2018年12月17日


「火」は「ひ」でも「日」の「ひ」とは,上代特殊仮名遣いで『日』の『ひ』は『甲類』(Fi,),『火』の『ひ』は『乙類』(Fï)で,別語というのは「ひ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/463232976.html?1544905611)で触れた。「火」(カ,唐音コ)の字は,象形文字。

「火の燃えるさまを描いたもの」

である(『漢字源』)。

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(殷,甲骨文字 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%81%ABより)

「火」の古形は,「ほ」とし,『岩波古語辞典』は,

「朝鮮語p ïlと同源か」

とするが,それでは古形「ほ」と矛盾しないか。「ほ」は,

火影,
ほむら(炎),
ほくち(火口),
ほや(火屋),
ほづつ(火筒),
ほたる (火垂),

のような複合語に残っていることは,「ほむら」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/460679616.html)で触れたよに,「ほ」(火)は,

穂,

にも通じる。「ひ・ほ(火)」について,『日本語源広辞典』は,

「抜きん出て燃え上がるもの」

とし,「ほ(穂)」,

「抜きん出ているもの」

の意とし,麦,稲の穂の意とする。『大言海』は,「ほ(穂)」を,

「秀(ほ)の義,分明にあらわるるより云ふ」

とある。際立つ,という含意であろうか。「ほ(秀)」では,

「物の秀でたるに云ふ語」

とある。臆説かもしれないが,「ひ」は「ほ」,「ほ(火)」は,「穂」「秀」に通じるのではないか。『岩波古語辞典』は,「ほ(穂・秀)」について,

「山の峰のように突き出ているもの。形・色・質において他から抜きん出ていて,人の目にたつもの」

とする。価値表現を除くなら,

突き出ているもの,

という状態表現を指していたのではないか。

『日本語源大辞典』には,「穂」を,

ホの義(箋注和名抄・言元梯),
ホはものの立ち上る意(松屋棟梁集),
ホは物のあらわれ出る意(古今集注・和句解・万葉代匠記・日本語源=賀茂百樹),
「穂」の字音から(外来語辞典=荒川惣兵衛),

という説もあるが,

火の義,穂の出始める色が赤いところから(和訓栞・柴門和語類集・言葉の根しらべの=鈴木潔子),

とする説もある。「穂」「火」は漢字でしかない。「ほ」は,穂でもあり,火でもあり,秀でもあったのではないか。

火の穂の義(国語本義),

とする説もある。ただ,「ほ」を「ひ」の古形と見なさないとすると,たとえば,

「ひ」は,

火がヒーと発するという音から(日本語原学=林甕臣),
「火」の中国音から(外来語辞典=荒川惣兵衛),
ヒカル(光)ところから(和句解),

という諸説があるが(『日本語源大辞典』),複合語に多く,古形が残ること,さらに,

「キ(木)に対して,複合語に表れる「コ」(木立,木の葉)と平行的な関係」

で(「木の間」という言葉もある),この「こ(木)」も,

「き(木)の古形。複合語に残っている」

という(『岩波古語辞典』)ことからも,やはり,古形「ほ」とみていいのではないか。

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参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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