2018年12月24日

マジ


「マジ」は,

「まじめ」の略,

とある(『広辞苑第5版』)。「まじめ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/434431032.html)は,すでに触れたように,語源的には,

マジ(擬態・まじまじ)+目

で,真剣な顔つき,誠実な態度,誠意があるなどの意味になる。

まじまじ

は,

「マジマジ(目の擬態語)」

で,「目を据えて一心に見る」

という意味になる。『日本語俗語辞典』(http://zokugo-dict.com/31ma/maji.htm)には,江戸時代から使われていたとして,

「マジとは真面目の略で、『真面目』『本気』『真剣』『冗談ではない』といった意味で使われる。マジは江戸時代から芸人の楽屋言葉として使われた言葉だが、1980年代に入り、若者を中心に広く普及。『マジで』『マジに』といった副詞として、また『マジ○○(マジ話(まじばな)・マジネタ・マジ惚け・マジ面(まじづら))』といった形容詞的にも使われる。また、『本気』と書いてマジと読ませるマンガなどもある。」

としている。現に,『江戸語大辞典』には,

①「まじめ」の略。真面目,真顔(天明元年・にゃんの事だ「幸次郎と盃事すむ。お梅はしじうまじて居る」),
②本当,真(まこと)(寛永六年・一向不通替漸運「三かつ,まじにうけ,とんだ事をおめへいふもんだぞ」),
③まんじり(嘉永六年以後・柳之横櫛「二晩間睡(まじ)ともしねえところへお造酒(みき)がまはつて来たもんだから」),

と,意味が載る。「寛永」年間まで遡るようだ。

どうやら,「マジ」は江戸時代に芸人の楽屋言葉、いわゆる「業界用語」として生まれたものらしく,今と同じ「真面目に」という意味で、「マジになる」「マジな心」といった用法が確認されている(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52134)という。同じ説は,『日本語不思議辞典』(https://wisdom-box.com/origin/ma/maji/)にも,「芸人の楽屋言葉」とある。

そこから,

「ほんに男猫も抱いて見ぬ、まじな心を知りながら」(歌舞伎当穐八幡祭)

といように広く使われたとみられる(http://athena-minerva.net/seikatu/173/)。

ただ語源説には,この「真面目の業界用語」説以外に,

打消推量の文語体である「まじ」から,

というの説もある(https://matome.naver.jp/odai/2145706034644485501https://wisdom-box.com/origin/ma/maji/)らしい。

「『ただ今は見るまじ』とある『枕草子』、『この事は更に御心より漏らし給ふまじ』という記述がある「源氏物語」など(雑学解剖研究所),「ホントに??」と言うときの「マジで?」はこっちに近いですね。」

とする意見は,もっともらしく聞こえる。

この「まじ」は,

「『ましじ』(まじの古形。奈良時代に使われた)のつまった形で,平安時代以後にはじめて使われるようになった。これは,動詞・助動詞の終止形を承けるが,(中略)『べし』の否定形『べからず』に当たる意味を持ち,一人称の動作につけば『…ないつもりだ』の表現者の否定的意思を表し(枕草子『われはただ今は見るまじ』),二人称の動作につけば相手に対して『当然…ではいけない』という禁止の意を表し(枕草子『童より他にはすべて入るまじと戸をおさへて』),三人称の動作につけば,『…のはずがないだろう』という否定推量または『…できそうにない』という不可能の推量を表す(枕草子『(六位の)緑杉(ろうさう)なりとも雪にだにぬれなば憎かるまじ』)ことが多い」

とある(『岩波古語辞典』)。さらに,『日本語の語源』は,「ましじ」の由来を,

「オモフ(思ふ)の省略形モフ(思ふ)[m(of)u]を早口に発音するとき,ム(む)に縮約された。これを活用語の未然形に接続させて推量・意志の助動詞が成立した。(中略)『む』の未然形『ま』は助動詞を接続しない。その空き間性を利用して形容詞化の接続語『し』をつけたため『まし・べし・ましじ』が成立した」

としている。「まじ」には,否定,禁止,の意はあっても,「真面目」の意味はない。たんに「語感」や語呂だけで,類推したものというしか思えない。

『笑える国語辞典』

https://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%BE/%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

は,例によって,

「相手が一概には信用できない発言をしたとき『マジ?』と聞き返すことがある。同じような意味で『ウソ!』という聞き返し方もある。『マジ?』の方は『真実ですか?』と疑っているので疑問形のアクセントで、『ウソ!』の方は『ウソだ!』と決めつけているので肯定形のアクセントで用いる。このように、初心者が使用するにあたっては多少の練習が必要である。」

と皮肉っている。「マジ」は,あくまで,真面目,本当,の含意があってこそ,

マジ?

の問いが活きる。語呂だけからいうなら,『日本語源大辞典』に「まじ(真風)」,

まぜ(真風),

ともいい,

南風,
北風,
西風,

と地方によって意味が違うらしいが,

西南の方より吹く強き風,

の意らしい(大言海)。この語源説の他に,

よいマ(間)を意味する名か(方位考=柳田國男),

という説があるが,語呂でいうなら,いくらでも「マジ」に合わせて理屈はつく。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:マジ
posted by Toshi at 05:40| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする