2018年10月19日

二足の草鞋


「二足の草鞋」は,

二足の草鞋を穿(履)く,

という言い方をする。

同一人が両立しないような二種の業を兼ねる,

という意味である。

『広辞苑第5版』には,

「もと博徒などが十手をあずかっているような場合を言った」

とある(仝上)ので,

博徒が捕吏を兼ねるような矛盾した業の兼務,

を言ったものらしい。『日本語源広辞典』には,

両立しない二つの職業を兼ねる意,

とあるので,単なる兼業ではない。だから,たとえば,「二足のわらじ」の一例として,

会社員と漫画家
会社員と作家
銀行員と歌手
サッカー選手と公認会計士
サッカー選手と大学生
柔道選手と国会議員
モデルとタクシー運転手

を載せている(https://bizwords.jp/archives/1068174205.html)が,これだと単なる兼業でしかない。だから,「二足のわらじ」の同義語・類義語として,

「二つの仕事を両立させること」
「二つの仕事で活躍すること」
「二つの仕事を掛け持ちすること」

というのは,間違っている(仝上),と思われる。現在では,

「会社員と作家の二足の草鞋を履く」

等々,両立が困難と思われる職業を兼ねる意でも使われるが,本来は褒め言葉ではない。

『江戸語大辞典』には載らないが,『日本語俗語辞典』(http://zokugo-dict.com/22ni/nisoku-waraji.htm)は,江戸時代以降に使われたとし,

「二足のわらじとは『二足の草鞋を履く』が略されたもので、もともとは江戸時代に博打打(ばくちうち)が十手を握り、捕吏になることをいった。ここから同一の人が異なる二種の業を兼ねること、また、単純に二つの職を持つことを二足のわらじという。ただし、二足のわらじは異なる種類の職・担当を兼ねるという前提にあるため、昼はパチンコ屋・夜はゲームセンターで働くといったものや、塾の講師をしながら家庭教師もしているといった、同種・類似の職の掛け持ちに対しては基本的に二足のわらじとは言わない。」

としている。だから,

「江戸の町は、町奉行所や火付盗賊改方が警察機能を担っていた。半七捕り物帖や銭形平次などの主人公は、岡っ引き(『目明し』、『御用聞き』、関西では『手先』、『口問』などとも呼ばれていた)を家業としているように描かれているが、実際は正規に任命を受けたものではなく、同心などが利用した『非公認の犯罪捜査協力者』、あるいは同心の『私兵』という位置づけだった。
 岡っ引きは、江戸時代、武士である同心が犯罪捜査を行うには、裏社会に通じたものを使わなければ困難であったことから、軽犯罪者の罪を見逃してやる代わりに、手先として使ったことが始まりと言われている。
 博徒や的屋の親分が岡っ引きになることも多く、『博打打が岡っ引きとなって、博打打を取り締まる』という摩訶不思議なことが起こったことから、『二足の草鞋を履く』という言葉が生まれたのだ。」

としている(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880634829/episodes/1177354054881041764)のが正確なのだろう。同種の説は,他にも(https://seikatsu-hyakka.com/archives/41537)載るので,「二足の草鞋」は,

博徒と岡っ引き,

というのが由来なのだろ。『鬼平犯科帳』に出てくる手先も,元泥棒である。蛇の道は蛇,ということなのだろう。と見れば,

通常両立しえない仕事あるいは相反する仕事を掛け持つこと,

を指す。当然,

あまりいい意味,

では使われない。どちらかと言うと,案に,非難の含意があるとみてよい。

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『故事ことわざ辞典』(http://kotowaza-allguide.com/ni/nisokunowaraji.html)は,

両立し得ないような二つの職業を一人ですること,
また,
相反するような仕事を同じ人が兼ねること,

とし,やはり,

「江戸時代、博徒が十手を預かることを『二足の草鞋』といった。」

とある。博徒側から見ても,江戸市民から見ても,

二足の草鞋,

はいかがわしさの象徴だったとみていい。

そう言えば,十手と言えば,宮本武蔵の家系は,十手術をよくした。十手は,

「十本の手に匹敵する働きをすることから『十手』であるといわれている。」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E6%89%8B)。別に岡っ引きや町方同心,与力の専売特許ではない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:59| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする