2018年12月23日

やばい


「やばい」は,

ヤバイ,

とも表記されるが,本来,

危険である,
不都合である,

といった,危ない,あるいは,芳しくない状態を表現する,いわば状態表現であった。しかし,今日の「やばい」は,明らかな価値表現に転じていて,

凄い,

という意味と,

圧倒される,

という意味と,

魅了される,

といった含意をこめた,主体表現に転じている。

「『ヤバい』は江戸時代の滑稽本・十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも『やばなこと』という表現が見られる。」

として,

「江戸時代の矢場(射的場)では隠れて売春が行われていたため、そこに下手に居合わせ、役人から目をつけられたら危ないという意味で、「ヤバい」と言われるようになったという説が有力。元々は盗っ人たちの隠語だったため、今でもテレビや新聞では使用を避けられる傾向がある。」

とか(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52134),

「有力なのは江戸時代の射的場の「矢場」から来ている言葉だとする説が有力です。当時の矢場は遊興施設で時には売春が行われていました。矢場にいて役人に目を付けられたら危ない、ということでやばいと言う言葉が生まれたとしています。
他には、江戸時代は牢屋のことを厄場(やくば)と呼んでいて厄場に入れられるような状態をやばいと呼ぶようになったという説、江戸時代の盗賊や香具師が使っていた「いやあぶない」と言う言葉が転じたと言う説、などがあるようです。」

とか(https://fm0817.com/yabai-gogen),江戸時代に由来させる説が多い。

「牢屋説」は,『日本語俗語辞典』(http://zokugo-dict.com/36ya/yabai.htm)。

「やばいとは『危ない』『悪事がみつかりそう』『身の危険が迫っている』など不都合な状況を意味する形容詞や感嘆詞として、江戸時代から盗人や的屋の間で使われた言葉である。その後、やばいは戦後のヤミ市などで一般にも広がり、同様の意味で使われる。1980年代に入ると若者の間で『怪しい』『格好悪い』といった意味でも使われるようになるが、この段階ではまだ否定的な意味でしか使用されていない。これが1990年代に入ると『凄い』『のめり込みそうなくらい魅力的』といった肯定的な意味でも使われるようになる。」

あるいは,

「『やばい』が文献に現れるのは、…19世紀末の『日本隠語集』に「ヤバヒ…危険なること則ち悪事の発覚せんとする場合のことを云ふ」とあるのが最初です。(中略)18世紀末の歌舞伎の台本などに『やばな』という形容動詞連体形として残っています。つまり、形容詞「やばい」よりも先に…「やば」という名詞が存在したということも想像できます。…「やば」…も文字として残っているものはいわゆる隠語(盗っ人言葉)であり、『看守』とか『刑事』を表す言葉です。やばり江戸の後期から使われていたようですね。しかし、それ以前に遡ることはできません。」

と(http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2011/11/post-8502.html),隠語として使われていたことをしのばせる。

臆説だが,「矢場」は「やばい」の「やば」からの連想にすぎないように思えるので,普通に考えれば,

牢屋,

か,それと関連した,

牢番,

の意と推測できる。

牢屋を厄場(ヤクバ)と呼んでいた,

とする説もある(https://www.yuraimemo.com/4800/)。

辞書にはほとんど載らないが,『日本語源広辞典』は,二説挙げる。

説1,「野馬(危険な馬)+い」。危ない意,「ヤバな」の形容動詞の用法もある,
説2,「矢場(遊技場)+い」。表向き矢場で,売春場の「ヤバ」は取り締まりが多く,特に官憲に追われたときの隠語にヤバイが遣われることが多かった,

とする。「矢場」は,

弓を射る場,弓場(ゆば)。楊弓場(ようきゅうば 料金を取りて,楊弓(小弓)の遊戯を成さしめる所),

だが,

(表面は楊弓店を営みながら矢取りの女に売春をさせていたことから)淫売,

の意味もある(『広辞苑第5版』)が,どうもしっくりこない。「野馬」は,「野飼いの馬」「のうま」の意。確かに荒々しいが,これもぴんと来ない。しかし,

矢場,

薬場,

説が大勢のようだ。いつもながら,『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%82%84/%E3%82%84%E3%81%B0%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

は,

「やばいとは、警官が大挙して不法ギャンブル場にやってきて『中を拝見したいので入れてくれないか』とドアをノックするとき、そこに居合わせた裏社会の楽しい仲間たちがおおいにうろたえて照明を消しながら口々に発する言葉。つまり『危ない』という意味。近年では、いつでも裏社会からお誘いを受けそうな少女たちが「気持ちがうろたえるほど素晴らしい」という意味で気軽に用いている。」

と意味の転換を鮮やかに言い当てている。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:やばい
posted by Toshi at 05:25| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする