2019年02月09日
かち
「かち」
徒,
徒歩,
歩行,
等々と当てる。
乗り物に乗らないで歩くこと,
陸路を行くこと,
の意で,
徒士,
と書くと,
徒士侍,
つまり,
騎乗を許されない武士,
の意となる。
『広辞苑第5版』には,「かち」は,
「『くがち(陸地)』の略『かち』の意が転じて」
とある。『大言海』も,
「陸(かち)の義,陸(かち)より行くと云ふべきを,略して云ふなり」
とあり,「かち(陸)」の項ては,
「陸地(くがち)の略ならむと云ふ。出雲(イヅクモ),イヅモ」
と載る。陸路を,
くがぢ,
と読む(『岩波古語辞典』)し,「陸」を,
くが,
と訓み,「くが」は,
「クヌガの約」
とあり(『岩波古語辞典』『広辞苑第5版』),
「海・川などに対して」
陸地を指す(『岩波古語辞典』)。
歩行,
を,副詞的に,
かちより,
と訓ませる。万葉集に,「他夫(ひとづま)の,馬より行くに己夫(おのづま)の,歩従(かちより)行けば見る毎に.哭(ね)のみ泣(な)かゆ」という長歌があると『大言海』にある。『岩波古語辞典』には,
徒歩より,
と当て,
「ヨリは,ユに同じ」
つまり,
徒歩ゆ,
と同じで,
「ユは経過点・方法・手段を表す助詞」
で(『岩波古語辞典』)で,
歩いて,
徒歩で,
の意である
『日本語源広辞典』は,「かち」の語源を,
「カ(交,足の運び)+チ(道)」
とする。「交(か)ふ」というし,「道(ち)」もある(ただ,『岩波古語辞典』によれば,道を通っていく方向の意で,単独で使われた例はなく,大路(おおち)のように)ので,理屈は合うが,しかしちょっと理屈が過ぎまいか。
クガダチ(陸行)の反(名語記),
韓語カタ(行くの意)の転(日本古語大辞典=松岡静雄),
蹴分けて行く義(和訓集説),
カチ(駈道)の義(言元梯),
等々もあるが,
くが(陸),
にかかわる,
くがち(陸地),
の転訛とみていいように思う。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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