2018年11月13日
ずぼら
「ずぼら」は,
すべきことをせず,だらしないこと,
無精なこと,
とある(『広辞苑第5版』)。
すべら,
とも言うらしい。『日本語俗語辞典』(http://zokugo-dict.com/13su/zubora.htm)に,あるように,江戸時代から使われている言葉らしい。
『大言海』には,「ずぼら」は,
放恣,
と当てて,
「大阪の堂島言葉に,するすると下がる相場を,ズボラということより起こると云ふ」
と載る。
やりはなし,なげやり,ずぼら,
の意と載る。
ずべら(放恣),
も載り,
締りの無きこと,すぼら,
と載る。さらに,
ずべらぼう(放恣坊),
と擬人化した言葉も載る。『日本語源大辞典』には,『大言海』の堂島の相場由来説以外に,
ズベラの訛(上方語源辞典=前田勇),
僧侶の不祥事件が相次いだために世間で坊主を罵った語ズボウの訛か(ことばの事典=日置昌一),
が載るが,「ズボウ」は,『江戸語大辞典』に,
「ぼうず(坊主)を戯れに転倒して言う語」
とあり,
「くそをくらへ,コノずぼうめが」(文化七年・江之島土産)
と,用例にもあるので,罵り言葉には違いないが,「ずぼう」は「ずほう」であって,「ずぼら」ではない。むしろ,『岩波古語辞典』にある,
ずぼろ,
との関連の方が興味深い。「ずぼろ」は,
頭髪を丸坊主に剃ること,
で,
ずぼろぼ,
ずぼろぼん,
ずんぼろぼう,
等々とも言う。となると,
ズベラの訛,
か
するすると下がる相場,
かということになる。『日本語源広辞典』は,
「『ズベラ・ズンベラボウ(しまりがない)』です。市場用語で相場がずるずると下がる意です」
とするが,逆ではないか。「ズベラ」という言い方があったから,堂島相場で,「ずるずると下がる」意で使ったのが通じるのではないか。
「もとは、でこぼこや出っ張りがなくて、のっぺりしていることを『ずべらぼう』といい、それが転じて、だらしがないことを意味するようになった。それを略した『ずべら』が音変化したものといわれている。」
としている(http://yain.jp/i/%E3%81%9A%E3%81%BC%E3%82%89)のが始めと見ていい。
『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/su/zubora.html)は,
「ずぼらは、近世の上方の方言で『ずんべらぼん』『ずんぼらぼん』『ずんぼらぼん』など、凸凹(でこぼこ)や突き出した部分がなく、『つるつるなさま』『のっぺりとしたさま』を表した言葉が語源。これらの言葉は、大坂堂島で米相場がずるずる下がることを言っため生まれた言葉といわれる。また、『ぼら』という語は、方言で『体が大きい割に気が利かない』や『馬鹿者』の意味で使う地方も多く、『ずぼ』を『大きい体』や『噓』の意味で用いる地域もあり、上方方言の『すぼら』や『ずんべらぼん』などは、これらの言葉と同源と考えられる。
江戸末期には、修行を怠けたり酒に溺れる坊主が目立つようになったため、そのような坊主を庶民は嘲笑って『ぼうず』を『ずぼう』と逆に讀み、『ずぼう』が『ずぼら』に変化したという説もあるが、有力な説とされていない。」
とする。「坊主」の堕落は江戸時代に始まったものでもあるまい。
「ズボラの語源は、つるつるなさまを意味する『ずんべらぼん』や『ずんぼらぼん』という京都や大阪の方言だとされています。」(https://imikaisetu.goldencelebration168.com/archives/1836)
が妥当なのではあるまいか。
なお『江戸語大辞典』には,
すべらかす(滑らかす),
という語が載る。
曖昧な言い方をする,
という意味である。この「すべら」は「滑らかす」ではあるが,「すべら」と関係している気がする。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95