「しも」は,「かみ」と対である。『岩波古語辞典』には,
一続きのあるものの終り,
の意味で,
終りの方,末尾,
(時の経過の)終り,
月の後半,
の意味が,
ひとつづきの高さあるものの下部,
の意味で,
低い方,下方,
下半身,
一連の位・年齢・座席の下位である,
の意で,
身分・格式が下である,
意等々,が載る。
「した」に比べて,位置関係というよりは,一連の流れの末端,という含意のようである。『大辞林』は,
「空間的・時間的に連続したものの下の方。末の方。低いところ」
とし,
❶連続したものの末の方 川の下流/現在の方に近い時代/月や年の終わりの部分/書物の終わりの部分。また、下
❷位置の低い所 下の方/人の体の腰よりも下の方
❸中心となる所から離れた地方 京から離れた地/近畿地方に対し西国地方/京都に対し、大坂
❹地位・身分の低い人 臣下/官位・身分の低いもの/召し使い/末座/舞台の下手
という整理をしている。「ひとつながり」の含意が意味がある。で,語源であるが,『大言海』は,
「後本(しりもと)の約略か,又尻面(しりも)の略か」
としている。
「カミ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/446980286.html)で触れたように,『日本語源広辞典』は,
「シ(物体の下)+モ(身体)」
で,
「人体の下,一続きの終り」
を意味するとする。この『日本語源広辞典』の語源説は,「した」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/463595980.html?1547066470)で触れた,
「シ(下の意)+タ(名詞の語尾)」
の考え方と同じである。『岩波古語辞典』は「し」を,
下,
と当て,
「シタ(下),シモ(下)などのシ」
とし,
他の語につき複合語をつくる,
とある。で,
下枝(シズエ),
の例を挙げることは「した」で触れた。「しも」と「した」の違いが,「た」と「も」の違いとすると,「た」と「も」が説明できなくてはならない。『日本語源広辞典』は,「した」の「た」は,
「タ(名詞の語尾)」
とし,「しも」の「も」は,
「モ(身体)」
とするが,どうも説明不足ではないか。ここからは,臆説だが,「も」は,
面,
方,
と当てる「も」,『岩波古語辞典』が,
「(オモテのオの脱落した形)表面,方角」
とし,『大言海』が,
「熟語に用ゐる」
とし,
四方(も)八方(も),
此のも,彼のも,
と例示する「も」ではないか,つまり,
シ(下)のモ(方),
の意,と勝手に考えてみた。
『日本語源大辞典』は,
シリモト(尻本)の義(名言通・名語記),
シリモ(尻方)の義(国語溯原),
シリマ(尻間)の義(言元梯),
モはミ(身)の転。もとは賤しい身をいったが,のち,ほうこうについていうようになった(国語の語根とその分類),
シモ(下方)の義。モはカミ(上)のミと同じ(神代史の新研究),
等々を挙げる。「も」は,やはり,「方」の意がある,と思うのは我田引水か。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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