し「まわり(周)」になり,その「まわり」との関連で「めぐり(廻り)」となり,それが動詞化して「めぐる(廻る)」になったと考えるが,どうだろう。音韻を無視しているが,動作が名詞化し,その名詞の類縁から「めぐり」「めぐる」になった,と。

その意味で,上記の,

動詞マグ(曲)の派生語(続上代特殊仮名音義=森重敏),

に与したい。「曲ぐ」は「巻く」にも「まる(円・丸)」にも通じる。ただ,難点は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/461807273.html?1537644057

で触れたように,「曲げ」は,「禍」に通じる。ちょっと「まる(丸・円)」とは乖離するところだ。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:25| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする