2018年12月11日

ケガ


「ケガ」は,

怪我,

と当てるが,当て字のようである。

「一説に,ケガは『けが(汚)る』の語幹という。『怪我』は当て字」

とある(『広辞苑第5版』)。『大言海』にも,

「穢(けが)るの語根,血に穢れたる意(和訓栞)。觸穢(しょくゑ)に,血氣穢(けっきゑ)あり,月經を,ケガレと云ふ,醫心方,十八廿九『月經血(けがれのもの)』」

とあり,「穢(汚)れ」と関わるらしい。「けがれ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/463084713.html?1544041056)で触れたように,「けが(汚・穢)れ」の語源には,,

「清離(きよか)るの約」

「ケ(褻)カレ(離)の複合」

の,二説ある。似ているようで,両者は微妙に違う。

「け(褻)」は,「晴れの対」で,

「ケ(日)と同根」

であり,

「日常的なこと。ふだん」

の意である(『岩波古語辞典』)。「け(日)」は,「k ë」で,

「カ(日)の転」

だが,

「『ひ(日)』が一日をいうのに対して,二日以上にわたる期間をまとめていう語」

である,という。しかし『大言海』は,「け(褻)」を,

「け(來經)の義にて,日常の意ならむ。褻の衣は,常の衣なり」

と,漢字「褻」の意から解釈する別の説を立てる。ま,日常というのに代わりはないのだが。

「清」から離れる,
のと,
「日常」から離れる,

のでは,「清さ」から離れているのと,日常から外れているのとでは,「けがれ」の穢れ度が,結構違う。「晴れ」から離れていると言うのと,「ケ(日常)」から離れていると言うのとの違いと言うと分かりやすい。「けがれ」を,

日常に悪影響を与えるもの(こと),

清らかさ(神聖さ)から離れること,

の二面があり,いずれも,「けがれ」なのかもしれないが,

日常から外れた,つまり異常か,
清らかさ(清浄)から外れた不浄か,

は,微妙に意味が違うが,これが,「けがれ」という言葉の意味の幅なのかもしれない。

『日本語源広辞典』は,「けがす」の語源で,説の一つ として,

説1,「ケガ(怪我)と同源,

と挙げていたが,「怪我」は,

「仏教語『仮我(本来の我が,仮になるもの)』ケガ」

からきてり,和語「ケガ」は,

「ケガ(ケガス・ケガルの語根ケガ)」

とし,

「思わぬ過失で出血して,ケガれる意」

とする。これによれば,「怪我」は,「仮我」から来た当て字ということになる。『岩波古語辞典』をみると,「ケガ」の意味は,

思いがけない過ち,過失,
思いがけなく傷つくこと,

の意で,考えれば,意図して傷つくことはないが,

思いがけない,

というところに力点がある。だから,

けがの高名(功名),

は,過失,または偶然したことが意外な手柄となること,

と,思いがけなさに力点がある。だから,出血することは,想定外ということになる。『日本語源大辞典』は,

思いがけなく傷つくこと,

の「血」が不浄とするところからきているとしているが,「あやまち」はともかく,それで血を見ることが問題視されていることになる。

『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ke/kega.html)は,

「漢字で『怪我』と書くのは当て字。『怪我の功名』や『慣れないことに手を出して怪我をする』など、『思わぬ過ち』や『過失』、『思いがけない災難』などの意味で『けが』は用いられる。これらの表現は『負傷』の意味から喩えたものではなく、本来『過ち』などの意味に用いた言葉で、そのために不注意のため体に傷つけることや,その傷の意味で使われるようになったのである。」

としている。その「ふつつか」さを咎める意もあるのかもしれない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
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コトバの辞典;
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ラベル:ケガ 怪我
posted by Toshi at 05:26| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする