歯が浮く

「歯が浮く」は, 葉の根がゆるむ, 酸いものなどを食べて,歯の根が浮き上がるように感じる, 軽薄で気障な言動を見聞して不快になる, という意味が載る(『広辞苑第5版』)が, 歯が浮くようなお世辞, という言い回しで使われることが多いので, そらぞらしく、きざな言動に対して、気持ち悪く感ずる, という意味(『大辞林』)の方がしっくりくる。 語源がは…

続きを読む

浮足立つ

「浮足立つ」は, 期待や不安など先が気になって,いまのことに気分が集中できなくなる, という(『広辞苑第5版』)よりは, 不安や恐れで落ち着きを失う,逃げ腰になる, という(『デジタル大辞泉』)方が的確に思える。「浮足」自体が, 足のつま先だけが地面について,十分に地を踏んでいないこと, 転じて, 落ち着かないこと, を意味する(『広辞苑第5版…

続きを読む

たらい

「たらい」は, 盥, と当てる。「盥」(カン)の字は, 「会意。『臼(両手)+水+皿』。両手に水をかけ下に器を措いて水を受けるさま」 で, 手を洗う, 手に水を灌ぐ, 意とある。転じて, 手を洗うのに使う器, 「古くは,洗った手をふって自然にかわかすのが習慣であった」 とある(『漢字源』)。「濯熱盥水」(熱ヲ濯ヒテ水ニ盥ス),「盥耳(カ…

続きを読む

たらいまわし

「たらいまわし」は, 盥回し, と当てる。 足で盥をまわす曲芸, ひとつの物事を,せきにんをもって処理せずに次々と送りまわすこと, とある(『広辞苑第5版』)。前者の意味は,今日ではほぼ薄らぎ, 政権の盥廻し, のように, 物事・地位などをある範囲内で次から次へと送りまわすこと, という意味(大辞林)や 苦情を言ったらたらいまわしされた…

続きを読む

うきよ

「うきよ」は, 浮世, と当てるが, 愛き世, とも当てる。「浮世絵」の「うきよ」であるし,「浮世草子」の「うきよ」でもある。「浮世絵」は, 「本来、『浮世』という言葉には『現代風』『当世』『好色』という意味もあり、当代の風俗を描く風俗画である」 とある。「浮世草子」は,「当世の世態,遊里のことなどを記した」小説なので,「当世」の意味であり,「浮世染め」も…

続きを読む

うえ

「うえ」は,旧仮名では, うへ, だが,『岩波古語辞典』に,こうある。 「古形ウハの転。『下(した)』『裏(うら)』の対。最も古くは,表面の意。そこから,物の上方,髙い位置,貴人の意へと展開。また,すでに存在するものの表面に何かが加わる意から,累加・つながり・成行きなどの意などの意を示すようになった」 とある。「うえ」は, 上, と当てるが,「かみ」と訓ま…

続きを読む

かみ

「上」は, かみ, とも訓む。 「『うえ』が本来は表面を意味するのに対して,一続きのものの始原を指す語」 とある(『広辞苑第5版』)。あるいは, 「ひとつづきのものの始め」 「ひとつづきのものの上部」 とある(『岩波古語辞典』)。そこで, 空間的に高い所, 時間的に初めの方, という意味から,それに準えて, 年齢,身分,地位,座席など…

続きを読む

した

「した」は, 下, である。「下」(漢音カ,呉音ゲ)の字は, 「指事。おおいの下にものがあることを示す。した,したになるの意を表す。上の字の反対の形」 である(『漢字源』)。 『岩波古語辞典』には,「した」について, 「『うは』『うへ』の対。上に何か別の物がくわわった結果,隠されて見えなくなっているところが原義。類義語ウラは,物の正面から見たのでは当然見え…

続きを読む

しも

「しも」は,「かみ」と対である。『岩波古語辞典』には, 一続きのあるものの終り, の意味で, 終りの方,末尾, (時の経過の)終り, 月の後半, の意味が, ひとつづきの高さあるものの下部, の意味で, 低い方,下方, 下半身, 一連の位・年齢・座席の下位である, の意で, 身分・格式が下である, 意等々,が載る。 …

続きを読む

「霜」は,いうまでもなく, 「0℃以下に冷えた物体の表面に、空気中の水蒸気が昇華(固体化)し、氷の結晶として堆積したもの」 である(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%9C)。 「霜」(漢音ソウ,呉音シュウ)の字は, 「会意兼形声。『雨+音符相(たてにむかいあう,別々に並び立つ)』。霜柱がたてに並び立つことに着目したもの」 …

続きを読む

しみじみ

「しみじみ」は, 染み染み, 沁み沁み, と当てる。 心に深くしみるさま,つくづく,よくよく, 静かに落ちついているさま, の意味が載る(『広辞苑第5版』)が,『デジタル大辞泉』には, 心の底から深く感じるさま, 心を開いて対象と向き合うさま, じっと見るさま, と,前者が状態表現なのに対して,後者は,主体の価値表現,感情表現にシフトしている。今…

続きを読む

雑兵

藤木久志『【新版】雑兵たちの戦場-中世の傭兵と奴隷狩り』を読む。 何度目になるだろうか。読むたびに,戦国日本の風景が変わるのを実感する。信長,秀吉や,信玄や謙信といった戦国大名や武将を中心としてみる風景では,戦国期の実像は決して見えない。本書が与えた衝撃は,はかり知れない。 乱取り, 人買い, 奴隷狩り, 奴隷の輸出, 等々,戦国の戦場がもたらした惨状の射程は…

続きを読む

二天一流

岡田一男・加藤寛編『宮本武蔵のすべて』を読む。 本書は, 宮本武蔵とその時代, 五輪書について, 二天一流と武蔵の剣技, 宮本武蔵の書画, 映像のなかの宮本武蔵, 小説に描かれた武蔵, 武蔵の家系と年譜, 宮本武蔵の全試合, に分けて,分筆されているものである。これで「すべて」なのかどうかはいささか疑問である。今も残る,古流派の人に,剣術(剣道ではない…

続きを読む

しむ

「しむ」に当てるに, 染む, 沁む, 滲む, 浸む, と,使い分ける。漢字の違いは,「しみじみ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/463638912.html?1547325377)で触れたように,「染」(セン,漢音ゼン,呉音ネン)の字は, 「会意。『水+液体を入れる箱』で,色汁に柔らかくじわじわと布や糸をひたすこと」 で…

続きを読む

つくづく

「つくづく」は, 熟, 熟々, と当てる(『広辞苑第5版』)。『大辞林』には, 「つくつく」とも, とある。 念を入れて見たり考えたりするさま, よくよく,つらつら,じっと, 物思いに沈むさま,つくねんと,よくよく, 深く感ずるさま, という意味で, つらつら, と重なるところがある。「つらつら」(http://ppnetwork.se…

続きを読む

こえ

「こえ」に当てる, 声(聲), の字(漢音セイ,呉音ショウ)は, 「会意。声は,石板をぶらさげてたたいて音を出す。磬(ケイ)という楽器を描いた象形文字。殳(シュ)は,磬をたたく棒を手に持つ姿。聲は『磬の略体+耳』で,耳に磬の音を聞くさまを示す。広く,耳をうつ音響や音声を言う。」 とある(『漢字源』)。ひろく, 「人の声,動物の鳴き声,物の響きを含めていう」 …

続きを読む

真説

原田夢果史『真説宮本武蔵』を読む。 本書を読むと,ほぼ武蔵のイメージが変わる。 著者は「はしがき」で,本書を要約して,こう書いている。 「吉川英治さんは,…剣豪武蔵を求道者武蔵として取り上げたが,その功績は大きい。実像の武蔵は,殺人剣を活人剣へと脱皮するために修業した,類い希な人物であったからである。武蔵は,『二天記』や『吉川武蔵』の虚像よりも,はるかに偉大であった…

続きを読む

しもたや

「しもたや」は, 仕舞屋, とあて, シマウタヤの転, とある(『広辞苑第5版』)。「しもうたや」には, 「もと商家であったが,その商売をやめた家。金利や資財の利潤で裕福に暮らしている人,またはそういう家,転じて,商店でない普通の家」 とある。『江戸語大辞典』には「しもうたや」で載る。 「以前は商家で,現在は廃業している家。商売せず金利などで生活して…

続きを読む

下ネタ

「下ネタ」は, 「『しも』は下半身の意。『ねた』は『たね(種)』を逆さ読みにした語」 で, 性や排泄に関する話題, だが(『デジタル大辞泉』), 「下ネタ(しもネタ)は、笑いをさそう排泄・性的な話題のこと。寄席における符牒のひとつであったが、テレビ業界で用いられるようになってから一般化した。『下がかった話』などともいう。現在ではもっぱら艶笑話について用いられ、か…

続きを読む

下世話

「下世話」(げせわ)は, 世間でよく口にする言葉や話, 世間の噂, といった意味である。ま, 俗に, と言い換えても,変わらない。やっかいなことは, 世話, だけでも, 通俗の言葉, 世間のうわさ,世人の言い草, という意味があり,室町末期の『日葡辞典』にも, 「セワ,即ち,セケンにハヤルコトバ」 の意味が載る。だから,それに,…

続きを読む